【ソフトバンクBBの場合】
「モバイル」を前面に 今年度は2ケタ成長へ

友秀貴部長 ソフトバンクBBは、「モバイル」をキーワードにVDI関連ビジネスの拡大を図っている。他社との相違点は、グループ会社が通信回線の提供、スマートデバイスのiPhoneとiPadの販売を手がけていることにある。ディストリビュータの立場から、SIerやリセラーがモバイル端末を前面に押し出したVDIシステムを提供できるように、ハンズオントレーニングやセミナーなど教育支援にも取り組んでいる。
今年度(12年3月期)は、新たにコマース&サービス本部の販売推進統括部内に「仮想化ビジネス推進部」を設置した。部署名の通り、仮想化関連ビジネスを手がけるが、「サーバーの仮想化は、ごく一般的になりつつあるので、新しい分野の仮想化を手がけることが差異化の要素になる」と同部の友秀貴部長はみている。そこで、今年度はクライアント仮想化関連のビジネスを拡大することを目標に据え、VDI関連の案件獲得に力を注いでいる。ヴイエムウェアの「VMware View」、シトリックスの「Citrix XenDesktop」、マイクロソフトの「Microsoft VDI」など、大手主要ソフトメーカーのVDI製品を取り扱っているほか、「強みを発揮する」ために、他社には真似のできない「iPhone」「iPad」をVDI拡大の中核製品に据えている。
昨年度は、金融や公共、文教、生命保険などの業界で大規模な案件を獲得した。今年度は、「地銀や地方自治体など、ユーザー層のすそ野を広げていく」としており、VDI関連ビジネスで2ケタ成長を狙う。
【日商エレクトロニクスの場合】
「仮想化」を全社の戦略商材に VDIで220%の成長率を目指す

榎本瑞樹部長 日商エレクトロニクスは、今年度(12年3月期)を初年度とする中期経営計画で、「仮想化」を全社の戦略商材に据えてビジネスを拡大することを掲げ、そのなかで今年度に力を注ぐ分野としてVDIに焦点をあてている。
これまで同社は、仮想化関連の製品を一つの部門だけで扱っていた。しかし、仮想化関連市場は今後ますます拡大すると判断し、マーケティング本部がさまざまなメーカーの製品を組み合わせた仮想化関連の製品・サービスを創造して各営業本部が販売するという体制に変更した。これは、VDI関連ビジネスが昨年度に前年度比207%の売上成長率を果たしたからだ。金融や情報通信などの業界で、数千規模のライセンスを提供する案件を獲得した。榎本瑞樹・マーケティング本部第二プロダクトマーケティング部部長は、「今後は、ほかの業界でも大手企業を中心にVDIの案件が確実に獲得できる。全社を横断的にみて、各業界に適したソリューションをつくっていく」との考えを示す。
今年度は、私用で使っているスマートデバイスを業務でも使う「BYOD」の導入を模索するユーザー企業が増えつつあることから、「BYODで実現できることを提案しながら、VDIを構築するという手法でアプローチしている」という。引き続き、大企業から案件を獲得し、「今年度は220%の成長を狙う」としている。
また、「今年度中にはVDIの大規模案件が一段落する可能性があるので、ユーザー層のすそ野を広げることが重要となる」と判断しており、今年度末から来年度にかけて中堅・中小企業(SMB)を対象に案件の獲得に踏み切る。シトリックスのSMB向けVDI製品「Citrix VDI-in-a-box」の拡販を図る。
【ネットマークスの場合】
「コミュニケーション」がカギ UCとVDIの統合製品をパッケージ化

阿野弘喜部長
藍隆幸室長
高木経夫
プロダクトマネージャ ネットマークスは、「コミュニケーション」がVDIの導入に結びつくカギと捉えている。IP電話やスマートデバイス、ビデオ会議、ウェブ会議などの機能をVDI環境に統合し、ネットワーク系インテグレータとして強みとしているUC(ユニファイドコミュニケーション)をアピールしながらユーザー企業を開拓している。今年4月、用途別に3種類のパッケージの提供を開始した。
パッケージは、スマートデバイスを活用した社内業務とBYOD対策ができる「Smart Mobile Package」(100人規模)、VDIのアプライアンス製品「Virtual Package」(50人規模)、UCを組み合わせた大企業向けスタートアップモデル「Collaboration Package」(1000人規模)を用意した。シスコシステムズの製品と、シトリックスやヴイエムウェアのVDIをユーザー企業の要望に応じて組み合わせている。藍隆幸・マーケティング本部マーケティング部第一マーケティング室長は、「コミュニケーションの要素を取り入れることが、VDIを生かすことになる」と説明。高木経夫・第二マーケティング室プロダクトマネージャは、「スマートデバイスの有効活用という流れを踏まえれば、企業のコミュニケーションを活発にすることを追求して、なおかつシステム管理者の負担軽減につながるVDIの提案がポイントとなる」としている。この3パッケージで2014年度(15年3月期)に50億円の売り上げを目指している。
同社は、今年度から技術第一本部の東日本技術統括部に、「VDI/VXIプロモーション部」を設置。UCとVDIを組み合わせることでワークスタイルの変革を図る「仮想ワークスペース」などシスコ提唱の「Cisco VXI(Virtual eXperience Infrastructure)」をベースに技術開発を進めている。阿野弘喜部長は、「文教やアパレルなどの業界で実績が出ているほか、地域医療の観点から、大規模な病院と診療所をつなぐためにVDIを採用するニーズに対応する」という方針を示す。
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