今年に入って、著しい成長をみせているスマートフォン。ソフトバンク、NTTドコモ、KDDIの各キャリアは、2011年春モデルでスマートフォンのラインアップを大幅に増強し、携帯電話販売台数構成比をみるとスマートフォンが半数に迫っている。急激に高まっているスマートフォンの人気は、コンシューマ分野にとどまらず、ビジネスシーンで活用するという法人利用も急増しているのだ。各種の法人向けサービスを提供するITベンダーは、ここにきて、スマートフォンを使って業務の効率化を目指したソリューションの展開に本腰を入れている。各社の取り組みを紹介しよう。
直感的なタッチ操作に対応する大きめの画面や、充実したインターネット接続機能、さらにそういった特徴を生かした便利なアプリケーション群――。「スマートフォンを使えば、簡単に仕事の効率を上げることができる」と考えるユーザー企業が急速に増加している。
セキュアな環境を構築 スマートフォン利用を安全に
今年に入って、スマートフォンの法人利用が急増していることによって、ユーザー企業に向けたさまざまなスマートフォン用サービス/ソリューションの需要が高まってきている。
スマートフォンを社内ネットワークに接続して利用するにあたって、まず気になるのが、セキュリティ対策である。セキュリティを懸念するユーザー企業のニーズを受けて、セキュリティベンダー各社は、ウイルス感染を防ぐだけではなく、情報漏えい対策なども充実させた法人向けスマートフォンセキュリティサービスの展開を急いでいる。
例えば、モバイルサービスベンダーのいいじゃんネットは、社内LANに「カチャっと」設置するだけで、スマートフォンを使って社外からグループウェアなどを、セキュアな環境下で利用できるモバイルソリューション「CACHATTO」を提供している(32面参照)。このサービスは、導入にあたってシステムの一部を改良するなどの手間が発生しないので、営業担当者の人数が多く、IT担当者が少ない企業でも、簡単に導入することができる。
社外からの申請・承認でビジネスの動きを迅速に
スマートフォンの大きな利点は、ボディが小型・軽量で、通常型の携帯電話と同じくらいすぐれた持ち運びやすさを実現しながら、パソコンのように豊富な機能をもっていることだ。このことから、重くてかさばるノートパソコンを持ち運ばなくても、外出先からメールチェックやスケジュール管理などのパソコンワークができる。
大手ディストリビュータである大塚商会の子会社で、ソフトウェアを開発しているOSKは、「出張先から帰社すると、自席に申請書が山積みで承認処理が大変」といったユーザー企業のニーズに対応して、情報系システムと基幹系システムの機能を連携し、iPhone/Android端末などを使って外出先から申請・承認できるオプションを用意するサービスを提供している(31面参照)。このサービスを使えば、社内外を問わず、社員の行動を把握して、ビジネスを迅速に動かすことができる。
電波状態を簡単に測定・報告
高度な知識を不要に
このほかにも、スマートフォンの特徴を生かしたサービス/ソリューションがいろいろある。例えば、GIS(地理情報システム)を利用した位置情報にさまざまな情報を付加したサービスを展開するAgoopは、スマートフォンを活用して、誰もが電波状態の測定・報告をできるモバイルGISシステムを開発した(30面参照)。このシステムは、利用するために高度な知識が要らないだけでなく、電波測定に必要な機材もコンパクトなのが利点である。
ユーザー企業に向けたスマートフォン用サービス/ソリューションの市場が活発化している。スマートフォン用のサービス/ソリューションは、スマートフォンの快適な操作性を生かして、専門知識がないユーザーでも簡単に使え、ビジネスの効率化につながることが、普及のカギを握っているといえそうだ。
[次のページ]