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<ビジネスプリンタ・スキャナ特集> 新規市場の開拓で市場のすそ野を広げるメーカーの戦略とは 後編

2007/09/24 19:56

週刊BCN 2007年09月24日vol.1204掲載

出力ニーズは旺盛だが、ずさんな情報管理は大きなリスクに

■まだまだ多い「紙」から情報漏えい

 プリンタによる用紙の出力ニーズを分析してみると、最近はカラー出力に対する関心が高まっているようだ。この流れに乗り、カラーページプリンタやビジネスインクジェットという市場が急速に確立しつつある。しかしその一方で、「紙」からの情報漏えいは、相変わらず続いている。

 「個人情報保護法」を契機に、情報漏えい対策ニーズが高まっていることは、すでに周知の事実だ。セキュリティ対策ソリューションが拡充され、市場全体が活性化している。情報漏えいという言葉からは、個人情報や企業の機密情報、国家機密まで漏えいしている「Winny問題」が思い浮かぶが、実は情報漏えい事件の多くは「紙」から漏えいしているのである。

■情報漏えいの抑止力を高める社員の意識向上も重要

 機密情報であれ一般情報であれ、「紙」を介して業務で活用している企業は多い。これらの情報は、配布された個人に管理が委託され、企業側が管理していない。保管方法などもまちまちで、セキュリティレベルの統一がとれないのが実情だ。機密情報の出力紙がデスクの上に置いてあるようでは、容易に情報が漏えいしてしまう。企業システムをいかに強化しても「紙」という経路を考慮しなければ、どんな情報でも容易に漏えいしてしまうのである。また、「紙」から漏えいした場合、漏えいした情報の経路も追いにくい。そのため、印刷した紙に印刷処理した利用者のユーザー名やプリント日時、「重要」「社外秘」といったウォーターマークを印刷し、社員のセキュリティ意識の向上を図って情報漏えいの抑止力として利用するソリューションが注目されている。また原本からコピーをとると文字が浮き出る特殊加工を施した地紋印刷技術も開発されている。

■システムとの連携で情報漏えいリスクを低減

 これらの機能は、システムインテグレーターの提供するソリューションと連携し、システム全体のセキュリティレベルを向上させるために利用されることも多い。エンドユーザーだけではなく、システムインテグレーターといったパートナー企業からも要望が強いというのだ。

 また、プリンタ側での機能ではなく「紙」そのものに着目した提案を行っているベンダーもある。例えば、外部への通知で「はがき」で連絡しなければならないケースも多い。こういった「はがき」で機密情報を記載する際、「目隠しラベル」を活用するケースが増えている。こうした特殊な加工は、これまで専門業者が請け負っていたが、現在では帳票メーカーなどから「プライバシー保護関連商材」として提供されるケースも増えている。必要な枚数だけ利用でき、内製化できるため、情報セキュリティをより強化できる。昨今、取引先から大規模情報漏えい事件も起きている。機密情報であればなおのこと、自社の目の届く範囲内でハンドリングしたいというニーズは高まっている。そういったニーズにも、プリンタメーカー、帳票メーカーの戦略はマッチしていると言えるだろう。

■総合的なシステムでセキュリティを確保

 さらに、印刷経路まで含めたセキュリティ対策を施すベンダーも登場している。プリントサーバーやプリンタ内部に装着されているハードディスクには、大事な情報が集まり、出力されていく。このデータが盗まれてしまっては、どれだけ優秀なセキュリティ対策を施した機密情報も、容易に漏えいしていくだろう。プリントデータは、長期保存しておく情報ではないため、一定時間経過後、プリントデータを完全消去するようなソリューションも実用化し提供されている。また、印刷指示を出したPCからプリンタまでの経路のセキュリティを確保するため、通信データの暗号化を行うケースもある。このようなソリューションを組み合わせることで、よりセキュアなITシステムが構築できる。

 「紙」は、これからもビジネスにとって非常に重要な役割を担うことになるだろう。「紙」からの情報漏えい対策を視野に入れて、企業システムを再構築する時期が来ている。

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