グローバル対応ERPが重要性を増す
生き残り戦略で不可欠に
グローバル対応がキモ 業務アプリケーションベンダーにとって、グローバル化への対応が喫緊の課題となっている。中堅規模以上の企業が海外展開を加速化するなかで、ベンダー各社は多言語・多通貨や多基準管理などの機能を追加し、あわせて海外事業所の開設やサポート体制の構築、パートナーの獲得を急いできた。
東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は、生産管理システム「MCFrame」や会計に強い「A.S.I.A.」を海外で販売してきた。なかでも「A.S.I.A.」は、国内企業の海外展開をサポートするために開発した統合基幹業務システム(ERP)で、16か国に展開してきた実績をもつ。プロダクト事業本部 マーケティングアライアンス部の山下武志氏は、(1)「海外製グローバルERP」は機能の網羅性にすぐれている一方で、導入コストや人的リソースの負担が大きすぎる、(2)「現地パッケージ」は低コストで導入できるものの、保守サポートレベルが低いことが難点、(3)「自社開発システム」は本社がシステム内容を完全に管理できるが、開発・システムメンテナンスコストが大きくなる──といった留意点を説明する。「A.S.I.A.」は第4の選択肢として、こうした課題を解決するERPであるとアピールする。石田壽典社長は、事業強化にあたって、「Windows Azure」上で「A.S.I.A.」をクラウドサービスとして提供する計画を明かす。
これまでに累計6000社以上に納入した「SuperStream」を開発するエス・エス・ジェイ(SSJ)は、「国際財務報告基準(IFRS)とグループ経営、クラウド、グローバル」を、差異化戦略の中核に位置づける。グローバル事業を展開する国内企業と国内に拠点を置くグローバル企業を対象ユーザーに定めている。
同社は2011年2月、「Super Stream-NX SaaS対応版」をリリースした。現在、14社のSaaS販売パートナーを経由して販売している。オンプレミスとクラウドの提供で企業の要望に応える。パートナーからは不満の声が聞かれる多言語・多通貨対応も急ぐ。
大江由紀夫社長は、「NX(オンプレミス版)は2009年にリリースして以来、機能モジュールを充実させてきた。今年は、固定資産や多言語・多通貨対応を進める」と意気込みを示す。
有望性が増す2層ERP 2層ERP戦略に改めて注目が集まっていることにも留意しておきたい。買収企業の既存システムを最適化したり、地域・部門レベルでの要望に対応したりする場合、低コストで使い勝手がよく、現地要員の賛同が得やすい2層ERPが求められている。スタートアップ企業や急成長企業にとっては、とくに有効な戦略だ。
ネットスイートの「NetSuite OneWorld」や日本マイクロソフトの「Dynamics AX」は明確に2層ERPをうたっており、いずれも国内市場で存在感を増している。ネットスイートは純クラウドERPベンダーとして、いち早く地歩を固めてきた。海外の事例ではあるが、グローバルで急成長を続けている米グルーポンは、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、韓国、オランダの5か国に6週間で「NetSuite」を展開することに成功した。富士通マーケティングやアイネットが有力パートナーとして揃う。日本マイクロソフトは、「Windows Azure」を活用して「Dynamics AX」を提供する計画だ。国産の「A.S.I.A.」も擬似的な2層ERPと位置づけられるだろう。提案の幅が広がることで、商談の機会が増えそうだ。
[次のページ]