BCP(事業継続計画)や災害対策、そしてビッグデータ──。IT業界で頻繁に登場するキーワードだが、それらと密接に関係するハードウェアがストレージ(外部記憶装置)である。蓄積した大量の重要データを安全に保存し、有効活用しようとする機運は、ユーザー企業・団体の間で確実に高まってきている。これから先、まだまだ伸びが期待できる商材だ。有力メーカーは、果たしてどんな戦略を描いているのか。EMCジャパンとNEC、そしてネットアップ。代表するストレージメーカー3社のキーマンにお集まりいただき、それぞれの方向性や販売戦略を披露してもらった。

(左より)ネットアップ 経営企画本部 本部長 ダニエル・ハンソン氏/NEC プラットフォーム販売本部 営業推進部長(ストレージ販売推進グループ) 須永宏明氏/EMCジャパン 執行役員パートナー事業本部 事業本部長 中山泰宏氏

司会・進行:『週刊BCN』副編集長 木村剛士

各社とも業績は好調 知名度不足が共通の悩み

 ──まずは、それぞれが担当しておられる業務を紹介してください。

 中山(EMCジャパン)
 パートナー事業を担当しています。EMCジャパンに籍を移す前も、複数のIT企業でチャネルビジネス(パートナーを通じた間接販売)に携わってきました。ストレージ専業メーカーは初めてですが、経験を生かしてパートナーとの連携強化を進めているところです。

 須永(NEC) NECに入社して以来、一貫して営業畑を歩んできましたが、6年ほど前から現職に就いて、ストレージの販売促進業務に従事しています。主力のストレージ製品「iStorage」を中心に、マーケティングプランの企画・実行と、販売パートナーのビジネス支援活動を手がけています。

 ハンソン(ネットアップ) 担当業務は多岐にわたっていまして、マーケティングとトレーニング、そして日本市場に適したローカライズ部隊を統括しています。7年ほど前にネットアップに入社して、現在の部署で2年。現職に就く前は、アジア・パシフィックでプロフェッショナルサービス部門を担当していました。

 ──ここで2011年を振り返っていただきたいと思います。東日本大震災が及ぼした影響や、業績について教えてください。

 ハンソン(ネットアップ)
 東日本大震災による悪影響はそれほどありませんでした。仮想システム・クラウドシステムの構築による需要が引き続き強く、震災後は事業継続計画(BCP)と災害対策(DR)を目的に、ストレージを求めるユーザー企業・団体が増えました。機種でいえば、ミッドレンジの「FAS3200シリーズ」が好調でした。当社の決算期は4月末で、今の時期に開示できる情報は限られているのですが、第1四半期と第2四半期の売上高は、ワールドワイドで前年同期比23%増加。日本法人も、7四半期連続で2ケタ成長を達成することができました。

 須永(NEC) 大震災とタイの洪水によるマイナスインパクトは多少あったものの、ハンソンさんがおっしゃったのと同様に、大震災後に災害対策関連の案件が急増しました。1ケタ違うといっても過言ではないほど伸びています。ユーザーのニーズは前半がバックアップ・DRで、後半はそれに加えて、エコ(環境対策)とコスト削減もキーワードになりました。業績の数字については、11年7月に発売した戦略機種「iStorage Mシリーズ」がとくに伸びて全体を押し上げ、11年10~12月は台数・売り上げともに、前年同期比130%ほどです。

 中山(EMCジャパン) まず業績からお話しすると、最新の数字では、ワールドワイドの売上高で前年比18%増、利益は30%増でシェアも伸びました。日本法人の売り上げも、前年同期と比べて大幅に伸びています。ユーザーの要望は、みなさんと同様で、震災後はBCPとDRのニーズが高まって、仮想化ソリューションも引き続き堅調でした。また、昨年は、11年1月に44機種の新製品を一気に発表して順次投入。もともとハイエンド製品が中心だったラインアップに、ミドルクラスとローエンドの製品を加えました。これは、大きな成果でした。新製品のなかでも、SMB(中堅・中小企業)を狙った戦略機種「VNX」「VNXe」シリーズは絶好調で、引き合い件数に当社の販売支援体制が追いついていない状況です。

EMCジャパン
執行役員パートナー事業本部
事業本部長
中山 泰宏氏
「ITの変革、トラスト、ビッグデータをキーワードに、パートナーと協業してソリューションをお届けします」

 ──皆さん、2011年の業績は好調だった、と。こうした好業績の裏には、パートナーとユーザーに向けた提案活動があったからこそと思いますが、どのような施策を進めてこられましたか。

 中山(EMCジャパン)
 パートナーとユーザーに対して、重複除外機能など、競争力が強い当社の技術をわかりやすく伝える地道な活動を展開したことと、パートナープログラム「Velocity」を刷新したことがトピックスです。製品が増えたことで、過去のプログラムではパートナーが売りにくくなった点がありましたから、新しいプログラムで改善しました。

 須永(NEC) 昨年は、6月にローエンドモデルの「iStorage M10e」と「iStorage M100」を発売し、後半にミッドレンジ機種の「iStorage M300」および「iStorage M500」の販売を開始しました。「M10e」と「M100」は、「Green IT AWARD 2011」の「グリーンIT推進協議会会長賞」を受賞し、エコ性能にすぐれていることが高く評価されました。NECは、他社に先駆けて早くから製品やサービスなどエコに関して取り組みを続けていますので、今回、公的な表彰を受けたことは、非常に大きな励みになりました。

 また、「iStorage」の特徴である「簡単」であることを、徹底的にアピールした年でした。どうもストレージは「難しい」というイメージが強いようで、例えば30台ほどサーバーを保有しているユーザーでも、導入や運用が難しいと思われて、ストレージは1台も導入いただけなかったケースもあります。でも、実際には難しくないですよ。NECの製品は、「導入の簡単さ」「接続の簡単さ」「運用の簡単さ」が強みで、それを知ってもらうために1年ほど前に技術認定制度を始めました。おかげさまで60社、270人の方が認定を受けており、今も増えています。少しはNEC製ストレージの簡単さを理解してもらえたと思います。

 現在、NECのパートナーは、全国に350社ほどいます。ただ、そのうちストレージを扱っているのはまだ90社程度。増えてはいるのですが、まだ25%強です。残りのパートナーにも、もっとNECのストレージを知ってもらいたいと思っています。

 ハンソン(ネットアップ) 昨年は、新たに新規顧客とSMBを開拓するための営業部隊をつくりました。また、サービスプロバイダ向けプログラムを推進し、登録プロバイダが1年で6社に増えました。このプログラムを通じて無償トレーニングや機材の貸し出し、テクニカルサポート、マーケティング、キャンペーンなどを積極的に行いました。ネットアップの営業担当者が、パートナーのソリューションを売ることが可能なことも特徴です。SIerに向けては専門のプログラムがあり、登録者数は8社になりました。当社は100%間接販売なので、パートナーに対する支援は引き続き注力していきます。

 さらに社内では、「Beyond Tokyo」というプロジェクトを推進しました。これは東京だけでなく、各地域のビジネスも伸ばしていこうという取り組みで、昨年11月に博多支店をオープンしました。大阪の拠点もSEを増員しています。パートナーから「カバー範囲を広げて欲しい」との要望があり、それに対応したかたちです。

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