富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)の子会社で基幹ソリューション事業を担う富士フイルムPBCは、米Microsoft (マイクロソフト)のERP「Dynamics 365」を軸に大手から中堅・中小企業のユーザーに至るまで幅広くERPビジネスを展開していく。中堅・中小企業向けERP「Dynamics 365 Business Central」のSIで強みを持つパシフィックビジネスコンサルティング(PBC)を吸収合併し、富士フイルムPBCへと2025年10月1日付で社名を変更。これまで強みとしてきた大手ユーザー向けのERPビジネスに加え、Business Centralを活用した中堅・中小企業向けのERPビジネスも伸ばすことで、向こう3年で新たに100~200事業所への納入を目指す。
(取材・文/安藤章司)
中堅・中小ユーザー市場へ進出
富士フイルムPBCは、M&Aによって大きくなった会社だが、直近の事業概況は。
当社はDynamics 365を軸に基幹ソリューションを担っている。もともとは光学機器メーカーHOYAグループでDynamics 365やSAP製品を取り扱っていた旧HOYAデジタルソリューションズが富士フイルムBI傘下に入ったことで、22年から富士フイルムBIの基幹ソリューション事業の一翼を担う会社となった。
飛田政仁 代表取締役社長
25年2月には関西電力グループのオプテージ傘下で中堅・中小企業向けのBusiness Centralを主に扱っていたPBCを買収し、今の富士フイルムPBCの体制へと移行した。
PBCを吸収合併したことで、中堅・中小企業ユーザーにもビジネスを広げられるようになったということか。
旧HOYAデジタルソリューションズ時代から、当社は比較的大規模なユーザー企業向けにDynamics 365やSAP製品のSIを手掛けてきたこともあり、中堅・中小企業ユーザー向けのビジネスは手薄だった。PBCを吸収合併したことで、大手から中堅・中小企業ユーザー向けのERP需要に至るまで、幅広くビジネスを手がけられるようになった。
PBCは、01年にデンマークのERPメーカーNavision(ナビジョン)社製品の国内販売をスタートし、その後、マイクロソフトがナビジョンを買収。ある意味、マイクロソフトよりも早くナビジョン製品(現Business Central)の取り扱いを始めている老舗で、Business Centralの販売に関しては知名度やブランド力が非常に高い。
“素うどん戦略”を展開
中堅・中小企業ユーザー向けビジネス戦略はどのようなものか。
中堅・中小企業向けには、組み立て製造業などに焦点を当てた“素うどん戦略”を展開していく。Business Centralを素うどんに見立て、ユーザーの業務に合わせたテンプレートやコンポーネントをトッピングとして提供することで業務要件を満たしていく。ERPの中核部分に手を加えないことで将来のバージョンアップを妨げず、カスタマイズを最小限にして価格を抑え、納期を短くし、ユーザー満足度を高めて受注増につなげる。
富士フイルムBI自身、Dynamics 365を自社導入しているが、富士フイルムPBCも導入プロジェクトに関わっているのか。
全部ではないが関わっている。私は富士フイルムBIの全社基幹システム刷新プロジェクトを統括する「earthプロジェクトリーダー」の役目を拝命し、25年11月までに足かけ3年かけDynamics 365導入プロジェクトを完了させた。会計や人事、営業、物流など生産系を除くほぼ全ての基幹業務システムを刷新する大がかりなもので、Dynamics 365の大企業向け納入プロジェクトの中でも世界屈指の規模になったと自負している。
マイクロソフトの開発陣とも直接やりとりをして、Dynamics 365の大規模導入のノウハウや知見を習得できたことは、今後の当社のビジネスの追い風になる。
また、私の出身母体でもある旧横河医療ソリューションズ(現富士フイルム医療ソリューションズ)は、医用画像管理システムの開発を強みとしているが、この分野は薬機法(旧薬事法)をはじめ各種の規制に基づく高い品質が求められる分野でもある。議事録の取り方から承認過程に至るまで、品質を担保するためのSEの振る舞い方のノウハウや知見を数多く蓄積していることから、私が富士フイルム医療ソリューションズの会長を兼務し、両社の人材交流を通じてERP分野でも高品質なサービスを実現していく。
SE稼働率を高め利益倍増へ
グローバル対応力についてはどうか。
富士フイルムBIは、オーストラリアでERP事業を手掛けるFUJIFILM MicroChannel Servicesを傘下に持つとともに、今年に入ってトルコでDynamics 365事業を展開するETG Global(イーティージーグローバル)を買収し、社名をFUJIFILM ETG Globalに変更した。両社は欧州や北米にも拠点を置いていることから、当社とも連携してグローバル対応力を高めていく。
業績目標についてはどうか。
大企業向けの大規模SIは、案件と案件の端境期にSEの稼働率が下がる課題があったが、中堅・中小企業向けの案件を増やすことでSE稼働率を平準化することが可能になる。多くのSEを投入する大規模案件を“深堀り”していくとともに、中小企業向けの案件を“五月雨式”に並行させることで、人的リソースの最適配分を目指す「深掘りと五月雨」の戦略を実践する。本年度(27年3月期)の営業利益は前年度比で倍増させていく計画を立てている。
当社ではこれまで累計で30カ国・500事業所にERPを納入してきた実績を持つが、向こう3年で累計600~700事業所に増やしていく。