生成AIの活用おいてデータは重要だが、AI向けインフラはストレージだけでは完結しない。日立ヴァンタラは、顧客のAI活用を一気通貫で支援するため、GPUサーバーや運用ソフトウェアまでパッケージにした「Hitachi iQ」の販売に注力している。データセキュリティーからオンプレミスで構築しつつ、クラウドとの連携でデータの拡張性も担保し、スモールスタートから大規模展開まで多様なニーズに対応している。
(取材・文/堀 茜)
Hitachi iQ
3モデルを用途に応じて選択
日立製作所の子会社で、ストレージ機器を中心としたITインフラを提供する日立ヴァンタラは、ストレージのメインブランドとして「Hitachi Virtual Storage Platform One(VSP One)」を展開している。一般的なシステムに幅広く使える製品で、ハイエンド向けの「VSP One Block High End」を2025年11月に発表するなど、事業の中核を占めている。社会インフラを担う企業や金融などで、大規模に採用されているケースが多い。
小林雅弘・AIインフラ事業本部長(左)と
長堀隆史・ストラテジックビジネス営業本部担当本部長
一方で、AI活用という文脈で注力しているのが、企業が生成AIや機械学習をオンプレミス環境で安全かつ効率的に使うためのAIインフラソリューション「Hitachi iQ」だ。日立グループ内で実際に生成AI共通基盤を運用して得た知見を反映し、サーバーおよびそれに搭載するGPU、ストレージ、運用ソフトウェアなどをパッケージにした事前検証済みの製品で、24年7月から提供している。推論向けの「エントリー」、推論・学習向けの「ミッドレンジ」、大規模学習向けの「エンタープライズ」の3モデルで展開し、規模や用途に応じて選択できる。当初はエンタープライズモデルだけの提供で、大企業が対象だったが、AI活用の裾野を広げる意味で、エントリーとミッドレンジも追加した。
ストラテジックビジネス営業本部の長堀隆史・担当本部長は、AI活用において顧客が自身でインフラ基盤を一から選ぶだけのノウハウや経験値がまだ蓄積されていないと指摘。「AIの基盤を構築して自社のサービスを提供しようとしても、最適なインフラが分からないという声は多い。お客様のやりたいことに合わせて、デザインを含めて支援しているのが現状だ。エンジニアリングと製品を一緒に販売している」と説明する。また、ストレージ単体で提案するよりも、GPUなどAIワークロードに必要な要素を一体的に取り扱うほうが顧客のメリットが大きいとした。
iQで提案するストレージは、非構造化データの管理およびデータオーケストレーションのソフトウェアを提供している米Hammerspace(ハンマースペース)のデータオーケストレーション技術を採用し、スモールスタートが可能な分散ファイルストレージだ。ソフトウェアデファインドで、オンプレミスでもクラウドでもデータ移行が可能になる。
手離れを良くしパートナーが展開
顧客は、自社でAI基盤を設計・構築するのではなく、既存のAI基盤を使って推論に使いたいというニーズが大半で、案件数はエントリーが圧倒的に多い。日立グループが多く抱える社会インフラ事業者や金融などの顧客は、経済安全保障上の理由からデータを外部に出せないケースが多く、オンプレミスでAI基盤を構築できるiQのエンタープライズに引き合いが多いという。
データセンター事業者やサービスプロバイダーの需要が先行したが、製造業、流通、通信といった業種に広がりが出始めている。iQを使ったAI基盤の構築にあたっては、営業部門だけで構築に向けた助言や設計を行うのは難しいので、設計部門も案件に入り込み、一体となって顧客に提案している。日立製作所の生成AIの活用を推進するCoE組織「Generative AIセンター」とも密に連携。AIで実現したいことをインフラに落とし込むところまで一気通貫で対応できるのが強みの一つだとした。
AIインフラ事業本部の小林雅弘・本部長は、「現在は個別にどういうシステム構成がいいのか提案し、ノウハウをためている段階だ。案件の数が増えてくると、より手離れが良く迅速に導入できる『Tシャツモデル』として提供できるようになる」との見通しを示す。顧客の要件に合わせた構成を型化することで、提供スピードを速めていく考えだ。
販売はパートナー経由も多く、大規模な案件は大手SIer、研究機関向けなどは独自に強みを持つ代理店が取り扱うケースなどがある。パートナーにとって、生成AI向けインフラをパッケージで比較的早く展開できるのがメリットになっているという。エントリーとミッドレンジは、販売チャネルを増やしていきたい意向だ。
長堀本部長は「幅広い規模に対応できるエンタープライズからエントリーまで商品棚に並べつつ、パートナーには、手離れのいいエントリーを売りやすく提供していきたい」と展望する。