変わるネットワーク提案
SDNのメリットを明確に
SDN市場のプレーヤーは、どんな手を打って案件を獲得し、収益の向上に取り組んでいるのか。IIJ/ストラトスフィア、兼松エレクトロニクス、NTTデータの事例を紹介する。
事例_1 IIJ/ストラトスフィア
総合ソリューションで収益を上げる
IIJは、ストラトスフィアと連携してSDNの展開に取り組んでいる。ストラトスフィアは、IIJとクラウド事業のACCESSが2012年に立ち上げた合弁会社で、SDN用のソフトウェア開発を手がけている。提案活動と販売は、IIJが企業向けに、またACCESSがDC運営会社向けに行う。
ストラトスフィアが力を注いでいるのは、IIJの営業部隊を活用する企業向け展開だ。現段階でDCや通信キャリアをSDNの主なターゲットに据える企業が多いなかにあって、IIJ/ストラトスフィアの取り組みは目を引く。ストラトスフィアの浅羽登志也社長は「プレーヤーの数を考えて、最初から企業を攻めたい」と方針を説明する。SDNの企業向け展開でカギを握るのは、利用側にSDNの明確な活用方法を示すこと。SDNが「技術」から「ビジネス」につながろうとしている現段階では、SDNを検討している企業に対し、発注の決断を促す判断材料を用意することが大切だ。
IIJ/ストラトスフィアが進めているのは、企業の統合に伴うITインフラ刷新をきっかけとするSDNの採用の提案だ。「SDNをネットワーク単独では提案しない」(浅羽社長)ことがポイントという。両社は、システムの統合を望む企業にIIJなどがもつクラウド商材を訴えて、ITシステムをクラウド上に移すのに合わせて「自社ネットワークは、柔軟に拡張できるSDNでいかが?」と提案する。SDNだけではなく、クラウドサービスなども提案に取り入れて、総合的なソリューションを届けることで収益の向上に結びつけるという戦略だ。
さらに、IIJは自社DCへのSDN導入を検討している。自社導入によって、DCの運用コストを低減するとともに、提案のネックとなる「実績がない」という問題をクリアし、SDN事業を刺激する。
このアイデアに注目
ネットワーク付きのビルが有望株

ストラトスフィア
浅羽登志也 社長 現状は、企業が(SIerに発注して)インフラを構築して、ネットワークを使うやり方が一般的だ。しかし今後は、ユーザー企業ではなく、その企業がオフィスを構えるビルの運営会社がネットワークのインフラを用意するというシナリオも考えられる。
このところ、事業拡大に備えてオフィスを拡張して、本社を移転する企業が多くなっている。そんななかで、ビル運営会社はさまざまなサービスを提供することで、競争に打ち勝とうとしている。「当ビルはネットワーク込み」という売り文句がそう遠くない将来に、都心のビルの窓を飾るかもしれない。
となると、ビル運営会社はSDN構築を手がける企業の有望なターゲットになってくる。ストラトスフィアの浅羽社長は、「現在はまだ具体的な案件は動いていないが、今後、ビル運営会社向けの提案にも取り組む」としており、新たな市場で商機を見出そうとしている。
事例_2 兼松エレクトロニクス
「ばらまく」仕組みをつくる
兼松エレクトロニクスは、SDNを「ばらまく」仕組みをつくることによって、導入のハードルが高いとみられる中堅企業にSDNの採用を促す。SDNのコア技術であるOpenFlowに対応したNECのコントローラとデルのスイッチを活用し、ネットワークを仮想化する(図3参照)。マルチベンダー環境で相互接続性が高まることを訴求し、今年度(2015年3月期)中に、10社への納入を目指す。

兼松エレクトロニクス
吉池雅宣
本部長 兼松エレクトロニクスは、NECのコントローラ「UNIVERGE PF」は「ユーザーインターフェース(UI)がやさしい」(ネットワークシステム営業本部吉池雅宣本部長)とみて、中堅企業でも運用・管理しやすいと判断している。現時点でのソリューション構成では、デルのスイッチ「Force10シリーズ」のハイエンドモデルしかサポートしていないのが価格設定上のネックになるが、現在、急ピッチで同シリーズのミッドレンジモデルへの対応を進めている。これによって、「値頃感を出して、中堅企業にばらまきたい」(吉池本部長)と意気込む。
直近の課題は、SDN構築に必要なスキルをもつエンジニアが少ないということ。自社リソースだけでは、SDNソリューションを広く普及させて、本格的な事業拡大につなげるのは難しい。そこで、兼松エレクトロニクスはパートナーを活用する販売に期待を寄せている。「システム会社2~3社に絞って、SDNソリューションのモデルユーザーをつくりたい。そして、彼らに、自社導入の経験を踏まえて販売を手がけてもらいたい」(吉池本部長)というスキームを構想している。
兼松エレクトロニクスはこれまで、ハードウェアの構築で利益を上げてきた。SDN案件の収益性をいかに確保するか──。現在、力を入れているのは、ソフトウェア周辺のコンサルティングを提供するためのスキル取得だ。「お客様の課題をていねいに解決することによって、SDN案件の利益率を高めていきたい」(吉池本部長)と述べる。
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