【エス・アンド・アイ】の場合
高コストがVDI導入の「壁」
低価格のシンクライアントを提供

伊藤英啓部長 ユーザー企業がVDIを導入する際に最も高い「壁」となるのが、コストが高いこと。仮想化環境を構築するためのサーバーやストレージなどハード機器が高額なだけでなく、ライセンス料が高いために断念するSMBが多いという。そこでエス・アンド・アイでは、クライアント仮想環境の構築を希望するSMBを対象に、ライセンス料を低価格に抑えたシンクライアントシステム「SDC Hybrid Connector」の提供を7月5日に開始した。
このシステムのライセンス料は、1ユーザーあたり2万円。他社のライセンス料と比べて50%程度安く設定している。ターミナルサーバー方式(RDP)のシンクライアントシステムではあるものの、ユーザーのデスクトップ要件に応じて「ICA」を用いたシトリックスのシンクライアント環境との共存など複数の仮想環境を一元管理することができる。また、各サーバーの管理ツールで設定した基準値を超えるプロセスの優先度を下げて、特定ユーザーによるCPUの占有を防止する。さらに、サーバー負荷のロードバランスを適正な状態に保ち、クライアント端末の接続環境や利用するアプリケーションに応じて、ユーザーが意識することなく適切な接続先に誘導する仕組みを備えている。
SMB向けシンクライアントシステムを提供することになった理由を、伊藤英啓・先進技術推進部長は、「大企業を対象にVDIを提供するビジネスも手がけていくが、クライアント仮想化という領域は、SMBのほうがパイが大きい」としている。そして、「できるだけコストを抑えることで、シンクライアント自体を導入したことがない企業に対して販売のアプローチをかけていく」という方針を示す。同社では、「SDC Hybrid Connector」に関連したビジネスで、初年度に10億円の売り上げを見込んでいる。
【ネットワールド】の場合
VDIアセスメントを提案 構築は物理と仮想の混在
ネットワールドでは、ヴイエムウェアやシトリックス、マイクロソフトのVDI関連製品を販売しているが、SMBのなかには仮想環境を導入した経験がない企業も多いので、VDIのライフサイクルを網羅した米Liquidware Labsの製品でVDIアセスメントサービスを提供している。この製品は、手離れがいいと販社に好評を博しており、VDIの普及につながる製品として期待がかかっている。
とくにSMBの場合、複雑化したデスクトップ環境をVDI化するにあたって「どこから始めればいいのか」「どのような手順で移行すればいいのか」などの問題を抱えている。しかも「ユーザー企業の多くから『既存OSを残したい』との要望を聞く。そういったことを勘案すれば、物理環境とVDI環境を混在させることがポイントになってくる」(藤森譲・マーケティング部ビジネス開発グループ係長)という。加えて、米国のようにオフィス以外で業務を行うケースが多ければ、VDI化は進むものの、BYODを含めてスマートデバイスを社内システムと連係させながらの業務はまだ先の話になる。
そういった点を踏まえ、「VDI化への手順をしっかりとアドバイスしながら、VDI化へと促すことがユーザー企業からの信頼を得るうえで重要」と判断している。SMBがVDIのメリットを意識した段階で次のステップへとビジネスを進める。
記者の眼 VDIをはじめとするクライアント仮想化は、市場に登場した当初は、セキュリティやシステム管理者の負担軽減など、どちらかといえば間接部門の業務効率化を目的としたものだった。しかし、スマートデバイスの登場で、ユーザー企業の業務スタイルが変わるとの見方が強く、そのスタイルを実現する結果、管理の課題を解消する目的でVDIを導入するという流れになっている。ユーザー企業がVDIを導入するのは、管理者側ではなく、クライアントを使う側の業務効率化や生産性の向上を考慮していることが要因だ。
今回の特集の取材を通じて、ITベンダーがVDIを提案する際、自社の強みを生かしたキーワードやコンセプトを強く意識しながらビジネスを手がけることが重要だということが伝わってきた。ユーザー企業の成長を念頭に置くことが、VDI関連ビジネスの拡大につながるということだ。