【情報サービス編】
アジア広域サポートで海外事業が伸びる
クラウドやスマートデバイスに根強い需要
<売れるキーワード>
・ユーザーの海外進出に伴うグローバルITサポート
・C/S環境からスマートデバイス活用へ
・グローバル展開で活気づくクラウドサービス
情報サービス業の2013年は、ユーザー企業のアジア成長市場への進出拡大で、グローバルITサポートビジネスが一段と伸びる見通しだ。SIerは、ユーザー企業のアジアへの進出先が中国中心からASEANやインドなど広範囲に広がりつつある動きに呼応するかたちで、アジアでの広域サポートビジネスを展開しようとしている。スマートデバイスやクラウドサービスも根強く伸びていく見込みで、これらの領域は2013年も成長が続くとみられ、期待が高まっている。
●グローバル対応が進む
ASEANやインドに変化 ユーザー企業がアジアへとビジネス基盤を広げていく動きは、2013年も引き続き活発化していくものとみられている。産業分野のユーザー企業の海外進出に伴って、邦銀も海外拠点の拡充を推進。産業と金融の両分野の海外でのIT投資が増える見通しだ。中国やシンガポールなどに拠点を展開する新日鉄住金ソリューションズの謝敷宗敬社長は、「新規の案件で純粋に国内だけで使うという情報システムのほうが珍しい」と言い切る。グローバルビジネスを見越したSI案件が恒常化しているといい、全体でみてもグローバル絡みの案件割合が2~3割を占めるまで拡大していると実状を語る。
しかし一方で、懸念材料もある。アジア最大の市場である中国との政治摩擦が再発する恐れは依然として残っており、少なくとも13年前半はユーザー企業、SIerともに新しいビジネスの動きは慎重にならざるを得ない状況にある。NTTデータの岩本敏男社長は、「日中双方で政治リーダーが変わり、関係修復への動きが期待されるものの、12年9月の政治摩擦が起きて以降の半年の間は、動向を注意深く観察していくことが必要だろう」と、見極める時間を確保する構えだ。
日本貿易振興機構(JETRO)が12年10~11月、アジア市場に進出する日系企業を調査したところ、今後1~2年の中国での事業展開の方向性を「拡大する」と回答した企業の割合は、前年比14.5ポイント減の52.3%と、国・地域別で最大の減少幅となった(有効回答3819社=図3参照)。逆に「事業を拡大する」との回答が多かったのは、ASEAN最大の人口を抱えるインドネシア、民主化の進展が著しいミャンマー、インドなど南アジア地域への拡大意欲が目立つ。情報サービス業は、ユーザーとともに進出していく傾向があることから、13年はASEAN地域やインドへの進出が加速するとみていいだろう。
●生産性向上に期待
端末環境が大幅刷新 NTTデータはオープンソースソフト(OSS)やアジャイルソフト開発の拠点をインドに相次いで設置するとともに、12年11月にはミャンマー法人を開設。5年後に500人体制に拡大していく方針を示す。また、12月にはベトナムの中堅SIerをグループ迎えると発表するなど、ASEAN/インドでの事業拡大を着々と進める。目まぐるしく変わるアジア成長市場に適応しようと、ユーザー企業は引き続きさまざまな手を打つことは間違いない。
また、13年、引き続き伸びる領域と期待されているのが「スマートデバイス」と「クラウドサービス」だ。客先設置型のサーバーとパソコンを組み合わせた従来型クライアント/サーバー(C/S)環境から、クラウドとスマートデバイスを組み合わせたかたちへと、ユーザーのIT環境が大きく変わろうとしており、外勤者や倉庫などの現場で働く人の生産性を高めるには、携帯性にすぐれたスマートデバイスが大いに役立つ。
