ベンダーの動き
地域ベンダーと組んで拡販へ
SaaS/ASPへの移行進める NEC
全国初の基幹業務共同利用
成功事例を前面に打ち出して拡販
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NEC 青木英司統括部長 |
国策として自治体クラウドが進められているなかで、いち早く共同利用を実現したのが、北海道4市町からなる西いぶり広域連合と、山形県7市町からなる置賜地域だ。
NECは、地元システム開発会社2社とともに、米沢市、長井市、南陽市、高畠町、川西町、小国町、白鷹町、飯豊町の山形県8市町で構成する置賜地域で、基幹業務システムのSaaS/ASPサービスと、これらに付帯するデータ入力・帳票出力・封入/配送などの作業をアウトソーシングする仕組みを築いた(小国町は不参加)。基幹システムをサービスのかたちで提供するのは先進的な試みだという。
NECは自治体システムの市場で、住民票などの「住民情報システム」で約1750団体の自治体のうち350団体、「内部情報システム」である財務会計システムで200団体への導入実績をもつ。この実績は、全体のシェアでは2割、人口3万人以上の自治体のうち3割を占めていることになる。公共ソリューション事業部の青木英司統括部長は、「電子申請、施設予約などフロント・エンドの部分導入は進んでいるものの、自治体のシステムのなかでも、基幹系システムに関しては、サービス利用はまだ進んでいないとみている」と分析する。前述の通り、自治体の財政は非常に厳しいところが多い。後期高齢者医療制度、子ども手当法など、新制度が増えているなか、ITなしには業務が回らない状況になっている。IT投資予算を抑えつつも確実に新制度への対応が求められるだけに、クラウド利用の必要性は格段に高まっている。
置賜地域で参加する7市町の基幹系システムが稼働し始めれば、相当な業務効率化とコスト削減が見込まれる。ただ、7市町では、既存システムのリースアップ時期がばらばらなので、順次準備ができてからの移行となりそうだ。
NECでは、地方公共団体向けソリューション「GPRIME for SaaS(ジープライム フォー サース)」を、人口10万人以下でカスタマイズをさほど必要としない自治体に提案していく方針だ。「基幹業務の共同利用という山形県の事例は全国初。積極的に拡販していきたい」と意気込む。3年で200団体への導入を目指す。
日立製作所
グループ統一ブランドで拡販
2012年の住基法改正を商機に
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日立製作所 前田みゆき副センタ長 |
日立グループは、クラウドビジネスを推進するにあたって、グル―プ横断組織「自治体クラウド推進センタ」を設立した。日立製作所は、2013年に約1750団体のうちの700団体、15年には1000団体、18年には全自治体の80%にのぼる1350団体がクラウドの導入を行うという強気の予測を立てている。
自治体システムは、人口の少ないところほど、構築・運用費が高くなる傾向がある。法改正が頻繁に行われている状況にあって、電算コストは上がる一方となり、自治体は苦しい立場に置かれている。また、個別に導入したシステムを個々に運用していることで、情報漏えい事故も増加している。
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日立製作所 石野ちはる主任技師 |
今、求められているのは、LGWANもしくはVPNを利用し、さらにデータの所在を特定可能にすることでセキュリティを担保するシステムだ。また、民間業者が提供するSaaSサービスの利用、もしくは共同利用協議会がデータセンターにクラウドを構築する共同利用型や、さらに、大規模自治体における自庁システムのプライベートクラウド化にも対応したソリューションが必要だ。
日立グループは、今年3月、自治体ソリューションのブランド「SUSTINAD(サスティナード)」を体系化。「住民記録、税など、日立公共エンジニアリングが財務・人事給与、日立製作所が介護・後期高齢など、アプリケーションでそれぞれ強みのある分野を提供するもので、グループの力を合わせて拡販する」(自治体クラウド推進センタの前田みゆき副センタ長)という戦略で動いている。「共同アウトソーシングの頃と比べ、クラウドが出てきてから、アプリケーションのバージョンアップの方法や課金方法が確立されている。システムを利用する環境が整ったことも追い風になっている」(自治体クラウド推進センタの石野ちはる主任技師)。国はいっそう真剣になり、旗振りも熱を帯びるなかで、一丸となってシェア拡大を進める。
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日立情報システムズ 増田勝二担当部長 |
日立情報システムズは、電子自治体ソリューション「e-ADWORLD2」を展開。「e-ADWORLD」は、現在までに180の団体が導入している。同社は昨年11月から「e-ADWORLD2/SaaS」の展開を開始し、直近では東京都島しょ部4村と奈良県北葛城郡王寺町の5団体への納入実績をもっている。自治体情報サービス事業部自治体事業推進本部公共マーケティング部の増田勝二担当部長は、「2012年の改正住民基本台帳では大幅なシステムの変更が必要とされることから、これが契機となって自治体の調達が盛り上がるとみている。来年がクラウドの盛り上がる一つのポイント」と捉えている。
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