マーケティングを「算数」で組み立て「忍耐」強く進めることを強力にアシストしてくれる仕組みがMA（マーケティングオートメーション）だ。不特定多数の無数の潜在顧客からターゲットを絞り込んでいく作業を人手でこなしていくことは至難の業と言える。整理をしているうちにターゲットは他社・他店や他の商品・サービスを選んでいるかもしれない。時間との闘いであると同時に、効果的に狙いを定めて適切な矢で的を射る必要がある。

マーケティングの在り方の変遷

　近代マーケティングの父と称されるフィリップ・コトラーは、彼の著書の中で、マーケティングの概念が登場して以来のマーケティングの在り方の変遷について説いている。「製品中心」「顧客中心」「人間中心」を経て、現代では「デジタル化」と呼ばれるフェーズに移るとともに、さまざまなテクノロジーを活用したマーケティングが求められているという。

　市場の成熟度が上がっていけば、顧客の要望も多種多様に変化する。将来予測や市場のニーズを、より小さな単位レベルでタイムリーに対応していく必要がある。この高度な要件に対応していくには、デジタル化が欠かせなくなってきている、ということだ。デジタル化によって、マーケティング担当者は、マーケティングキャンペーンに必要な三大要素、「ターゲット」、「提案」、「宣伝文句」に注力し、マーケティングの効果を測定することに専念することができるのである。

自動化の進むマーケティング支援システム

　マーケティング業務の効率化、精度の向上には、MAツールの活用が不可欠である。大企業に適合したMAツールは、高価である上に設定や操作が複雑で専用の運用担当者が必要だ。予算の限られている中小企業にとっては、ITコストや人件費などのランニングコストの増加は高い障壁となる。

　しかし最近になって、導入しやすく手ごろな価格で、中小企業でもマーケティング活動を総合的に支援する統合型ツールが登場してきている。さらに、これまでマーケティング担当者が担っていたマーケティングの専門領域は、AIやチャットボットといった人間を模倣したテクノロジーが対応できるようになってきている。

　HubSpotやList Finderなど、中小企業向けに導入実績のあるMAツールもあるが、注目しているのは、MAツールにAIを搭載して成約率を高めるクラウド型のソフトウェア「マーケティング・ロボティクス・オートメーション “Markefan”（マーケファン）」である。

　このシステムは、搭載されたロボット（AI）によって、高度な専門知識がなくともマーケティング業務ができ、顧客データ分析に基づくレコメンド設計が自動化されるという特徴がある。専門知識を駆使してマーケティングを行う担当者が必ずしも必要ないということだ。また、導入コスト、運用コストが極めて低く、その使い勝手の良さも相まって、中小企業への導入が進んでいる。
 

マーケティングの未来像

　筆者は、ITコーディネータとして、また経営者を支援するビジネスコーチとして、ソフトウェアを提供している企業の各種支援を行っている。中小企業がコロナ禍明けの方向転換を図って新たな売り上げを生み出すためにはマーケティングは欠かせない要素である。そして効果的なマーケティングを行うにはITの活用は必要不可欠なポイントである。

　そう遠くない未来に、中小企業におけるマーケティングは確実に大きく動き出す、その未来像は、（1）ITがマーケティング業務をサポートすることで、マーケティングの専門家でなくともマーケティング業務を運営できる、（2）ITベンダーとしてLTV（顧客生涯価値）を高めるために、顧客へのITの導入と運用の支援だけでなく、関連する業務運営のサポート力が求められる、（3）中小企業のマーケティングオートメーションを普及させるための重要要素のひとつとしてITコーディネータの役割の重要性が増す――だ。

　マーケティングの本質は変わらない。その本質は決して難しくはないのだ。コロナ禍が明けようとしている今、少しの方向転換によって新たなビジネスチャンスを生み出し、マーケティング支援システムを活用して小さなマーケティングキャンペーンから取り組み始めよう。マーケティングオートメーションの普及によって、多くの企業がその本質に集中できる環境が整ってきた。