富士通、NEC、日本IBM、日立製作所の大手ITメーカーが推進するクラウド戦略が出揃った。各社は年度内に「クラウドを売る」パートナー戦略を固めるが、いずれも中堅・中小企業(SMB)を開拓するプレーヤーとして既存パートナーのビジネスモデルの転換を促し、チャネル経由でサービス展開することで共通している。各社のパートナー獲得合戦に再び火がつく気配だ。
ビジネスモデルの転換が急務
変化できないパートナーは収斂へ クラウドの先行きについて、富士通の齋藤範夫・クラウドビジネス推進室担当課長は、こう推測する。「いずれ、パートナーの売り上げ比率は、クラウド・サービスが7割、自社導入は3割になる」と。自社導入とは、従前通りのクライアント/サーバー(C/S)型システムであり、今後浸透するであろうプライベートクラウドを指している。
「いずれ」とはいつなのか、その時期には言及していないが、パートナーのサービス比率を高める戦略を強力に推し進めていることは確かだ。おそらく、他の3社(NEC、日本IBM、日立製作所)も心づもりとしては同じ方角を向いているだろう。
大手4社が競い合うようにクラウド戦略を打ち出すのには、理由がある。日本IBMの岩井淳文・パートナー&広域事業担当執行役員は、「早く手を打たなければ、パートナーに悪いメッセージが届いてしまう」と、今年2月にパートナー戦略を公表した。
昨年の年末頃に、この4社はオンプレミス(企業内)で構築する中堅・大企業向けプライベートクラウドの施策を相次いで発表した。こうした動きをみて、傘下のパートナーの間には「大手ITメーカーは、自社でエンドユーザーを囲い込もうとしている。そして、いずれはパートナーのハシゴを外すつもりだ」(某SIer幹部)との不安が広がりかけた。
これを打ち消すため、各社は新たなパートナー戦略を打ち出したともいえる。現在みえている各社のクラウド・サービスを再販するパートナー戦略は“急仕上げ”であり、過渡期にあることは間違いない。
ただ、仕上げの段階から実行に移るのは、そう遠くない。現在、有力パートナーから順次、「ビジネスモデルの転換」の支援を本格化している。技術的支援や人材教育など、かなり手厚い支援内容だ。気になるのは、すべてのパートナーを対象にしているわけでないということ。パートナー各社は口を揃える。「おそらく、パートナーの数は減る」。はっきりとは言わないメーカーもあるが、「変化できないパートナーは収斂する」という方向で一致している。
逆に、「サービス売りに適したベンダーが出てきた」と、新興ベンダーに目を向けていることも4社に共通する。オフコン時代に経験した「ディーラー獲得合戦」が再燃することが予想される。
富士通
販社向け新認定制度をキックオフ
まず、ディーラー11社に注力
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富士通 齋藤範夫 クラウドビジネス推進室 担当課長 |
富士通は今年度(2011年3月期)の上期、社内で「ソリューション・ディーラー」と呼ぶパソコン/サーバーなどハードウェアの販売をメインとする販社(大興電子通信や都築電気など)と、クラウドコンピューティング下における協業体制を議論してきた。 中堅下位から中小企業向けにクラウド・サービスを提供するパートナーの支援策を、今年度の下期早々に開始する(9月27日号で既報)ことを表明した富士通。クラウド販社体制を築く手始めとして、「モノ売り」から「サービス売り」への転換で相当の負担を強いられる大手販社11社に対し、「各社の“得意技”を生かし、既存ビジネスとクラウド・サービスを融合してビジネス展開できる事業体制づくりを支援する」(齋藤範夫・クラウドビジネス推進室担当課長)と表明した。ハード、ソフトウェア、クラウド・サービスなどを融合したソリューションの作り込みや、顧客へ提案・販売・構築できる「売る能力のある人材の育成」(同)などについて、販社と詰める。
これと並行して、「ソリューション・ディーラー」に比べて富士通製品の取引額が小さい系列の地場SIerなども含め、富士通のクラウド基盤上でビジネス展開できるようにする新パートナー制度を、近く開始する。新制度は、クラウド販売体制を構築するための支援策と、クラウド・サービスを再販する新たな認定制度をあわせもつ「クラウド・インテグレーション・パートナー」というプログラムだ。
新プログラムでは、クラウド・サービスやパブリック・プライベートの両クラウド基盤の提供方法や既存のC/S型システムとクラウドを融合させる方法、ユーザー企業への提案方法や技術ノウハウなどを伝授する。同社は、下期から大手11社向けに講習会を催し、「想定した顧客に対し、クラウドとC/Sをどう売り分けるかを議論する。ハードのリース切れのタイミングで何を提供すればいいのかといった、より実戦的な研修を積む」(齋藤担当課長)。最終的には、こうした講習会を経て技術ノウハウをマスターした販社は、富士通のクラウド・サービスなどを再販することができるパートナーとして認定する。 この認定制度が、従来の取引先に適用していた制度と、どう棲み分けているかは不明。ただ、「従来の取引基準に満たないパートナーも認定を受けられるようにする」(齋藤担当課長)としているので、売上目標をコミットしなくても加われる制度になりそうだ。富士通は、系列販社約600社と新規パートナーを含めて、早期に200社を認定することを目標に据えている。
NEC
「手数料モデル」でないサービス追求
契約制度を再整備、事業主体を販社に
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NEC 福定和彦 パートナービジネス営業本部長 |
NECは、今年度(2011年3月期)上期に発表した通り、中堅・中小(SMB)民需市場向けのプログラム「SaaSビジネスパートナープログラム」を開始した。コンセプトは、「パートナーと立ち上げるサービスビジネス」。NEC製のパソコンやサーバーなどハードウェアや、ソフトウェアを販売する「特約店」(約370社)と新規販社を含め、同社のクラウド基盤やクラウド・サービス、地域特性のある販社の既存ビジネスを生かして、「サービスビジネスにスムーズに参入できるサービス基盤やSaaSアプリケーションメニューを提供する」(福定和彦・パートナービジネス営業本部長)と、今期中の体制固めを急ぐ。
この新プログラムは、「パートナー主体のビジネスを実現する」という。競合他社が自社基盤で提供するクラウド・サービスの場合は、「SaaSやパブリッククラウドが、販社にとってみると再販・手数料を得るだけのモデルだ」と福定本部長は指摘する。
NECは、パートナーとの連携パターンを提示している。「NECのサービス基盤を活用したホスティング・サービスの実現」「販社が自社開発したパッケージソフトをSaaS化したサービス事業の立ち上げ」「NECのSaaSアプリケーションを活用したサービス提供」の3パターンだ。NECのSaaS基盤には、販社や独立系ソフトベンダー(ISV)が提供する有力ソフトを搭載し、質と量を拡充していく。 これらのパターンを叩き台にして、各販社と個別に協議を開始。クラウド/SaaSを事業化する基盤構築や、技術ノウハウ、アプリ検証などを提供するほか、NEC側では全国支社・支店が販社をバックアップする。
この支援策で特徴的なのは、「手数料モデルではなく、サービス事業の主体を販社にする」(福定本部長)ことを含め、契約制度を整備したことだ。
ユーザー企業側からみると、クラウド・サービスの場合は、発注先や使用許諾先など契約相手がバラバラで煩雑になることが予想される。「当社の基盤は顧客に近いデータセンターから提供する。SMB専業のNECネクサソリューションズの販社が協力体制を敷き、営業支援を行っていく」(同)ことなどによって、早期に特約店の大半をサービスモデル化することを狙う。
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