3年ほど前からのSaaSブームと国内の不景気に伴って、ITインフラの「所有から利用へ」の流れが顕著になっている。いまでは、全国のSIerから当たり前のように「クラウドコンピューテイング」への取り組みが報告されている。国内では、自社データを他社のサーバーで管理することを嫌うユーザー企業が多いために、大手ITメーカーやSIerは、ユーザー企業内にクラウド環境を構築し、安心して利用できる「プライベートクラウド」の展開を本格化している。

ネットワークの仮想化が必須に

 国内に、米国企業で広く使われているGoogleやAmazonEC2など「パブリッククラウド」より先に、「プライベートクラウド」の波が押し寄せている。国内の中堅・大手企業は、自社の基幹システムにある重要データを、外国のデータセンター(DC)に置くことを嫌う傾向がある。これらのデータを、自社もしくは提携するSIerなど、自社のIT管理者などの手の届くところのクラウドで管理・運用したいというニーズが強いのだ。

 このため、富士通やNEC、日本IBMなど大手ITメーカーとその直系販社、NTTデータなどの大手SIerは、中堅・大手企業に「プライベートクラウド」を提供する技術や方法などを開発している。そのうえで、部門で必要なアプリケーションを「パブリッククラウド」を利用してマッシュアップする仕組みを提供し、ITインフラの投資抑制や運用・管理費の削減・効率化などを図っているのだ。

 ただ、ユーザー企業が一足飛びにクラウド環境へ移行できるかというと、そうではない。既存のクライント・サーバー(C/S)型システムや、製造業を中心にオフコンなどのレガシーシステムが残っているからだ。この既存環境を自社内のシステムやSIerなどのDCに移行するにしても、その環境を仮想化技術などで集約・統合を行う必要がある。

 VMwareやHyper-V、Xenなどの仮想化技術が飛ぶように売れ、使われているのはそのためだ。仮想化技術などで既存システムを集約・統合するステップを経て、クラウド環境への移行が始まる。

 これらの仮想化技術は、基幹システムであるサーバー周りを最適化するのに役立つ。しかし、サーバーにはネットワークを結ぶためにファイアウォールやIPS(侵入防止システム)、スイッチ・ルータなどのネットワーク機器(アプライアンス製品など)が多く存在する。ネットワーク機器は物理的に個々のきょう体に分かれていて、DC内で混在化し、仮想化した基幹システムとの融合を図ることができない。

 まずは基幹システムを仮想化環境で集約・統合し、クラウド環境を構築すると同時に、ネットワークを仮想化しなければならない。さらにはセキュリティの統合作業も加わってくる。この部分に対するベンダーのアプローチはまだ途上。課題解決は急務になっている。

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