【ユニアデックス】
ディストリビュータとの協業を強化
運用保守で拡販を支援

小川康博執行役員 ユニシスグループで運用保守会社というポジションのユニアデックス(入部泰社長)は、運用保守以外にインテグレーションビジネスも手がけており、業界で「運用保守に強いインテグレータ」に位置づけられている。しかも、メーカー色がないことから、メーカー系の運用保守会社と比べてマルチベンダー化を本格的に手がけることができ、さまざまなベンダーと柔軟にアライアンスが組めるという強みをもっている。
最近では、ディストリビュータとのアライアンス強化を進めている。例えば、仮想化ストレージ機器メーカーであるティントリジャパンのサポートパートナーとして提携した。販売パートナーであるディストリビュータの丸紅情報システムズとのパートナーシップを深めようとしている。小川康博執行役員マーケティング本部長は、「地方で製品を販売するベンダーとアライアンスを組むなど、当社が保守を手がけるケースが多くなっている」という。ティントリジャパンのケースでも、丸紅情報システムズの販社をサポートする可能性は十分にある。
また、日本IBMの販社として「PureSystems」を取り扱っており、現時点ではまだ売れていない状況だが、今後、自社で拡販するほか、アプリケーションに強いSIerがPureSystemsを販売した際にパートナーシップを結ぶことも模索している。保守が必要となる垂直統合型製品がIBM以外のメーカー各社からも発売されている状況で、さまざまなシステムの保守を手がける同社にとって商機につながることを期待している。他社が販売したシステムの保守案件を獲得することによって、売上高を現状の900億円規模から1000億円規模にまで引き上げたいともくろんでいる。
【NECフィールディング】
垂直型サービスを拡大
業種別に大型案件を狙う
NECフィールディング(伊藤行雄社長)は、運用保守事業を軸に新しいITサービスのあり方を追求した結果、企画から設計、導入、運用、保守までをワンストップで提供する「垂直型サービスモデル」の創造にたどりついた。このサービスによって、大型案件の獲得が相次いでいるという。
例を挙げれば、2012年上期に自治体の税務システム運用や、医療分野で電子カルテシステムなどの病院内ネットワークのシステム構築サービスを受託した案件がある。藤田晃・事業企画本部事業戦略部長は、「運用保守だけでなく、上流工程にまで領域を広げたことで、大型案件の獲得につながっている」と満足げだ。
垂直型サービスモデルの構築は、3年ほど前から着手し、サービスのメニュー化や技術者の育成などを進めてきた。ある流通大手が欧州に出店するにあたって、運用保守で日本同様のサービス品質を求めたことがきっかけだ。ハードウェアやソフトウェアの運用保守の枠を越えて、サービスの提供範囲としてシステム全体の運用代行や業務まで含めた統合運用に領域を広げた。また、LCM(ライフサイクルマネジメント)の観点で導入や運用保守にとどまらずに企画や設計まで範囲を拡大した。これによって、サービス提供範囲を上流領域まで拡大したのだ。
現在では、同社の技術者のうち550人が垂直型サービスモデルを提供するスキルを身につけているという。これによって、「基盤が固まった」(藤田部長)としており、実際に案件獲得につなげた。大型案件の獲得は、NECとの共同でサービスを提供することがメインだが、「案件によっては、アプリケーションベンダーとアライアンスを組むケースも出ている」(小林英司・LCM事業推進本部長代理兼計画部長)としている。
体制が固まったということで、「今後は、自治体や医療だけでなく、公共、金融、製造、流通、交通など業種を広げていく」(山口隆志・事業企画本部事業戦略部マネージャー)との方針を示す。とくに、拠点の多い製造や流通でユーザー企業を獲得するために、「海外に支社や支店をもっている企業が多いことから、地域の文化を踏まえたシステムの導入を企画段階から提案していきたい」(藤田部長)との考えだ。保守サービスだけの売上高は減少傾向にあり、今後も厳しい状況が待ち受ける可能性が高いが、垂直型サービスモデルの売上高については、2ケタ成長の維持を目指している。

(右から)藤田晃事業戦略部長、小林英司計画部長、山口隆志マネージャー
記者の眼
ハードウェアの価格下落やクラウドサービスの台頭によって主力ビジネスの保守サービスが縮小し、今後も伸びが期待できないという窮地に立たされたITサービス会社。彼らの多くは、旧来の主力ビジネスに固執せずに、新しい領域に踏み込もうとしている。運用保守をベースにしてシステムの設計段階にまで入り込んでいる例がみられるし、リモートと現場力を生かした新しいサービスを提供するなど、各社によって生き残り策はさまざまだ。総じていえるのは、各社とも技術者や保守要員のスキルを高めてビジネス領域を広げようとしているということだ。保守サービスが減少しているからといって、人員を削減することで利益を確保するわけではなく、あくまでも人材を最大限に活用しようとしている。ビジネス拡大につながるかどうかは、人材育成の成否がカギを握る。
また、領域を広げることによって各社が重きを置いているのが他社とのアライアンスだ。アプリケーションベンダーやディストリビュータなど、各社によって異なるが、運用保守という強みを生かして、自社にないものをアライアンスによって積極的に取り入れて、案件を獲得しようとする姿が垣間見える。
ITサービス会社が運用保守という下流工程から、システムの設計や業務まで含めた統合運用など上流工程へと領域を広げることによって、システム構築を主力ビジネスに据えるSIerとの競争が激しくなることが予想される。ITサービス会社が、業界で今後どのようなポジションを確立するのか注視したい。