NEC
クラウド指向の提供を重視
販社経由など「商流」は模索
NECでは、クラウド・サービスとして「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」の提供に力を注いでいる。中・大企業を中心に顧客を開拓を進めている。一方、中堅・中小企業(SMB)販売代理店などを経由した商流については模索中というのが実状である。
同ソリューションは、基幹業務システムの全体最適化するほか、SaaS型や共同センター型、個別対応型などに分類して「持たざるIT化」を促すというものだ。今年4月から開始している。体制については、2012年度(13年3月期)までに1万人のサービス要員を育成。これまでSIを担当していたSEを、サービス提案やデータセンター向けシステムの構築・運用ができるように配置する。また、顧客のビジネスプロセス再構築を支援する「ビジネスモデルコンサルタント」やサービスの提案からSI・運用までをトータルにマネジメントする「LCM型プロジェクトマネジャー」など中核となる要員については約2000人を揃える予定だ。
サービスを開始するにあたり、実際にNEC社内でシステムの全面刷新を今年3月から実施。ワールドワイドで構築を進めており、日本の主要なデータセンターにシステムを集約しているという。こうしたノウハウを生かしてサービスインしたわけだ。広崎膨太郎・副社長は、「当社の場合、社内システムのTCOを2割程度は削減できる。このサービスを導入すれば、システムの効率化を図ることができるのは間違いない」と自信をみせている。また、同サービスの特徴として「企業のシステムは、使用価値と所有価値を分けて考えなければならない。そのため、当社はクラウド・サービス事業を手がけるうえで、まずはシステムの全体最適化を促している」としている。
同サービスを中心にクラウド時代を見据えた製品やサービスを提供拡大を図っているため、NECは「ハードよりもソフトが重要」(矢野薫社長)とのテーゼを掲げている。ただ、問題になってくるのが、これまでサーバーなどハードを中心に構築してきたディストリビュータやリセラーなど販売代理店を経由した商流だ。「今は具体的な取組みを模索している段階」(広報関係者)という。「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」が現段階で顧客対象として中・大企業を想定していることからも、SMBを開拓するための製品・サービスの創造やクラウド・サービスを間接販売するためのビジネスモデル構築が必須といえそうだ。
解説
クラウド時代で販社獲得合戦
新たなステージに突入
大手SIerのなかで先行してクラウド/SaaSビジネスに着手したベンダーの多くでは、「売る」体制をきちんと構築しており、実際に「売り上げ」に繋がっている。一方、日本IBMや富士通、NECなど大手ITメーカーは、既存パートナーの「再販制度」が足かせになり、具体的な「商流」を確立するまでに時間を要している印象がある。 大手ITメーカーが抱える販売パートナーの多くは、サーバーやパソコンなどハードウェアを主体に販売して収益をあげてきた。これが、クラウド/SaaSをメインに提供する時代が来ることで、いまの自社ビジネスモデルをどう変えるべきなのかイメージできないでいるためだ。 全国サーバーメーカー販社の多くは、データセンター(DC)をもっていない。自社でクラウド/SaaSを提供するために、ITインフラ整備に膨大な投資が必要なことが足かせになっている。大手ITメーカーにとっては、ここがチャンスとなる。DCをもたないパートナーに対してクラウド技術やクラウド上での「再販モデル」を提供することが一つ。もう一つは、収益を底上げできる施策があれば、パートナーは大手ITメーカーのDCを借りる(ハウジング・ホスティング)ことになり、その賃料が入ってくることになるからだ。 オフコン、クライアント/サーバーとITインフラの変遷期に繰り広げられた大手ITメーカーによるパートナー獲得合戦が新たなステージに突入する。ここでパートナーをどう囲い込むかがクラウド/SaaSビジネスの勝負を分ける。一方、パートナーにとっては、どこと組むかの選択眼を求められる時代を迎えたことになる。