競争が激しいIT資産管理・ネットワーク統合管理ツール市場で、ネットワーク総合管理ツール「LanScope Cat」がトップシェアを堅持し続けるエムオーテックス(MOTEX、高木哲男社長)。2月21日、満を持してPC資産管理とセキュリティ対策のクラウド型サービス「LanScopeクラウドキャット」を発売した。サービスを稼働させるクラウド基盤には、「Windows Azure Platform」を採用。日本マイクロソフトの協力を得た。自社でのクラウド基盤構築も検討したというMOTEXが、「Windows Azure Platform」の採用を決めた理由は何か。MOTEXの高木秀人執行役員と中本琢也執行役員に聞いた。

11種類の資産管理・セキュリティ対策機能を月額500円で提供

 「LanScopeクラウドキャット」は、「資産管理」「セキュリティ対策」「業務改善」をテーマにした計11種類の機能を備えるクラウド型サービス。IT資産管理分野でトップシェアである主軸製品「LanScope Cat」をベースに、顧客から要望が多かった新機能を付加しながらクラウドに対応させた。パッケージソフトとは違い、ユーザーは、インターネットを通じてソフトを入手し、管理するパソコンに専用ソフトをインストールするだけだ。

 情報システム管理者は、汎用のウェブブラウザから管理画面にアクセスすれば、各パソコンの管理とセキュリティ対策を講じることができる。管理サーバーを用意する必要はなく、利用するまでの時間と導入コストを大幅に削減できる。

「LanScopeクラウドキャット」の管理画面。 
マイクロソフトの「Silverlight」を活用し、グラフィカルに各種レポートを表示する。
左がトップ画面で、右が禁止アプリケーションの操作を一覧で表示する画面

 IT資産管理ソフトは、約20社のメーカーがひしめき合う競争が激しいマーケット。最近では、パッケージとしてではなく、月額課金型のクラウドサービスとして利用したいというユーザー企業・団体が急増している。調査会社のテクノ・システム・リサーチによれば、企業の約半数はIT資産管理を月額課金制で利用したいという調査データがある。MOTEXは、今回このニーズに応えるため、「LanScopeクラウドキャット」を用意したのだ。

バルマーCEOの講演をきっかけに、昨夏クラウド市場参入を決意

 高木秀人執行役員が、開発に至った経緯を振り返る。「クラウド型のサービスを始めようと思ったきっかけは、マイクロソフトが2010年7月に米国で開催したパートナー向けイベント”Microsoft Worldwide Partner Conference”に参加したことだった。スティーブ・バルマーCEOが基調講演で『クラウド!』と何度も叫ぶのを聞いて、『これからはクラウドが主流になる』と確信した。その場で社長に電話して、クラウド事業を始めたい意志を伝えた」。

 この出来事をきっかけに、MOTEXはクラウド型サービスの検討に取りかかった。中本琢也執行役員は「まずはクラウド基盤をどうするかを考えた。クラウド基盤サービスはいくつか知っていたが、コストが高いイメージがあったので、最初は自社でクラウド基盤を構築する方向で策を練っていた」という。

高木秀人執行役員

 しかし自社構築は、負荷分散の仕組みなど周辺サービス構築で想像した以上に困難な部分が多いことがわかり、他社のクラウド基盤を活用することを決断したという。そして、いくつかあるクラウド基盤を調査・研究した結果、マイクロソフトの「Windows Azure Platform」を選んだ。

 高木執行役員は、その理由を「『Silverlight』や『SQL Server』、『Visual Studio』といったマイクロソフトのテクノロジーをこれまで利用していた点も大きかったが、技術とプロモーションの両面で、日本マイクロソフトの支援内容が他社よりも厚かった」と説明する。

「Windows Azure Platform」を活用し開発期間は半分以下に

 中本執行役員は「Windows Azure Platform」を活用した開発の利点として、日本マイクロソフトが提供する開発者向け技術情報サイト「MSDN」の存在を挙げた。「『MSDN』の特典である無償環境があったことで気軽に試行錯誤ができた」といい、「情報は英語のものも多く、そこは苦労したが、『MSDN』を通じて、多くのテクノロジー情報を得ることができた。また、日本マイクロソフトが開くワークショップは、開発作業を楽にしてくれた。それまでクラウドについてそれほど詳しくなかったのだが、このワークショップに参加することで、多くのことを学べた」と語る。

 「アプリケーションの構築そのものに必要な期間は、クラウドだからといって大きく違わなかっただろう」という。「Windows Azure Platform」を利用したことで、開発からサービス開始までの期間を短縮できた。もし、「自社でクラウド基盤を構築していれば、サービス開始までの時間は、たぶん今回の2倍以上を費やしていただろう」と明かす。

中本琢也執行役員

 また、コストについては、「将来のユーザー数の増加を考慮してシステムの柔軟性や冗長性を考えた場合、自社でクラウド基盤を活用するよりも、『Windows Azure Platform』を活用したほうがコストメリットは大きい。初期費用は何十倍も安価に済ませることができた。 運用も楽になる分、アプリケーションをつくるという得意分野に集中することができると感じている」と続けた。

 高木執行役員は、「日本マイクロソフトが、『Windows Azure Platform』の活用事例として、『LanScopeクラウドキャット』を各方面でPRしてくれるのは、大きな広告効果がある」という。「マイクロソフト パートナー オブ ザ イヤー 2010を受賞したことも、マーケティング面でのプラス材料だった。ユーザーやパートナーに対するPRだけでなく、開発者のモチベーションアップにもつながった」と、マーケティング効果にも満足げだ。

 企画段階から約半年でサービス開始にこぎつけた「LanScopeクラウドキャット」。出足は好調で、ユーザーの年商規模・業種を問わず、さまざまな企業・団体から引き合いがあるという。「当初は、中小企業をメインターゲットに据えていたが、実際は中堅クラスの企業からも多くの問い合わせをいただいている。まずは10万ライセンスの販売を目標に、着実に成長させる」と、高木執行役員は意気込む。

 ネットワーク総合管理ツールでNo.1の実績を誇る有力ISVが、「Windows Azure Platform」を活用して投入したクラウド型サービス。IT資産管理ソフト分野ではクラウドが伸び盛りだけに、MOTEXがこの市場でも存在感を示すのは必至だ。