日立システムズは、全国約300か所のサポート拠点をフル稼働してユーザー企業のスマートデバイス導入を支援するとともに、「落として壊れたり、紛失するなどモバイル特有の障害にも迅速に対応していく」(高橋直也社長)ことで、スマートデバイス関連ビジネスの拡大に努める。NECシステムテクノロジーの富山卓二社長もAndroidタブレット端末「LifeTouch」を中心とする「スマートデバイス関連のSIが、来年度(14年3月期)は今年度比1.5倍に伸びそうだ」とビジネス拡大に手応えを感じている。
クラウドやスマートデバイスは、グローバル対応も容易なことから、国内外への展開をしやすい。こうした変化の要素を組み合わせていくことが情報サービスビジネスの活性化につながる。
【ネットワーク編】
DC関連の製品・サービスが伸びる
仮想化の普及を刺激剤として
<売れるキーワード>
・建設ラッシュで沸くデータセンター向け機器
・ネットワーク拡充にけん引されるM2Mプラットフォーム
・差異化につながる「Cisco UCS」製品群
ネットワークの構築を得意として、サーバーの構築も手がけるようになったインテグレータは、価格が下がっているハードウェア中心のビジネスモデルから、収益率の高いソフトウェアやサービスのビジネスに舵を切ろうとしている。2013年は、データセンター(DC)を対象にネットワーク機器の販売や構築に取り組むとともに、M2Mプラットフォームなどの独自商材を開発し、新規事業を本格的に立ち上げる。これによって、売り上げが減っている既存ビジネスを補い、事業を拡大しようとしている。
●DC向け製品が有望株
M2Mの需要が旺盛 2013年、インテグレータにとっての有望株はDC向け製品の提供だ。DCは、パブリッククラウド型のサービス提供やサーバーの仮想化が進んでいる状況で、センター内のネットワークインフラ強化が喫緊の課題となっている。
F5ネットワークスジャパン(F5)のロードバランサ(負荷分散装置)などを主力商材とする東京エレクトロン デバイスは、「12年、DC向けビジネスが活況をみせた。13年も引き続き需要が高い」(栗木康幸社長)とみて、DC向け製品のラインアップの拡充を方針に掲げている。
調査会社のIDC Japanのデータは、栗木社長の見解を裏づけている。IDC Japanによると、イーサネットスイッチやロードバランサを中心とする国内DC向けネットワーク機器市場は、DC運営者が積極的に設備を拡張するのに呼応して、16年まで年平均6.8%の割合で伸びると予測している。
また、DC事業者を取引先とするだけでなく自社でDCを運営してクラウドサービスを提供するインテグレータも増えている。DCを基盤として、機器同士がIPネットワークを通じて情報を交換し合うM2M(Machine to Machine)プラットフォームの開発に着手し、13年中に提供を開始する予定のプレーヤーが現れている。
日商エレクトロニクスは、現在、M2Mプラットフォームを開発中。三井情報も、特設チームを立ち上げて、M2M事業の実現に取り組んでいる。
三井情報の齋藤正記社長は、「とくに、エネルギーやリテールといった業界で、情報をリアルタイムで収集・分析するM2Mプラットフォーム/サービスの需要が確実にあるとみている」と語る。
●協業モデルの確立へ
UCS案件の獲得を増やす もう一つ、ネットワーク業界で13年の有望商材になりそうなものがある。大規模な仮想環境の構築に適したシスコシステムズが発売している「UCS」製品群だ。
シスコ製品に強いディストリビュータのネットワンパートナーズは、12年10月に国内初となるUCSの注文仕様生産を開始した。UCSを短時間でビジネスパートナーの大手SIerに提供する仕組みを構築したのだ。齋藤普吾社長は、「当社は、シスコと販売契約を結んでいないSIerにも、UCS製品を提供することができる。その強みを生かして、13年、『シスコ×ネットワンパートナーズ×大手SIer』の協業モデルを確立し、UCSの大型構築案件を獲得していきたい」と意気込みを語る。UCSはネットワーク構築のノウハウを要求されるので、それを差異化につなげていく。