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<プリンティングソリューション特集> カラープリンタ市場 年末、年度末需要控え新製品ラッシュ 前編

2007/11/29 19:56

週刊BCN 2007年11月26日vol.1213掲載

漏えい経路比率の第1位は「紙媒体」 プリンタのセキュリティは必須に

■業務と切り離せない「紙」のセキュリティ対策は必須

 NPO日本ネットワークセキュリティ協会の『2006年度 情報セキュリティインシデントに関する調査報告書 Ver.2.0』によると、情報漏えい経路(媒体)比率は、(1)紙媒体=43.8%、(2)Web・Net=22.0%、(3)PC本体=10.7%、(4)FD等可搬記録媒体=8.2%となっている。「紙媒体」の割合が1位であることは2005年と同様であるが、2005年に4位(6.4%)であった「Web・Net」の割合が増加し、2位に急浮上しているのが大きな特徴だ。これは、社会問題となっている「Winny」などのP2Pソフトウェアを媒介とした情報漏えい件数が増加している影響が大きい。

 一般に情報漏えい対策というと、1件当たりの漏えい人数が多い電子データへの対策が注目されてしまうが、情報漏えい経路として最も多い「紙媒体」への対策は、不可避の状態である。

 多くの企業にとって、帳票などの「紙」を介した業務を行うケースは多い。しかし、これらの情報は、配布された個人に管理が委任されており、企業側が管理していないケースが多い。保管方法などもまちまちで、セキュリティレベルの統一が困難である。電子データでの情報漏えい対策をどれほど施しても、「紙媒体」への対策がおろそかでは、情報漏えい事故はいつでも起きてしまう。また、「紙媒体」からの情報漏えいは、その経路を追跡しにくいという課題もある。そのため、印刷時に「ユーザー名」「プリント日時」といったユーザー情報に加え「社外秘」といった任意の文字列を強制的に印刷し、情報漏えいの抑止力を高めるソリューションや、不正コピーを防止するため、複写すると文字が浮きでる「地紋」印刷が行える製品も登場し始めている。特に「地紋」印刷は、原本性の確保も実現する。クライアントPCのログ管理と同様に印刷履歴の管理を行うことで、これまで見えなかったユーザーごとの印刷枚数の「見える化」に加え、「誰がいつ、何を印刷した」という履歴を管理し、情報流出の抑止効果を高めるソリューションもある。

■社員の意識向上とITの管理範囲の拡大がカギ

 前述の通り、「紙」の管理は個人に任されている。「紙媒体」からの情報漏えいを防ぐためには、それらを扱う社員が高いセキュリティ意識を持つことが必要不可欠だ。しかし、個人の意識に頼るだけでは、セキュリティリスクを回避することができない。可能な対策をITセキュリティに組み込み、ITで管理できる範囲を広げることが重要になる。その好例が、ICカードでユーザーを認証した上でプリントを指示するようなソリューションだ。プリンタからの出力時にもICカードによる本人認証が必要なため、第三者による「持ち去り」もできず、情報漏えいリスクを大幅に低減する。

 また、ネットワーク上を流れる印刷データやプリンタ内部に蓄積されるデータを暗号化し、印刷されるまでの経路からの情報漏えいを防止するソリューションも提供されている。プリントサーバーやプリンタ内部に装着されているハードディスクには、多くの機密情報がある。このデータが盗まれてしまっては、どれだけ優秀なセキュリティ対策を施したとしても、その情報は容易に漏えいしてしまうだろう。これらのソリューションを活用することで、印刷命令を出したクライアントPCから実際にプリンタで印刷されるまでの印刷経路のセキュリティも確保され、情報漏えいリスクが大幅に低減できる。

 現在、このようなソリューションは、セキュリティベンダーはもちろん、プリンタメーカーからも提供され始めている。なかには、オプションを導入するだけでセキュアな環境を構築できるものもあり、プリンティングソリューションの導入障壁を低くしている。また、セキュリティ評価基準の国際規格であるコモンクライテリアに対応する商材も投入され、顧客企業の選択の幅を広げている。情報漏えい対策はもちろん、内部統制の構築という側面においても「紙媒体」からの情報漏えい対策は必要となっている。

(週刊BCN 2007年11月26日号掲載)

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