個性派外資系DCIMベンダーも動きを活発化
Future Facilities
3次元の熱気流解析が武器

池田利宏
社長 英国のDCIMベンダーであるFuture Facilitiesは、3次元で熱気流のモニタリングと解析を行い、空気の流れや温度を「見える化」する技術が売りだ。2009年に日本オフィスを開設し、トップに就いた池田利宏社長は、「温度の予測が可能な唯一のDCIMツールを提供している」と自負している。熱気流を重視することで、DC内の温度制御メカニズムを構築することができ、これをもとに将来のDC運用のシナリオをプランニングすることも可能だという。
日本市場では、中小のDC事業者にフォーカスし、営業している。「純粋なソフトウェアなので、低コストで導入できる」(池田社長)とのことだが、現状はモニタリングでの活用にとどまっているケースがほとんど。それだけでは投資のモチベーションを喚起するのが難しく、中小事業者向けのビジネスゆえのシビアさも感じている。電力管理などでは、他ベンダーのソリューションと連携することも視野に、DC運用の将来像をシミュレーションし、経営判断に資する情報を提供できるような提案を目指す。
FieldView
40社にターゲット絞り実績づくり狙う
米国の有力DCIMベンダーであるFieldView(フィールドビュー)も、日本市場の開拓に乗り出そうとしている。現在、日本法人は置いていないが、今後、オフィス開設や販売パートナーの獲得に取り組むなど、市場開拓に向けた体制づくりに動く。
セブ・オニシュケビッチCMO(マーケティング最高責任者)は、「ファシリティとITに精通して、販売だけではなく、デリバリもできるパートナーと組み、ターゲットを約40社に絞って販売実績をつくりたい」と述べる。パートナーを「手厚く支援する」(オニシュケビッチCMO)ことでサポート体制の充実を図って、日本でも本格展開する。
Facebookを射止めたベンダー CA TechnologiesのDCIMがついに上陸
──FacebookのDCにCA TechnologiesのDCIMが採用され、話題になっています。日本でのDCIM提供はまだですが……。 
アジア・パシフィック&ジャパン担当
シニア・ディレクタ
ピーター・シャープルズ氏に聞く シャープルズ 今年度の第2四半期(7月~9月)に日本のローカライズ版を出します。ガートナーの調査では、日本を含むアジア太平洋地域で、エンタープライズユーザーの約40%が、今後1年間で何かしらのDCIMテクノロジーの導入を検討したいとしています。日本は世界のなかでも非常に速い速度で市場が育っている地域で、大きな成果を期待しています。
──CAのDCIMの強みとは何でしょうか。 シャープルズ 大きく二点あります。まず、ハードベンダーにまったく依存していない完全なマルチベンダー対応を実現していること。マルチベンダーをうたう他のベンダーとはまったく違うレベルでそれを実現していると自負しています。二つ目は、DCIMを当社のシステム運用管理ソフトと同じプラットフォーム上で提供し、高い可用性とスケーラビリティを確保できる点です。まさにそこが評価され、非常に大規模でスケーラブルな運用が求められるFacebookのDCにも採用されたわけです。実は、Facebookのプロジェクトは、電気代の節約効果だけで投資をペイしてしまったのですが、そこは本質ではありません。ユーザーがDCIMに求めているのは、あくまでもシステムの可用性を高めるツールとしての機能です。
──日本ではどんなユーザーをターゲットにする方針ですか。 シャープルズ 当社のソリューションはモニタリングだけでなく分析もできるので、DCのアセットマネジメントでのメリットが大きいとは感じています。
従来のパートナーも含めて、当社DCIMへの期待感は非常に高いという印象です。レッドオーシャンになりつつあるIaaSビジネスから一歩抜け出すためのツールとして、訴求できるのではないでしょうか。
記者の眼

高木 一
代表取締役 国内のDCIM市場は、まだ定量的な分析ができるような市場ではない。各ベンダーも手探りをしながら案件を開拓している状況で、DCIMソリューションの決定版を単独で打ち出すことができる状況にはない。DCの国際的なトレンドに詳しいGITアソシエイツの高木一代表取締役は、「それでもグローバルでは、今年から来年にかけて大きな市場が立ち上がるというのが業界関係者の共通認識になりつつある。いま日本の市場で一番大事なのは、DCIMの市場をまずはつくること。どのDCIMベンダーも一社で囲い込もうとせず、他のベンダーと補完し合い、ビジネスの底上げを考えたほうがいい」と助言する。
クラウドの普及により、DCのビジネスモデルが変革を求められているのは確かである。ITとファシリティの統合管理を実現するDCIMは、その基盤となるポテンシャルを秘める。エネルギー消費の効率化だけでなく、DCの設計や、それを活用したクラウドサービスの設計のあり方を大きく変える可能性があるのだ。シュナイダーエレクトリックの有本氏がいうように、従来のビジネスモデルが縮小しつつあるSIerにとっても、注目すべき商材といえる。現時点ではファシリティ分野の知見に乏しくても、DCIMというツールを使って環境を「見える化」し、分析するノウハウを蓄積していくことは可能だろう。リスクはあっても、まだ先行者利益が得られる市場だ。