日本電子計算
ウェブシステム拡販を進める
地元DCなどとの協同歩調で
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日立情報システムズ 増田勝二担当部長 |
日本電子計算は、全売上高の20%ほどを自治体関係のビジネスが占める。同社は、自治体市場において、基幹系のソフトウェア、サービスを提供している。ウェブで作り込んだオールインワンパッケージである総合行政情報システム「WizLIFE(ウィズライフ)」を前面に打ち出して、従来のクライアント/サーバー型のシステムからの移行を促している。庁内導入型での利用や、同社のデータセンターでシステムと帳票の印刷、梱包、配送といった付帯サービスも組み合わせてフルアウトソーシングにも対応することによって、コストを抑えて提供することもできる。また、業務アプリケーションを汎用化することによって、共同利用にも対応する。既存顧客60団体のうち、32団体が最新バージョンに切り替え、今年度第1四半期には4団体合計で6万人規模の自治体の共同利用システムを受注し、構築している。
日本電子計算は、今のところ首都圏、近畿、東海地方に絞って事業を展開している。同社では、手の届く範囲で直販で事業展開しているが、他の地域では、大手のメーカーや、その地域で展開するデータセンター事業者と組んで、そのインフラに自社のアプリケーションを置き、付帯サービスについては、自社の支社に巨大高速プリンタなどの設備を利用する協業体制を敷いていくことを視野に入れる。維持コストは、クラウドに切り替えることで3分の1から4分の1程度抑制できると見込んでおり、ユーザーはメリットを享受することができる。「コスト削減がきちんと実現できるか否かについて、自治体は真剣に考えている。そうしたことからも、アプリケーションの充実は選ばれるうえでの命綱だと思っている」(営業統括本部 公共営業部の博多敏広部長)と話す。
自治体クラウド開発実証の取り組み
京都府のケース 自治体クラウド開発実証事業は、電子自治体の基盤構築にクラウドコンピューティングを活用し、その実証実験の成果を全国に展開できるようにするためのものである。北海道、京都府、佐賀県でデータセンターを整備し、大分県、宮崎県、徳島県が共同利用するかたちで6道府県、66団体が参加する。
実証するのは、データセンター機能実証、データセンター間接続実証、アプリケーション接続実証という3項目だ。クラウドにおいて不可欠となる仮想化技術に対する効果や、LGWANの性能テスト、自治体クラウドが全国に展開された際の、ASP/SaaS全国利用など、多岐にわたる項目をこなしていく。開発実証事業のPMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)であるデュオシステムズの伊藤元規常務は「クラウドを導入していない自治体も多いので、モデルとして役に立つものを成果として残そうとしている。そのために業務と絡めて、何をしたらどんな障害が起きて、どのように対処した、といった技術によらない報告書づくりに努めている」とコメントする。
現段階では準備中の自治体も多いが、そのなかでは京都府が先頭を切って実証実験をスタートした。都道府県を横断したシステムの共同化と業務の標準化を推進している。府内にあるデータセンターのクラウド環境を利用し、徳島県の4市と文書管理システムの実証実験を実施。9月中に富士電機システムズがLGWANを介した文書管理システムの広域実証実験を開始する予定だ。 今後は、住民記録・税・福祉関係業務を管理する基幹業務支援システムの共同化に取り組んでいく。現在は府内5自治体で稼働しており、4自治体で導入を進めている。
地域ベンダーはどうなる?
淘汰か下剋上か
自治体のなかには、入れ替えたばかりのシステムが稼働しているケースや、独自にカスタマイズしてシステムを運用したいと考える財力のある自治体もあり、足並みを揃えてクラウドへ――とはなっていないようだ。財政難の自治体では、IT予算は削られる費目の筆頭株という。だが、行政サービスを遂行するにあたっては、ITがなければ回っていかない。とくに、新制度が加わる際の対応はITシステムなしでは難しい。すでに2012年には、改正住基法で外国人の住民登録といった大幅な制度の変更が予定されており、日立情報システムズはここがクラウド移行の一つのポイントと捉えている。
一方、総務省が音頭をとって推進する自治体クラウド開発実証事業は、地場ベンダーにとっては歓迎できるものではないとの声が聞こえる。「中抜き」の構図が鮮明となり、大手メーカーを頂点にして地場の系列店がその恩恵を受けていた従来型の図式は崩れ、淘汰される懸念もでているからだ。
そうした状況にあって、「最近は、コンペで大手ベンダーに勝ち、地域ベンダーのシステムが選定されるケースも出始め、逆に首都圏に進出する動きをみせるベンダーも見受けられる。おそらく大手ベンダーもすべてを囲い込もうとは思っておらず、例えば大手ベンダーは設備などを提供し、その上に載るソフトウェアを地域ベンダーが提供する協調の構図もあり得る」と前出の日本電子計算の博多部長はみる。NECは、置賜地区で、サポート力のあるベンダーなどと共同でサービスを提供している。「独自色を鮮明に打ち出す地域ベンダーは、“下剋上”も可能になるかもしれない」(博多部長)とのことだ。