オープンソースソフトウェア(OSS)市場に、拡大の機運が高まっている。ユーザー企業にとっては、求めるシステムを低コストで導入できるという利点があり、利用が増えている。企業だけでなく、予算に制約を受ける自治体などが導入する動きも活発だ。OSS関連ビジネスを手がけるITベンダーにとっては、これまで以上にビジネスを拡大するチャンスが訪れているわけだ。
このような状況の下、Linuxディストリビューション製品など、OSSを主力事業に据えるメーカー各社が販社とのパートナーシップを深め、さらにビジネスを拡大しようとしている。この特集では、市場の現状や業界団体の動き、OSSメーカーの販社支援策を追う。(取材・文/佐相彰彦)
【市場の状況】
「低コスト」が導入を後押し
ベンダーのOSS案件が増加傾向に
企業がOSSをベースとするシステムを導入するケースは従来からあったものの、ここにきてITベンダーの多くがOSSをベースとするプロジェクト案件の受注を増やしていることが明らかになった。
調査会社のIDC Japanが実施したシステムインテグレータ(SIer)/サービスプロバイダ204社を対象とした「OSSの採用動向調査」によれば、過去3年間のOSSをベースとしたプロジェクト数は、「非常に増えている」「増えている」とした回答を合計すると37.3%に達している。逆に、「減っている」の回答は、7.2%に過ぎず、OSSプロジェクトが増加傾向にあることを表している。
またIDC Japanは、OSSの使用実績と過去3年間のITビジネスの売上高の変化の関係を分析している。その結果、「OSSの使用実績が多い」と回答したベンダーの37.2%は過去3年間の売上高が増加している。一方で「OSSの使用実績が少ない」と回答したベンダーのなかで売上高が増えているケースは15.2%にとどまり、さらには売上減少とした回答が40.5%という結果が出た。つまり、OSSを活用したシステム構築がベンダーの事業を成長させることにつながっているわけだ。
さらにIDC Japanは、ユーザー企業312社を対象とした「OSSの利用実態調査」も行っている。それによれば、使用しているOSSの種類で「オペレーティングシステム(OS)」が59%で最も多く、「ウェブサーバー/アプリケーションサーバー」「メール/グループウェア/コラボレーションツール」「データベース管理システム」が30%を超えている。
OSSを使用するメリットについては、「導入のコストを削減することができる」との回答がが53.2%で、次に「運用保守のコストを削減することができる」が32.7%。OSSに関して、ユーザー企業はコスト削減効果を評価しているということだ。
一方、OSSを使用することによるデメリットについては、「緊急時のサポートが迅速に受けられない」が34.0%で最も多い。また、「ベンダーのサポートが継続して受けられるかどうか不安」が25.6%。IDC Japanは、OSSのサポートに関する懸念が最も大きいデメリットになっていると捉えている。なお、2番目に多い回答として「OSSを管理できる社内のエンジニアが少ない」が27.6%を占めた。
こうしてみると、ユーザー企業がOSSのデメリットと捉えているサポートを強化することや、OSSを管理する人員体制の整備を行うことが、ITベンダーがさらにビジネスを拡大するうえでの欠かせない要素になりそうだ。
【団体の動き】
OSS活用推進の業界団体を設立
SIerなど約30社が参加を表明
 |
吉政忠志 発起人代表 |
OSS関連市場はさらに拡大すると見込んで、ITベンダーはさまざまな角度からビジネスの進展に結びつける策を講じている。その一つが業界団体への参加だ。参加メンバー同士でOSSに関する情報を共有するだけでなく、案件を獲得するためにアライアンスを組むこともあり得る。
国内には多くのOSSに関する業界団体が立ち上がっているが、そのなかでもOSSの事業推進基盤をつくることを目的とした業界団体が出てきた。「BOSS-CON JAPAN」がそれだ。現在は参加メンバーを集めている段階で、7月2日に発起人会を開催する予定だ。
「BOSS-CON JAPAN」は、販売促進や事業推進の基盤をもたないOSSの開発ベンダーが単独で事業を行わなければならないという非効率性を解消するという目的をもって設立された。テーマごとにコミュニティを設け、各コミュニティで独自のプログラムや認定基準の策定、業界の発展を手助けするビジネス基盤をつくるという。初年度は「Ruby on Rails」「PHP」「Alinous-CORE」のコミュニティを設ける予定だ。
コミュニティに参加するメリットは、「BOSS-CON JAPAN」のマーケティング力が活用できるほか、加盟ベンダーとして技術力などがユーザー企業に認知されることなどが挙げられる。
今年5月22日に参加メンバーの募集を開始し、半月ほどの短い期間に30社弱が参加を表明している。メンバーは、技術力は高いものの販売力に弱いベンチャー企業に加え、SIerも参加している。吉政忠志・発起人代表(吉政創成代表取締役)は、「1年後、会員の数を100~200社に増やしたい」との考えを示している。日本市場で新しいOSS関連ビジネスが効果的に立ち上がるためには、参加企業数がカギを握ることになりそうだ。
[次のページ]