NTTデータ先端技術
金融業など基幹系で導入進める
顧客の要望もとにアセスメントで提案
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NTTデータ先端技術 堀尾俊明 オラクル事業部 開発担当部長 |
NTTデータグループは、Oracle BI、SAP Business Objects、MicrostrategyなどのBI製品やオープンソースのBIツールなど多様な製品を取り扱っている。
グループの一社、NTT先端技術は、NTTデータと連携して顧客の要望を聞きながら、アセスメントを行うなどしてニーズに合わせた最適な製品を販売している。NTTデータおよびNTTデータ先端技術は、BIソリューションの提供で、オラクルが最も大きなビジネスボリュームを獲得したパートナー企業に贈る「Oracle Award 2010」を受賞した。
NTTデータグループは、金融機関を中心とした大規模なミッションクリティカルシステムにOracle BI製品の販売実績が多く、また、BI製品の導入に合わせて、DB製品のデファクトであるOracle Databaseも基幹系のデータベースとして採用が進んでいる。Oracle BIは、当然Oracle Databaseとの親和性が高いことから、Oracle Databseとセットでの販売実績が伸びてきている。
今後は流通業や製造業の新たな需要をつかんでいく。流通業では、オラクルの流通業特化型のBIのフレームワーク「Oracle Retail Data Model」を日本の顧客向けにカスタマイズして提供していくほか、製造業では、例えばRFIDのトランザクションのキャッシュを利用した在庫管理のリアルタイム分析の需要がBI製品販売のターゲットと考えている。
現在のような低迷した経済状況では、売り上げに直結しない社内投資は抑制される傾向にあるが、BI製品は逆に売れるといわれている。これまでは自社でスクラッチ開発し、競争力強化につなげていた企業が多い。ただ、スクラッチ開発では長い期間を要する。ビジネスのスピードが速くなるなかで、迅速に導入できるBI製品のメリットを訴求していく。
「Oracle BIは機能が充実しているのが、メリットでありデメリットでもある。使い方に慣れるまでは難しいものの、機能が豊富な分、さまざまな分析ができる。効果が出るまでは先行投資の部分が大きいが、これまで自社で開発していた企業に対して、オラクルのSOAやCRMなどと組み合わせて、経営戦略に役立つシステムの提案を行っていきたい」(オラクル事業部 堀尾俊明・開発担当部長)としている。
日立ソリューションズ
BIシステムをトータル提案
医薬業界のMR向け、IFRSを商機に
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日立ソリューションズ 奥沢浩 部長 |
日立ソリューションズは、13年前からSAPのBI製品Business Objectsを取り扱い、現在までに300社弱への導入実績をもつ。Business Objectsは、国内市場で金額シェアトップの製品。
Business Objectsが国内で受け入れられてきたのは、もともと定型帳票ツールから始まり、そこから分析機能を強化していったという経緯がある。「欧米のBIと日本で売れるBIは違う。帳票に縦軸、横軸に文字を書いたり、線を引いたり、セルに網を掛けたりするのは、日本人特有の文化だ」とアプリケーションシステム本部 ビジネスインテリジェンスの奥沢浩部長は指摘する。
Business Objectsは日本人の帳票文化にマッチしていたことから、国内でシェアを伸ばしてきたのだ。
帳票を作成するだけならExcelで間に合うが、担当者が自分でDBからデータを引っ張ってくる必要があり、誤入力などの人為ミスや改ざんも起きる。また、データがクライアントに保存されるために、情報漏えいなどのリスクも伴う。その点、BI製品を利用すれば、DBと動的につながっているので、大量のデータを1か所に保存したまま、安全に利用することができる。金融機関のなかには、クライアントにデータを残さないようにシンクライアントを利用しているところもある。Business Objectsでは、セキュリティ機能を強化。システム監査機能によって、いつ、誰がデータにアクセスしたかのログを取得することができる。セキュリティの高さから、日立ソリューションズでは、金融機関への導入実績を上げている。
前述のように、BI実現のためのシステムの導入費用の7~8割は、バックヤードのデータ統合やDB設計に費やされる。日立ソリューションズでは9000人のSEパワーをもって、活用目的に合ったETL、DWHを含むBIシステムをトータルで提案する。
