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ATENジャパン、SOHO・SMB向けKVMスイッチから飛躍、ターゲットと製品ジャンルを拡大

2010/11/08 19:55

 KVMスイッチメーカーのATENジャパンは、今年度(2010年12月期)、新たな事業戦略を推進している。KVMスイッチの開発・販売では、得意分野のSOHOと中堅・中小企業(SMB)向けモデルだけでなく、大企業やデータセンター(DC)向け機種のラインアップを増強して、アプローチする顧客層を広げた。その一方で、KVMスイッチだけでなく、製品にインテリジェントPDUやリモート統合管理ソフトを加えてラインアップを増強。新たな展開で飛躍するATENジャパンの今を探った。

強みのSOHO・SMB向けに加え、大企業・DC事業者向けにも注力

 ATENジャパンは台湾に本社を置くATENの日本法人で、KVMスイッチの開発・販売事業で伸びてきた企業だ。「KVM」とは「キーボード・ビデオ・マウス」の略で、KVMスイッチは、一組のキーボードとマウス・ディスプレイ装置で、複数のコンピュータを操作するための切り替え装置を指す。最近は、リモート操作対応したデジタルKVMスイッチが伸びている。社内のコンピュータを管理する情報システム担当者には必須の機器だ、

 これまでATENジャパンは、KVMスイッチのなかでもSOHOと中堅・中小企業(SMB)向け機種の開発に強く、この市場が成長の原動力となってきた。

 そのATENジャパンが、今年度から進めている施策の一つが、アプローチするマーケットの拡大である。マーケットを顧客の規模ごとに5つに区分し、それぞれに合わせた販売形態とブランドを用意した。具体的に言えば、コンシューマ向け製品はOEMビジネスで自社ブランドの開発・販売は手がけず、SOHOとSMB向けでは「ATENブランド」で製品をシリーズ化。大企業とDC事業者向けには「ALTUSEN」というブランドで攻めることを基本戦略に据えた。


 辻智之・取締役営業本部長は、「強みの『ATEN』ブランドだけでなく、『ALTUSEN』も以前からシリーズ化していた。ただ、今年度からは、提供する製品を市場ごとに明確に分けて展開している。SOHOとSMB市場で多くのユーザーに支持された結果、『ATEN』ブランドの製品は安定成長が見込める。今後は、これまで他社に後れをとっていた大企業とDC事業者向け製品を、急成長のエンジンに位置付けている」と説明している。

辻智之・取締役営業本部長

 さらに、“後発組”に入る大企業とDC事業者向けデータセンター事業者向け製品について、「長年SMBの要望に適した製品を開発し、実績を積み上げてきたノウハウを生かせるのが当社の強み。他社製品は大企業のなかでもかなり大規模なシステム用製品が多い。当社は、大企業向けでも比較的コンパクトで拡張性に富んだ製品群を狙っている。SMBの要望に適した製品開発能力をもつという、当社の強みを生かしてこれまでにない顧客満足を提供できると思っている」と語った。

製品ポートフォリオ拡充、PDUやシリアルコンソール、管理ソフトも用意

 顧客層に合わせたブランド展開に加えて、ATENジャパンが今年度から力を注いでいるのが、KVMスイッチ以外の製品ラインアップの拡充だ。KVMスイッチだけでは、「情報システムの効率的な管理」という顧客の課題を解決するソリューションは提供できないからだ。

 具体的には、デジタルKVMスイッチなどを統合管理するソフトウェアを提供し、シリアルインターフェイスで制御する機器をTCP/IP(インターネットやイントラネットで標準的に使われるプロトコル)で制御する装置や、UPS(無停電電源装置)などの電源からラック内のサーバーに配電するPDUなどを、続々と製品化している。

 統合管理ソフトウェア「CC2000」は、最近のバージョンアップで「VMware」に対応。物理サーバーと仮想サーバーが混在している情報システムでも一元管理ができ、「VMware」の管理ソフトをわざわざ起動する必要がない。さらに、日本アイ・ビー・エム、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、デルのブレードサーバーと「SysLog」もサポートした。

 一方、PDUは、0UサイズのインテリジェントPDUを今夏に発表。TCP/IP経由で電源制御ができるPDUで、0Uサイズの縦型設計でラックの外側に取り付けることできるので、ラックスペースをムダに使わない。

 開発する製品ジャンルを広げて体系化したことについて、栗田正人・営業本部企画部部長は、「ユーザー企業のキーワードになっているのは、『仮想化』『グリーンIT』『IT力の強化』、そして『コスト削減』。これらを支援するソリューションを総合的に揃える必要があり、それを念頭に製品ポートフォリオを組んでいる」と説明する。

環境変化に対応したATENジャパンの製品ポートフォリオ

 さらに栗田部長は、「クラウドが主流になると、顧客やDCの情報システム管理はますます複雑になる。そうなった時に、包括的なソリューションを提供できる当社の製品が存在感を示すはずだ」と続けた。

ATENジャパンの栗田正人・営業本部企画部部長

 製品ラインアップを拡充しただけでなく、ATENジャパンは市場に製品を流通させるための販売パートナー向け制度も整備している。昨年より、力を注ぐ「ALTUSEN」で、「6-Star Partners」という販売パートナー制度を用意した。ここでは、「ALTUSEN」ブランドを販売するための技術・営業情報を提供するほか、製品の知識をレクチャーするトレーニングも無償で展開する。10月末の時点で、すでに12社がパートナーに名を連ねている。来年初めには、プログラム内容を充実させてリニューアルする予定で、従来以上に販売パートナーの支援を加速させる計画だ。

 SOHOとSMB向けKVMスイッチ市場で圧倒的な存在感をもちながら、アプローチする市場と製品ジャンルを拡大させたATENジャパン。情報システムの運用管理ソリューションベンダーとして、ますます存在感を増してきそうだ。

 更に、来年に向けてKVMスイッチ以外の製品群「ビデオソリューション」を起動させるための準備が進められている。詳しくはATENジャパンのホームページで確認できる。
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外部リンク

ATENジャパン=http://www.atenjapan.jp/

「ALTUSENシリーズ」=http://www.atenjapan.jp/products/product_enterprise.php

「ATENシリーズ」=http://www.atenjapan.jp/products/product_smb-soho.php