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<プリンタメーカー座談会>クラウドとマネージド・サービスが新たなテーマ 2010年度は市場に晴れ間のぞく(後編)

2011/03/24 19:56

週刊BCN 2011年03月21日vol.1375掲載

 2010年の国内ページプリンタ市場は、景気回復への期待や兆しが見えてくる中で、需要回復が予想され、各社の販売実績も実際に2008年レベルに戻り始めている。2011年のプリンタ市場は、「環境配慮」や「コスト削減」に加えて、新たに「クラウド」、「マネージド」といったキーワードがクローズアップされる見込みだ。一方、国内のプリンタ市場は成熟期を迎えている。そうしたなかで、プリンタメーカー各社はどのような戦略を考えているのか。NEC、エプソン販売、OKIデータ、富士ゼロックス、ブラザー販売、リコージャパン、キヤノンマーケティングジャパンの販売責任者に座談会形式で聞いた。

(前編)から読む

これまでのコスト削減、環境に加えて
クラウド、マネージドがキーワードに

 ──昨年の座談会では、製品および販売のキーワードとして「コスト削減」や「環境」が上がりましたが、今年は何がキーワードになると考えますか。

 岡田(NEC)
 やはり環境は大きなテーマの一つで、低消費電力、省スペースの取り組みは欠かせないため、紙などの使用量を管理する仕組みなどを提案していきます。もう一つはクラウドですね。当社が展開するクラウドには2つのソリューションがあります。一つは基幹系のもので、サーバー、PC、プリンタといった入出力機器で構成します。この分野ではパートナー様がクラウドシステムを販売できる仕組み作りをしてきました。もう一つのクラウドは、ドキュメント・ソリューションで、セキュリティを含めた印刷管理の仕組みをクラウドで提供します。さらに、全体の最適化もテーマの一つ。どこに何が何台あるのか、それを把握できていないお客様も少なくない。これを可視化していくことが重要と考えています。これらのドキュメント・ソリューションは11年度より順次、提供していきます。

 宮西(エプソン販売) やはり、「エコロジー」、「エコノミー」がお客様の大きな関心事です。TEC値や消費電力、本体、トナーカートリッジのイニシャルコストや1枚あたりのランニングコスト、保守サービスのコスト等、お客様の使用用途や重視されるポイントにあわせた提案が重要になると考えています。当社は、TEC値がクラス最小の「LP-S8100」や低消費電力の「ビジネスインクジェットプリンター」をご用意しています。また、保守サービス面では、低価格で引取りから修理完了、お届けまで行う「引取保守パック」を新たに開始しました。この保守パックはエコノミーに貢献できるサービスと考えています。

 また、「クラウド環境」についてはiPhone、iPadから出力できる仕組みや印刷状況を管理するツールの提供など、当社ならではの、快適なプリント環境の実現という観点で追求を図ってまいります。

 深野(OKIデータ) 当社がプリンタの専業ベンダーとしてキーワードに掲げたいのは、LEDを使用したシンプルな構造の商品を提供しているということです。シンプルな構造、従って壊れにくい。だから5年間無償保証が可能になる。そのことがお客様に長く、ストレスなく使用していただけることになるため、結果としてエコにつながると考えています。当社が掲げるキャッチフレーズ「現場に、愛を。」を具現化するものとして、今後も同様に取り組んでいきたいと思います。

 松永(キヤノンMJ) 第一に考えているのは、お客様に安心して継続的に使用してもらえるよう、努めていくことです。一方、具体的なサービスでは、マネージドドキュメントサービス「onBIZZ」を提供しています。お客様のドキュメント機器の運用管理業務を当社にアウトソーシングすることで、運用管理のコストや負荷を軽減し、TCO削減やセキュリティの強化にも貢献するというものです。

 宮崎(富士ゼロックス) 「環境」は掛け声から具体的な展開フェーズに入っています。オフィスのCO2排出や消費電力を見た場合、出力機器の占める割合は1割程度であり、PCなどが8─9割を占めます。環境、省エネ対策は、この現実を抜きには考えられず、これらのテーマもSIer様、サービサー様との連携が不可欠です。当社の取り組みの一例として、富士通様の運用管理ソフトと弊社の入出力機器管理ソフトを連携し、ICT機器の一元的な稼働状況やCO2排出量をモニタリングできる仕組みをつくりました。実証実験では、消費電力・CO2排出量・紙の消費量等の見える化と、それらに基づく環境対策の投入により、約30%程度の消費電力やコスト削減を実現しました。このように、お互いが持つ提供価値の連携により、お客様に最適なソリューションの提供に努めていきます。

 大澤(ブラザー販売) 省エネ、節約はもはや普遍のコンセプトだと思います。その点、当社のジャスティオはとてもコンパクトな機種で、このコンパクトさは同時に省エネ、省スペースにも貢献できるものと考えています。さらに自動両面印刷機能も含めて、こうした節約につながる機能をいかに掘り下げていくかが重要だと考えています。

 中尾(リコージャパン) 二つのキーワードがあると考えております。一つはMDS(マネージド・ドキュメント・サービス)でもう一つはクラウドです。MDSについては、PPC、LP、さらにプロジェクタも含め、融合したドキュメントの運用・管理サービスを展開できると考えています。もう一つのクラウドでは、一例としてマイクロソフト社とも提携し、リコーグループの販売・サポート体制とマイクロソフト社のクラウドサービスを組み合わせて、プリンティングも含めた企業のIT導入・活用を推進していきます。

富士ゼロックス
ソリューション・サービス営業本部
ビジネスパートナー営業部 部長
宮崎晋一氏



【担当領域】
国内のパートナーに関わるビジネスおよび国内のプリンタに関わるビジネスを担当する。





DocuPrint C3350
(A3カラープリンタ)
カラー:30ppm
モノクロ:30ppm
用紙サイズ:A3
価格(税別):17万8000円

DocuPrint 3100
(A3モノクロプリンタ)
モノクロ:32ppm
用紙サイズ:A3
価格(税別):12万8000円

【主力製品】
カラー機は「DocuPrint C」シリーズ10機種を展開、モノクロは11機種をラインアップする。主力機種は昨年4月に発売したコンパクトなA3カラーの「C3350」で全体の3割以上を占めるという。これに加えて「C3360」がカラー機の主力となっている。モノクロ機は昨年11月発売のA3機「3100」と「3000」が主力となっている。

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