景気後退の影響で低迷を続けているIT産業界。そのなかでも唯一といっていいほど成長が見込める分野がある。それが仮想化だ。初期コストこそかかるものの、中期的なコスト削減効果が見込めるとして、ユーザー企業・団体は規模や業種を問わず、仮想化に高い関心を示している。最近ではニーズが多様化し、仮想システムの設計・構築だけでなく、運用・保守業務でITベンダーのサポートを受けたがるユーザーも出てきた。市場が広がり、ニーズも多様化してきた仮想化。IT市場をけん引する有望分野だ。

ユーザー層広がり、ニーズも多様化

ハード・ソフトともにCAGR10%以上

 IT調査会社の資料を見ると、仮想化関連のレポートは共通して右肩上がりの成長を中長期で指し示す。IT調査大手のIDC Japanがまとめたいくつかの資料を見ると、その傾向が如実に見て取れる。

 例えば、「仮想化サーバー」の出荷台数。「仮想化サーバー」とは、仮想環境を構築するためにユーザー企業が購入するサーバーを指す。不景気の影響でサーバー市場はどのモデルも低迷するが、この「仮想化サーバー」だけは伸びている。2009年の「仮想化サーバー」出荷台数は、前年比9.2%増の6万7813台と高い成長を記録。また、今後も成長が見込め、09年~14年のCAGR(年平均成長率)は15.9%としている。その結果、14年には国内・企業が運用する全サーバーのうち、約4台に1台は「仮想化サーバー」が占める状況になるとIDC Japanは大胆に予測している。

 また、仮想化関連ソフトも中長期的な成長が見込める。システムやアプリケーションを仮想システムで動作させるための仮想化ソフトだ。IDC Japanによると、09年の仮想化ソフト市場規模は287億400万円で、前年に比べて11.8%伸びた。09年~14年のCAGRは15.7%で、14年には595億円に拡大するとみている。

 仮想化市場の中期的成長を予感させる資料はまだあるが、示した二つのデータでハードとソフトともに、仮想化関連製品が有望株であることはわかるはずだ。

設計・構築に加えて運用も需要増大

 仮想化市場が成長する要因はいくつか考えられるが、二つに集約されるだろう。一つは、仮想化に関心を示すユーザー企業・団体が広がってきた点。そしてもう一つが、仮想化に対するニーズの多様化だ。

 国内のIT業界で仮想技術は、5年ほど前から注目されていた。その当時は情報も乏しく、仮想技術を活用できる技術者も少なかったことから、利用するユーザー企業・団体は一部の先進企業と大手企業に限られていた。それがITベンダーのPR施策が活発化していることや、景気後退による情報システムの運用コスト削減意識も高まって、1年ほど前から、中堅・中小企業(SMB)にも広がっているのだ。

 そして、もう一点がニーズの多様化。これまでのニーズは仮想システムの設計・構築が大半だったが、今はその後工程である構築・運用業務でITベンダーのサポートを必要としているユーザー企業・団体が出てきた。仮想したシステムを運用するには、物理システムにはない独自の運用技術とノウハウが必要になる。それはかなり高度で複雑なスキルで、ユーザー企業・団体の情報システム部門では面倒をみられない状況が生まれているのだ。結果的に、ITベンダーの力を借りようとする動きがみられ、「仮想システムの運用・保守サービス」という市場がにわかに活気を帯びているわけである。

 IDC Japanの入谷光浩・ソフトウェア&セキュリティマーケットアナリストは、「仮想化は、サーバーやソフトだけでなく、ソリューション(サービス)でも新たな市場を生む。なかでも、仮想環境の管理ソリューション市場は伸びるはずだ」と強調する。そのうえで、仮想環境管理ソフトウェアの08年から13年までのCAGRを28%としている。

 対象顧客が広がり、ユーザー企業・団体の要望も多様化している仮想化市場。中期的に成長することは間違いない。設計から構築・運用、そして保守サービスまで顧客規模を問わず提供できる事業基盤をもっているベンダーこそが、主導権を握りそうだ。


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