日立ソリューションズは今後、多角的な分析機能を要求する医薬業界のMRや景気変動に左右され難い社会インフラ系企業にも拡販していく。また、「2015年に強制適用を迎えるIFRS(国際財務報告基準)は一つのビジネスチャンスになる。国内シェア1位であるSAPのERPの会計モジュールとの親和性を生かして、拡販していく」(奥沢部長)としている。
日本情報通信
大規模で複雑多岐なニーズ応える
中堅市場向けに団体設立も
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日本情報通信 内藤剛 センター長 |
日本情報通信は、親会社が電話会社であることから、電話会社のコンタクトセンターのCRMデータを利用して、顧客の意見や要望を分析したいというニーズに応えるために「IBM Cognos」を手がけ始めた。同社はIBM製品を組み合わせて、データの発生源から、情報の視覚化までシームレスなBIシステムを提供する。
BI製品はこれまでのサマリーデータの分析から、明細データの多角的な分析や予測分析など、求められることが多様化、高度化している。販売するSIerが製品を理解しなければ正しい導入ができないこともあって、IBMでは「Software ValueNet」というスキルに卓越したSIパートナーを認定している。日本情報通信はこの資格をもち、製品の技術支援やサポートを提供している。「製品の作り手の気持ちを理解して『できる』『できない』ではなく、『Cognosだったらこうすれば顧客のやりたいことを実現できる』ということを考えて、ソリューションにつなげていく」(SIサービス事業部ソリューションコンピテンシーセンターの内藤剛センター長)。
最近は、ユーザー数の上限を設けた中堅規模向けの「Cognos Express」も登場している。日本情報通信では、中堅規模企業向けにBIを浸透すべく、IBMのアプライアンス製品「IBM Smart Analytics System」を用いて、バックヤードのインフラ構築費用を削減するとともに、大手顧客については特定業種向けのデータモデルを提案する。予測分析、データマイニング、テキストマイニングなど、IBM製品でこうした複雑多岐にわたるニーズに応える。
日本情報通信は、流通業、製造業、電話会社を中心に製品の拡販を進めていく。また、同社は2年前からクラウドに力を入れている。クラウドとオンプレミスの基幹系システムをリアルタイムに連携するソリューションを展開すべく、試行錯誤している段階だ。
今年8月、日本情報通信はクロスキャット、ジール、ブレインチャイルドなど、主に中堅企業の市場でBI製品を販売するパートナーのネットワーク「BEC」を設立した。サポートメンバーとして、長年BIシステムの構築に携わってきた4社が中心となってCognosを取り扱うリセラーを中心に中堅市場拡大を支援するというものだ。
中堅企業市場では、販売するプレーヤーが不足しているほか、製品の訴求不足、リソースが不足している。そこで、4社が中心となってソフトウェアメーカーとリセラーの間に入って提案・構築・技術支援を地域販社などのリセラーに提供し、メーカーにも進言する。ソフトウェアメーカーは、サポートメンバーに複雑・高度化するBI製品の技術支援、リセラーに営業支援・マーケティング支援をそれぞれ提供する。日本情報通信はこの団体の主幹企業であり、製品のディストリビューションも行う。「地場に根を張っている、非常に年商が大きい企業でも、意外にITシステムの導入が進んでおらず、BIの力を欲しているところが多い。BECが地域販社のスキル向上を支援していくことで、こうしたニーズに応えることができるはずだ。地域の企業や販社が元気になってほしいという狙いで事業を進めている」(内藤センター長)と話している。
Epilogue
大手企業は複雑高度な情報活用にシフト
中堅企業にもすそ野広がる
BI製品は、計画と実績を照らし合わせて管理するためのツールから、リアルタイムのデータを取得して分析し、予測し、マイニングするという未来志向のツールになりつつある。大手企業では予測分析やマイニングなど、高度な情報活用のニーズが高まっている。一方、中堅企業向けのBI製品や業界団体も立ち上がり、市場拡大が期待されている。
BI製品の導入が進んでいたのは、流通業、製造業、金融機関など。今後は医薬業界や社会インフラ、官公庁などの市場も有望とみている販社が多い。官公庁・地方自治体については販社の予想通りにはいかず、民主党政権で予算が絞られているために、民間に比べると導入スピードが遅い。業種に限らず、IFRS(国際財務報告基準)の強制適用が控えており、BIにとっても一つビジネスチャンスとして期待できそうだ。