――2023年を振り返って。
AIの時代が到来し、データ社会になっていることは、当社にとって追い風になっている。企業がネットワークといろいろなものを結び付け、クラウドやセキュリティを一括して構築する傾向が強まったことで、100億円を超えるような大型案件が増え、案件の複合化が進んでいる。案件の大型化により完成まで時間がかかる側面もあるが、受注残高は大きく伸びており順調な年だった。
代表取締役社長 勝 栄二郎
――特に好調だった分野は。
事業全体がバランスよく伸びているが、法人向けが好調だ。個別では、ネットワークセキュリティが20%、クラウドが十数%成長した。データセンター(DC)のニーズも非常に強く、千葉県白井市に建設した白井データセンターキャンパス2期棟にも多くの引き合いをいただいている。
クラウドには発展する余地がある
――24年の市場見通しは。
データ社会は緒に就いたばかりであり、今後ますますデータ活用のニーズは増えていくと考えている。パブリッククラウドは、欧米に比べるとまだまだ利用率が低く、相当に発展する余地がある。その中で当社がさらなる成長を目指すためには、売り上げの8割以上を占めて安定経営の基盤になっているストック型のサービスに加えて、個別案件の構築、大型案件を獲得していくことが重要になってくる。
――企業のクラウド活用をどのように支援していくか。
提供するパブリッククラウド「IIJ GIO」は好調だが、重要なのはマルチクラウドの支援だ。企業は一つのクラウドだけを使うわけではなく、システムに応じていろいろなクラウドを使い分けるのが一般的だ。当社はその連携を支援できる。23年から「IIJクラウドデータプラットフォーム」の提供をスタートした。マルチクラウドのデータを安全に交換できるようになり、大きな反響がある。当社は1万4000社の顧客に対して多様なサービスを提供しており、活用していただけるチャンスは大きい。
――24年の成長戦略は。
国内企業のDXの取り組みは始まったばかりで、当社が注力しているセキュリティ分野の対策は待ったなしだ。データ中心社会でネットワークの進化はどんどん速くなる。IT需要が伸びる中で、当面、追い風は続くだろう。当社は社員の70%が技術者で、技術オリエンテッドな企業だ。技術開発力があることに加え、クラウドサービスを国内で初めて提供して以来、長年蓄積したサービスを運用するノウハウがある。お客様からは運用力が評価されていると感じており、その強みを生かしてネットワーク、セキュリティをバランスよく成長させていきたい。