NECフィールディング
保守サービスの強みを発揮
●3Dプリンタと相性がいい保守 
川井和博
執行役員 NECフィールディングでは、昨年9月24日に3Dプリンタの販売・保守を開始した。高級機から安価なモデルまで取り揃えて、ユーザーのニーズに対応できるようにしている。
装置の種類の豊富さに加えて、NECフィールディングが他社との差異化要因としているのが保守サポートだ。全国約400拠点、約4000人のエンジニアを抱えており、従来から同社のサーバーなどの保守サポートには定評がある。今回の3Dプリンタでも、「3D PrinterSupportPack」として3~5年間の保守パックメニューを用意し、ユーザーの利便性向上を図った。3Dプリンタは保守サポートと相性がいい。樹脂が詰まるなど、メンテナンスの必要度が高い。さらに、サーバーやパソコンと比べて高価なので、保守サポート費用も高額に設定できる。
とはいえ、メンテナンスの必要性が高いので、サポート員の出動回数は多くなる。また、3Dプリンタの種類に応じてサポート員は専門知識を習得する必要があるので、種類が豊富になるほど、サポート員に負担がかかるし、販売台数が多くなければ保守サポートでの収益も見込めない。豊富な人員を抱えるなど、保守サポートを手がけるためにはそれなりの企業体力が求められるので、現時点では大塚商会でも保守をメーカーに依存している状況だ。これに対して、NECフィールディングでは、もともと豊富な保守サポート員を抱えていることが有利に働いている。川井和博執行役員は、「現時点では、立ち上げ時期ということもあって、3Dプリンタの専門知識をもつ保守人員は20人程度。今後は、事業拡大に合わせて増員を図る」という。
NECフィールディングでは、販売開始から3年間で20億円の売り上げを目指している。
●グループ企業連携でノウハウ蓄積 NECフィールディングでは、3Dプリンタの販売にあたってNECグループとの連携を重視している。3Dデータを活用するノウハウが求められるとあって、「3次元設計トータルソリューションを提供しているNECの関連部門と連携を深めながら、ノウハウを共有して、蓄積度を高めている」(川井執行役員)という格好だ。
また、今後は販売・保守だけでなく、3Dプリンタビジネスの規模を拡大していく予定だ。自社で培った3Dプリンタ活用ノウハウを生かして、製造受託サービスを提供しているNEC埼玉とは、「すでに連携を進めている。また、当社独自のビジネスとして、造形サービスを提供している企業との協業も進めている」(川井執行役員)。
精力的に事業を拡大しようとしているのは、3Dプリンタが、将来、有望商材となるとみているからにほかならない。川井執行役員は、「今後、3Dプリンタの技術は急速に進化し、その活用方法も拡大・多角化する。その過程で、ITシステムは3D対応を余儀なくされ、IT企業は3Dプリンタを重要なファクターとして取り込んでいく必要がある」と自説を述べた。
記者の眼
IT企業が3Dプリンタを商材として扱おうとした場合、ハードルは決して低くない。3Dプリンタは、物販をするだけでは不十分で、3DCADなど、3Dデータを作成するためのソリューションを組み合わせて提供することが不可欠だからだ。その過程で、ユーザーに対しては、3Dプリンタの導入支援コンサルティングなどを行い、理解の促進と活用スキル・ノウハウを伝授していく必要がある。そのためには、IT企業自身も専門性を高めておかなければならない。造形受託サービスも同様で、装置への投資やノウハウの蓄積が求められることから、簡単に参入できるサービスではない。
とはいえ、3Dプリンタのビジネスチャンスは大きい。従来の製造業や研究機関などの領域にとどまらず、IT企業にとっての営業先は、医療や教育、エンタテインメントなどの分野に広がっている。政府も、ものづくり支援策の一環として、3Dプリンタの活用を推進する姿勢をみせており、経済産業省では、3Dプリンタを導入する教育機関に対して、費用の3分の2を補助する施策を実施する予定だ。しかも、こうした新しい提案先では、まだ3Dデータの活用ノウハウがないところが多いはず。IT企業にとっては、高単価の案件を獲得できるチャンスが広がっている。
決して簡単に始めることができるビジネスでないが、3Dデータ活用に関するスキル・ノウハウさえ修得すれば、3DプリンタがIT企業にとって有力な商材になることは間違いない。