Special Issue

Acer.Inc/グローバルを勝ち抜いた目が見つめる日本市場 Vol.3

2008/06/09 19:55

週刊BCN 2008年06月09日vol.1238掲載

 シンプルに機能性、コスト、使い勝手を追求する製品、インダイレクトを推進するチャネル戦略-。エイサーがワールドワイドで成功を収めた理由がひとつひとつ解き明かされるにつれて、日本市場での活躍が現実味を増してくる。今回は、欧州市場の成功のシナリオを日本市場でどう展開していくか、ヘッドクォーターのブランドマネジメント&プロダクトマーケティング ディレクターであるアンディ・チャン氏と日本エイサー社長のボブ・セン氏に話を聞いた。

真のエマージングマーケット「日本」に期すもの
着実にステップアップするために、日本仕様の製品、チャネルを整備

日本固有の技術へ対応
ロードマップに薄型、軽量モデルを追加


 日本のPCマーケットは、ノートPCが市場をリードし、主戦場を舞台に各社が激しい攻防を繰り広げている。

 そうしたなか、日本エイサーでは「GemstoneBlue(Aspire6920 Series)」を4月25日に発売した。新たな1ページを刻むために、日本向けの製品戦略がスタートを切った。

 ヘッドクォーターで、ブランドとマーケティングのコンダクターとしてタクトを揮うアンディ・チャン ディレクターは、「持ち運べるホームシアターを実現したノートPCは、最先端の機能をリーズナブルな価格で提供した意欲的な製品です。今後も、メインストリームマシンを筆頭に、フルラインナップで日本のマーケットニーズに応えていきたいと思います」と語る。

 事実、今後は製品リリースが続々と控えており、半年に一度の大きなモデルチェンジをはじめ、新しい技術を搭載したノートPCが市場に投入される見込みだ。

 そのなかには、エイサーのロードマップにはなかった「Thin & Slim」「Thin & Light」「Ultra Slim」など薄型・軽量モデルも含まれている。「下期からは、製品ラインナップのひとつとして提供していきたい」と、アンディ・チャン氏。

 日本市場が世界を動かしたこの動きを、日本エイサーのボブ・セン氏も歓迎しており、「12インチ以下が非常に大きなシェアを持つ日本のユニークなマーケットニーズに対し、日本エイサーはこれまでカバーできていませんでした。しかし、このセグメントを今年からカバーしていけるのは、非常に喜ばしいことです」と、素直に嬉しさを表現する。

 併せて、Blu-ray対応、指紋認証対応なども含め、技術に造詣の深い日本マーケットを意識した製品づくりを着々と進めている。

 エマージングマーケット「日本」にかける本気度を知らしめるに十分なこの製品戦略は、今後競合他社にとって脅威になることは間違いない。

環境問題にも配慮
人を、技術を支える「Empowering」


 洞爺湖サミットを目前に控える日本にとって、環境対策は大きな課題のひとつ。エイサーは、環境に厳しい欧州で「RoHS」の規準を遵守し、自動車メーカーと同様に、半年以上も前から対応策の準備を進めている。

 また、廃棄物やリサイクルに関連する規制「WEEE指令」についても、各地域のエージェントと連携して基準への準拠を図っており、日本でもエージェントを介した同様のアプローチが取られる模様だ。

 さらに、人にもやさしいエイサーであるために、 “Easy”として使いやすさを表現してきたが、次世代PC管理プラットフォーム「Empowering Technology」、 さらにその先にある人と技術の間の障壁を取り除く「Empowering People」をコンセプトに掲げ、テクノロジーをいかに使いやすくするか真剣に取り組んでいる。

 「いまやノートPCは、家庭で、オフィスでコミュニケーションを司る情報センターの役割を担っています。高い信頼性、高品質、リーズナブルな価格、さらに共有コンポーネントによるスピードと柔軟性を通じて、コンピュータライフを“Empowering”していくことがエイサーの使命だと自負しています。日本でもこのコンセプトを継承し、エイサーらしさを提供できるよう努めていきたいですね」とアンディ・チャン氏。これまで取り組んできたエイサーイズムが、日本にも浸透してくれば、自ずとシェア獲得も見えてくるはずだ。

“シェア獲得は一日にしてならず”
足場を固め、一歩一歩前へ


 ただし、日本のPC市場は、長い歳月をかけて醸成されてきた。ゆえに、急激なマーケット革命が起きることは考えにくい。

 日本エイサーのボブ・セン氏は、そうした中にあって、新たなムーブメントを感じ取っているという。

 「ユーザーの習慣が少しずつ様変わりし、多くのソフトウェアをバンドルしたPCの使い勝手に、疑問が膨らみ始めています。すべて詰めこむ高機能指向に対し、エイサーはあえて『Easy』を軸に、日本に合ったローカライズを目指していきたいと考えています」。

 いつの時代も変わらない基本に忠実な取り組みが、日本の市場にマッチする。その思いがいま、確信へと変わろうとしている。

 日本エイサーの歩みも、まずは足場を固め、一歩一歩前に踏み出すことから始まる。

 「今まで、エイサーブランドは、ヨーロッパが60%以上のシェアを占めていました。この比率を50%以下に抑え、ワールドワイドで底上げを図っていく方針です。日本は2008年の注力市場となりましたが、いきなり来年に第5位を狙うというような無謀な挑戦は望みません。今やれるべきことをしっかりこなし、チャネルの整備、エンドユーザーとのインタフェース、そういった部分をひとつひとつ確実に強化していくことが大切です」と、ボブ・セン氏は今後の抱負を述べる。シェア獲得の道のりは長いが、日本エイサーが踏み出した一歩は、明日につながっている。世界で成功を収めたシナリオが、日本でどう展開され、サクセスストーリーを描いていくか、大いに注目だ。
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