大手SIerの東芝ソリューション(梶川茂司社長)は、ユーザー企業の“ビジネス機会の最大化”に焦点を当てる。新興国の経済振興に触発され、世界規模で経済の勢力図が様変わりしつつあるなかで、同社は、ITシステムではCRM(顧客情報管理)が重要なカギを握るとみる。大きく変化するマーケットを的確に把握することで、ユーザー企業がより多くのビジネスチャンスを得られる原動力に位置づける。東芝ソリューションが重点施策と位置づけるCRMソリューション「T-SQUARETM(ティースクエア)」を中心に取材した。

引き合い強まるCRM「T-SQUARETM

 ユーザー企業のIT投資の潮流が明らかに変わりつつある――。「ポスト・リーマン・ショック」の年とも言える2010年、東芝ソリューションは、ユーザー企業に対してビジネス機会を最大化する提案を積極的に展開してきた。この取り組みが功を奏し、「CRMソリューションを軸に前年度比で倍増に近い引き合いが来ている」(東芝ソリューションの山本修二・業務ソリューション事業部クロスインダストリーソリューション部長)と、ビジネス拡大に確かな手応えを感じている。

 人件費削減や工場など生産設備の統廃合が目立った09年に比べて、10年は海外需要の取り込み新商品・サービスの開発をはじめとするビジネス機会の最大化へユーザー企業の関心が移りつつある。内閣府の調査によれば、例えば今年、人件費の削減を強化すると答えた企業が11.5%だったのに対して、海外需要の取り込みを強化する企業は55.9%と、相対的に「ビジネス機会の最大化の優先順位が上がっている」(山本部長)。東芝ソリューションのCRM商材への引き合い増と一致する動きだ。

山本修二・業務ソリューション事業部クロスインダストリーソリューション部長

 東芝ソリューションは、CRMソリューションの開発に力を注いできたベンダーだ。15年ほど前のCRM黎明期に「お客様相談室システム」を商品化し、2003年、コンタクトセンター向けWeb版統合システムの「CT-SQUARE®」を投入。その後、本格的なCRM需要の高まりを受けて、2005年に統合CRMソリューションの「T-SQUARETM」を製品化した。「お客様相談室システム」と「CT-SQUARE®」を含む「T-SQUARETM」の累計納入件数は170社以上で、幅広い業種のユーザーで活用が進んでいる。東芝ソリューションは、「ビジネス機会を拡大するためには、これまで以上に全組織一体での顧客対応の仕組みが重要となる。すなわち、顧客の声の監視と市場分析を行いリアルタイムで共有することと、顧客の機会・時間を無駄にしない対応とが求められる。顧客が直面する問題を素早く正しく解決することに徹底して注力することは、自社の効率向上に繋がる。お客様サービス向上とコストダウンとは二律背反ではない。」(山本部長)と考えている。


コンサルティングで顧客の力量を引き出す

 しかし、CRMソリューションを、効果を発揮し業績に貢献する仕組みとするのは、それほど容易ではない。財務会計や人事給与など、他の業務アプリケーションとは異なり、CRMの活用範囲は、そのデータを活用する部門も含めるとユーザー企業全体に及ぶ。「T-SQUARETM」の製品構成を見ても、顧客情報統合データベースを中核に、統合コンタクトセンターやフィールドサービス、モバイル、営業革新支援、BI(ビジネスインテリジェンス)の6分野を揃えており、経営トップから経営企画、現場の営業・サービス担当者まで幅広くCRM情報を活用できる商品構成に仕上げている。見方を変えれば、企業がお客様接点情報を捉えビジネス機会最大化を目指す時、それをサポートするためにはこれだけの品揃えは必要ということである。

 東芝ソリューションでは、納入時のコンサルティングや既存の基幹系業務アプリケーションとのつなぎ込み、顧客の要望に応じたきめ細かなカスタマイズの3本柱で、ユーザー企業をサポートする。同社がシステム構築やコンサルティングサービスを本業とするSIerであり、かつ自社で独自に開発した「T-SQUARETM」だからこそできる技だ。

 ユーザー企業への納入に当たっては、まず顧客の現状を徹底的に調査し、収集したデータに基づいたフィット&ギャップを行う。営業やサービスの現場へのヒアリングから抽出した課題と、経営トップが示す目標・方針を付き合わせる。そのうえで、経営目標へのインパクトが強い課題に優先順位をつける手法で、CRMソリューションの設計を行う。同社のコンサルティングサービス「WHYリサーチコンサルテイング」や「CollaborativeCRMコンサルティング」に相当するフェーズである。その次の段階として、既存の基幹業務システムやUI(ユーザーインターフェース)を中心としたカスタマイズを行うことで、ユーザー企業の生産性向上を図っている。


ユーザー企業に育てられたCRM

 「T-SQUARETM」の開発では、過去の納入実績から得た知見を存分に活用している。ユーザー企業の現状分析や、現場と経営の要望をマトリックスに捉えて優先順位をつけていくコンサルティング、納入時のカスタマイズを通じて得たノウハウは、その都度、開発に反映してきた。「T-SQUARETM」は、いわば「過去15年余りにわたってユーザー企業に育てられたCRM」(山本部長)なのである。CRMソリューションの全体設計から始まって、画面遷移やUIに至るまで、徹底してユーザー企業の要望を聞き込んできた。


 例えば、完全ウェブ準拠の「T-SQUARETM」の画面イメージでは、文字の入力フィールドの大きさを自動的に変えたり、画面をコンパクトに見せる工夫など、さまざまな技術革新を行ってきた。入力フィールドでは、マウスをフィールドの上にもってくると自動的にフィールドを拡大したり、とかく情報過多になりがちな画面をすっきりさせるために、必要に応じて項目を折りたためる機能などを実装(図3)。UIまわりでは、複数の特許を取得しているほどつくりこんできた。「日々の業務で使うUIなので、少しの工夫で生産性が大幅にアップする」(山本部長)と話す。

開発の標準化で要望をすばやく反映

 膨大なコンサルティングやカスタマイズで得た知見を、「T-SQUARETM」に反映できるのは、IT業界標準(デファクトスタンダード)上に東芝ソリューションが組み上げているシステム開発共通基盤「CommonStyle®(コモンスタイル)」に準拠しているからだ。その共通基盤に完全準拠の上、プログラム構造を標準化し、ソフトウェアをコンポーネント単位で開発している。「T-SQUARETM」が2007年に「CommonStyle®」に対応しT-SQUARETMフレームワークを装備したことで、カスタマイズ作業にかかる時間の短縮や、コンポーネント単位での改善・手直しの迅速化に成功している。
コンポーネント構造の特徴を生かし、お客様にとっての価値をさらに向上するための機能追加と強化を進めており、これから相次いでリリースされるロードマップになっている。

 今、ユーザー企業は、新しい市場を求めて海外進出への意欲を高めている。東芝ソリューションでは、英語と中国語のインターフェースを標準装備したCT-SQUARE®の多言語(グローバル)対応版の提供を開始したり、クラウドコンピューティング上での最適化を進めたりなど、グローバル化を急ピッチで推進し、世界で活躍するユーザー企業をCRMソリューションの切り口で全面的に支援していく方針だ。

 「T-SQUARETM」の詳細は、11月11~12日に東京・台場で開催する「東芝ソリューションフェア2010(http://www.tsol-fair.com/)」で展示する予定だ。