TISとインテックが7月1日付で合併し、TISIが発足した。両社が経営統合して立ち上げたITホールディングスの設立から18年を経て、一つの会社になった。背中を押したのはAIの登場による事業環境の急速な変化だ。合併して意思決定のスピードを速め、AI駆動開発の実践や、AIの社会実装を加速させていくことが勝ち残るために必要だと判断した。TISは大都市・大企業、インテックは地域・中堅企業の市場を主戦場としてきたが、新体制では地域や規模を問わない網羅的な事業モデルを構築し、全国へ迅速に展開することでビジネスを伸ばす。
(取材・文/安藤章司)
合併の狙いを改めて聞く。
インテックの疋田秀三社長(現TISI代表取締役副社長執行役員)と、グループ全体の成長をどうするか話し合う中で、合併したほうが意思決定のスピードが速まり、成長戦略を描きやすくなると判断した。AIの登場で事業環境が大きく変化していることを踏まえ、今のタイミングでギアチェンジし、経営を一段と迅速化させる必要がある。「成長」と「スピード」を軸に、2025年の早い段階で意見が一致した。
株主への説明や従業員の待遇など、やらなければならないことをすべて洗い出し、25年7月に合併を発表。26年7月1日付で合併を完了し、社名をTISとインテックの頭文字を組み合わせた「TISI」に変えた。ただし、グループ名はなじみのある「TISインテックグループ」のまま変更しない。
岡本安史 代表取締役社長執行役員
経営統合から合併に至る18年間を総括すると。
当時、大手SIerトップ集団を形成する業界再編の流れの中で、ターゲット市場やユーザー層が競合しないTISとインテックで経営統合することになったと聞いている。私はTIS子会社のコンサルティング会社の役員をしており、両者が経営統合して持ち株会社のITホールディングスを設立する話を聞いたときは一瞬驚いたが、すぐさまインテックのコンサルティング事業を担当する部門と連絡をとり、「横の連携でビジネス的な相乗効果を発揮できる方策はないか」と持ちかけたことを今でもよく覚えている。
結果はどうだったか。
TISは大都市の大手ユーザー、大規模システムが主戦場であるのに対し、インテックは地域の中堅企業、自治体、中小規模システムに強く、ビジネス的に重なった部分がほとんどないだけに、当時担当していたコンサルティング領域ですぐに相乗効果を生み出すことは叶わなかった。だが、その後は時間をかけてTISとインテックの間で事業を再編・再配置するとともに、TISが(ITホールディングスと統合して)事業持ち株会社となることで階層構造を減らし、さらには両者の組織が対になるようミラー型の再編も行うなど、風通しがよくなるよう努めてきた。
これまでの「抜け落ち」なくす
TISI体制になって、どのような相乗効果を想定しているか。
まず、AIの技術進展のスピードに比べて、AIの社会実装が追いついていない現状を鑑み、新体制では大都市・大企業ユーザーはもとより、地域の中堅企業・自治体ユーザーに至るまで幅広くAI実装を支援していく。
業務でAIを本格的に活用するには、古い基幹系システムをAI対応に刷新する必要があり、例えばTISが開発してきたレガシーシステムをモダナイズするツール「Xenlon」をインテックのユーザー企業に提供したり、逆にインテックのオファリングをTISの顧客に積極的に提案したりといったことが一段とやりやすくなった。
TISとインテックが別々の会社であったときも、相乗効果を狙ってクロスセルを行ってきたが、見落としている部分はあったと思う。会社の壁をなくして、完全に一つの事業体になったことで、抜け落ちていた部分をなくし、大都市から地域に至るまで網羅性の高いビジネスを展開できるようになる。
AIでソフト開発の自動化が進む見込みだが、人員削減はあり得るか。
それはない。グループ全体で約2万1000人の社員がいるが、増えることはあっても減ることはない。当社では30年までにAI駆動開発で生産性を50%向上させる取り組みを行っており、すでに一部プロジェクトでは50%近い生産性の向上を確認している。上流工程の業務改善の支援を行ったり、既存システムへのAI実装を進めたりするなど、人的リソースを投入しなければならない分野は数多くある。
“総和拡大”をキーワードに
トータルで見ればプラスであると。
もちろん、そのためのスキル転換は避けては通れないが、レガシーマイグレーションや一品一様のスクラッチ開発など、人的リソースを多く投入してきた分野をAIによって効率化できれば、納期短縮によってSIプロジェクトの回転率が高まり、受注できる案件も増える。
また、データ保護の観点からソブリンクラウドやオンプレミス環境でAIを稼働させる需要も増える見通しだが、構築の難しさや維持コストの面から、中堅企業ユーザーにとってはハードルが依然として高い。例えば、当社でソブリン環境を用意し、パーティションで区切った上で複数のユーザーに使ってもらう共同利用型サービスを立ち上げるといったビジネス創出も想定している。
社内では“総和拡大”と言っているが、AIで自動化される業務がある一方、プロジェクトの回転率を高め、人的リソースに余裕を生み出し、より多くの受注を可能にするなど、トータルでプラスに持っていき、将来的に年商1兆円の達成を目指す。