新市場に切り込む侍ベンダー
日本ノーベル
マーケットインの発想で細かなニーズに対応

木村建雄
セールス・マネージャー ISV(独立系ソフトウェアベンダー)の日本ノーベルは、DCIMという概念が注目される前から、DCのファシリティ環境の監視を中心に、ソフトウェアの開発を進めてきた。市場の盛り上がりの兆しを捉えて、現在は、サーバールームの全体の環境監視システム「iDCNavi」、さらに細かくラックの中も効率化したいというニーズに応えたサーバーラック管理システム「UnitPORTER.Navi」の2製品を武器に、DCIM市場を開拓している。「UnitPORTER.Navi」には、インテルのSDKを採用している(下の囲み記事参照)。
自社の強みについて、木村建雄・技術統括本部営業部セールス・マネージャーは、「ソフトベンダーとしての技術力を生かした柔軟なカスタマイズ対応と、IT、ファシリティの両方で、ハードのメーカー色がついていないこと」だと説明する。数千ラックから100ラック程度まで、さまざまな規模のDC事業者を顧客にもち、「マーケットインの発想で日本のユーザーの細かなニーズに適宜対応してきた」(木村セールス・マネージャー)という。そこで得た成果は、将来は海外展開も可能だと考えている。
国内での普及の課題は、ユーザーの経営層の意識。木村セールス・マネージャーは、「ラック管理などはExcelでやっているDCも多く、経営層はそれで問題ないと思っている場合が多い。しかし、それではDCを利用するサービス事業者のニーズの変化についていけず、DC事業者にとってはビジネスリスクになる」と話す。販売パートナーのSIerなどと連携し、そうしたリスクに対する啓発も行いながら、拡販に挑む。
<KeyTechnology>
●インテル
「Data Center Manager」日本ノーベル、ニスコムが採用 
高木正貴
マネージャー DCの電力消費の大半は、サーバーが占める。インテルは、サーバーに搭載された自社チップを活用して、消費電力や温度をリアルタイムに管理・制御する技術を提供することで、DCIM市場に確固たるポジションを築こうとしている。高木正貴・ソフトウェア&サービス・グループ データセンター・ソリューションズ ビジネス・デベロップメント・マネージャーは、「クラウドサービスの普及は、DCとデバイスの需要増という上向きのスパイラルを生んでいる。インテル自身も社内システムとして約10万台のサーバーを抱えており、効率的な運用ノウハウを蓄積してきた。それを新しいビジネスにつなげようとしている」という。その成果が、「Data Center Manager(DCM)」だ。主にSDKとしてDCIMベンダーに提供されており、マルチベンダー対応が可能となっている。
グローバルでは、すでに40社前後のDCIMベンダーが採用していて、日本では、シュナイダーエレクトリック、日本ノーベル、ニスコムなどが「DCM」をベースにしたDCIMソリューションを開発・提供している。ITインフラの運用自動化、効率の最大化をスピーディに実現する技術として、SIerなどITベンダーにも広く訴求していく考えだ。
ニスコム
DCのインフラとクラウド基盤の統合管理を意識

三石剛史
執行役員 DCの運用管理サービスを手がけ、受託システム開発を行う独立系の中堅SIerでもあるニスコムは、日本ノーベルと同じくインテルの「DCM」をベースに独自のDCIMソフトウェア「DC Smart Assist」を開発し、昨年12月から提供を開始している。一方で、シュナイダーのライバルであるラリタンの日本法人、ラリタン・ジャパンともパートナー契約を結んでいて、コンセント単位やユニット単位で電源コントロールや高精度なモニタリングができるインテリジェントPDUのほか、ラリタン製DCIMソフト「Power IQ」や「dcTrack」(日本未発売だが独自に展開)の販売も手がける。三石剛史執行役員は、「当社はメーカーの色がついていないことと、運用のノウハウがあることが強み。事実、さまざまなユーザーやITベンダー、ファシリティ管理の企業などから、相談を受けるようになった。製品としても、顧客の要望に柔軟に応えるラインアップを整えた」と、現時点での手応えを語る。
ただし、ニスコムの戦略は単なるDCの運用効率化を超えたところにあり、その点で他のベンダーとは一線を画している。三石執行役員は「DCのファシリティとIT機器だけでなく、システムの運用管理ツール、さらにはクラウド基盤まで含めて連携した一括管理ソリューションを目指したい」としている。同社は、地方に乱立している中小のDCが、今後、仮想的にひとまとまりのITリソースとして統合的に運用され、その上にクラウド基盤が乗る時代がくるとみている。「DCIMだけで完結した提案では、顧客に投資の価値を感じてもらうのは難しい。それがDCIM市場が大きく伸びていない要因ではないか。クラウドサービスとDCのインフラの一括管理ができるという提案には可能性を感じている」(三石氏)という。
●ラリタン・ジャパン
導入・運用を支援するパートナーが必須 インテルDCM系とは補完関係 
竹永光宏
カントリーマネージャー ニスコムが担ぐラリタンの「Power IQ」と「dcTrack」は、ニスコムの独自ソリューションである「DC Smart Assist」と競合しないのだろうか。ラリタン・ジャパンの竹永光宏カントリーマネージャーはその問いに、「一部競合するケースもあるかもしれないが、基本的には補完関係にあると考えている」と答えた。
おおまかにいって、「Power IQ」はモニタリング、「dcTrack」はオペレーションのためのツールだが、現状、ラリタン・ジャパンとして提供しているのは「Power IQ」だけ。竹永カントリーマネージャーは、「『dcTrack』については国内の需要を見極めているところ。ただ、サーバーのチップベースのエネルギー管理では部分最適にしかならないケースもある。コンセントレベルの計測をベースにIT機器、ファシリティの最適化と資産管理までできる当社ソリューションは、DC全体のコネクティビティを正しくトラッキングでき、今まで使いきれていなかったリソースを有効活用するための基盤となるし、スケーラビリティにもすぐれている」と、メリットを強調する。
いずれにしても、DCIMは導入支援やオペレーションのサポートが必要で、そうした能力をもつパートナーの存在が拡販には欠かせないというのが同社の見解。DCIM市場を開拓するパートナーとしてのニスコムへの期待は大きい。
[次のページ]