BCPとDRをきっかけに動き出すSIer
サービス発展に大きな余地
BCP、DRはユーザー企業が自らシステムを構築するよりも、すでに強固な災害対策を施してあるDCを活用するケースが増えている。SIerをはじめとするITベンダーにとっては、BCP、DRをきっかけとして、さまざまなサービスに発展する余地が拡大したことになる。そこで、DCを活用した関連ビジネスの実情を探ってみた。
脱クラサバはBCPの第一歩 ユーザー企業が自前でオーダーメードのシステムをつくる従来型のSI(システム構築)は、年々減少傾向にある。SIerの多くは、ユーザーから開発部分を請け負うかたちで受託型のソフト開発を手がけてきたが、このビジネスモデルがそろそろ限界にきていることの現れだ。SIerが、DCを活用したサービスビジネスへのシフトを急ぐ背景には、こうした切迫した台所事情がある。東日本大震災以降、ユーザー企業が高い関心を寄せるようになったBCPやDRのブームは、SIerにとって、サービス化を進めるきっかけとなった。
国内のサーバー設置台数の状況は、オンプレミス型が半数を超えているとみられ、とくに中堅・中小のユーザー企業で運用しているケースが多い。さらにシステム規模が小さくなれば、扱いやすい「Windows Server」の比率が高まる。ホスティングサービスなどDCで運用されている「Windows Server」は、バージョン2008など比較的新しいものが多いが、オンプレミスでは「依然として2015年7月に延長サポートが切れる予定の『Windows Server 2003』の構成比が高い」と、有力ホスティングベンダーの幹部はいう。さらに、サーバーにぶら下がるクライアント端末のなかにも、2014年4月にサポートが終了する見込みの「Windows XP」が含まれる。
つまり、2014~2015年にかけて、Windows系のクライアント/サーバーシステムはまとまった更改時期に差しかかる。見方を変えれば、サーバーだけでなく、クライアントもまとめてDCに取り込める可能性が高まっているのだ。BCPとDRを考えたとき、確かに重要データが格納されているサーバーのバックアップは必須だが、クライアントのバックアップが手つかずのままでは、いざ復旧を行うときに大きな障害となってしまう。
先の震災でも、オフィスが使えなくなったり、通勤が困難になった場合、オフィスにある据え置きのデスクトップパソコンは役に立たなかった。これを代替する手段として、普段からスマートデバイスや自宅のパソコンでも、会社の情報システムにアクセスできるようにしておけば、いざというとき“音信不通”にならずに済む。クラウドサービスの有力ベンダーのGMOクラウドは、BCPの一環として「社員が会社に集合できなくても、業務を継続できる仕組みづくりと実地訓練に取り組んでいる」(青山満社長)そうだ。
実は低コストの最新型DC GMOクラウドは、2011年10月にデスクトップサービス(DaaS)の「IQcloud Desktop」を開始した。青山社長は、「サーバーだけでなく、デスクトップもDCで仮想化することで、災害時にオフィスに出勤できなくなっても、自宅で業務を継続できる」と話す。きっかけはBCPではあるが、日々の業務では、DaaS化によってタブレットやスマートフォンなどスマートデバイスからもアクセスできる環境が整う効果のほうが、実際にはワークスタイルの変革に効果を発揮する。
古いクライアント/サーバーの呪縛から解き放たれることで、ユーザー企業の業務効率や生産性を高める現代的なアーキテクチャにマイグレーションすることが、結果的にBCPにも有効になるという見方もできる。
ミック経済研究所によれば、震災以降、デスクトップサービスの一種であるシンクライアントを導入する動機としてBCPを挙げる企業が大きく増えている。もともとはセキュリティ強化のために導入するケースが多かったが、これにBCPと前述の「Windows XPの更改」のためにデスクトップのサービス化へのニーズが加わっている状況だ。
オンプレミスからDCへの集約化が進んでいる背景には、DCのそのものの性能が長足の進歩を遂げていることがある。DC建屋の耐震性もさることながら、IT機器の駆動に関わる電源と冷却性能が飛躍的に高まったことで、実際のところ、1サーバーラックあたりのコストも下がっている。
従来の第2世代までのDCは、ラックあたりの電源供給量が標準2kVAまでというケースもざらにあった。2010年以降に建設された第3世代DCは、標準6kVA、最大で15~20kVAまで供給する能力をもつまでに性能が高まっている。2kVAと6kVAの違いをわかりやすくいえば、標準電源ベースで1ラックあたり3倍のIT機器を集積できることを意味する。第2世代DCの設備では3ラック必要だったのに対し、第3世代DCでは1ラックの賃借料で済む。DCに詳しいSIer幹部によれば、3分の1のコストとまではいかないまでも、「ラックあたりの賃借コストは半減する」という状況だ。
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