Webを使って集客をし始めても、必ずしも成功するわけではない。相談があった場合、まず、「デジタルマーケティングは魔法の杖ではない」という言葉を伝えている。デジタルで集客をすることで、すぐに結果が出ると思っているケースが多いからだ。そして、デジタルで集客をするのは難しい。うまくいかなかった時には、デジタルはうまくいかないという考えが根付いてしまい、デジタルマーケティングに対しては消極的になってしまう。
不動産業の特徴として、1案件の売り上げが大きいこともあってか、広告費が高くなる傾向がある。日常で利用する消耗品と違って、簡単に購入するものではないからだ。一生に一度、買うことがあるかないかというケースが多い。そのため、検討期間が長い商品だ。
また、Webから集客するためにサイトを作ったからといって、簡単に顧客が訪れるわけではない。そのサイトの存在を知らせることが必要になる。時間をかけてもいい場合は、記事を定期的に追加しながらSEO対策を1年くらいかけてやるという選択がある。ただ、そこまで待てる会社も少なく、広告をすることで集客する会社が多い。もちろん、一番いいのは両方やることだ。
通常の広告のやり方だと、リスティング広告(検索連動型広告)を利用することだ。「家 買う 東京」のような検索に対してのアプローチだ。
「家 買う 東京」で検索をした時に結果事例
広告を始めれば、そこから顧客が簡単に訪れるわけではない。広告の上位表示が必要になってくる。人間の見方として、上から順番に見ていく。1ページ目の上に表示される方が顧客は訪れやすくなる。この上位表示がなかなかできることではなく、プロの力が必要になるところである。なお、上位表示にするためには、入札単価を高くすることと、ランディングページをGoogleから評価されるためのページにする必要がある。
この2点を間違ってしまうと、広告費用だけが飛んでいき(オーソドックスなパターンだと広告をクリックするごとに課金される)、結果的には顧客を獲得できない、“デジタルはうまくいかない”状態になってしまう。
より広告の効果を上げるためには、家を買うことをゴールにするのではなく、資料請求や問い合わせ、面談をまずは途中のゴールにして、顧客を育てていくことも大事だ。また、問い合わせや面談をした方へのベネフィットを用意することも必要である。書籍プレゼントやデジタルギフト券、動画などだ。
また、広告は成果に波があるので、リスティング広告だけを行っていると、駄目だった時には身もふたもなくなるので、バナー広告やSNS広告、成果報酬広告など、いくつかのやり方を同時で行い、成果が落ちた時には他でカバーできるようにする体制も必要だ。
そして、広告で顧客を獲得することが終わりではない。資料請求や問い合わせ、面談をゴールにする場合、顧客をどうやって育てていくかが肝になる。セミナーを実施したり、メールを送ったり、無料相談を行ったりすることで、購入に強い興味を持ってもらうようにする。同時に、メールの開封やサイトのアクセス、架電した際の状況、面談での熱、家族の理解などのデータをためて分析することで、段階ごとや状況によってアプローチしていかなければならない。
広告をした際の計算式
例えば、100万円の広告費を使って、10人の問い合わせを獲得した場合、1人当たりの問い合わせを獲得するために10万円を使ったことになる。問い合わせた顧客を育てていくことは10万円を有効に活用できているかともいえる。意外と問い合わせを取って終わりという会社も多く見られる。
広告で集めた顧客リストを管理したり、顧客にアプローチしたりする際、ITの力が大きな効果を発揮する。
■執筆者プロフィール

森 和吉(モリ カズヨシ)
吉和の森 代表取締役 ITコーディネータ
1970年青森県八戸市出身。94年立正大学卒業後、郵便局勤務などを経て、99年オリコンに入社。音楽雑誌の編集からウェブサイトの運営を担当する。その後、ソーシャルゲームやメーカーや流通、不動産投資会社でウェブマーケティング事業に取り組み、19年に吉和の森を設立。ウェブ解析士マスター、チーフSNSマネージャー、提案型ウェブアナリストなどの資格も持つ。