【セッション2――設備・インフラ】
●どれが本当に有効な新技術かを見極める段階江崎 ここからは、メンバーも入れ替わって、後半の「設備・インフラ」セッションに移ります。まずはテクニカルな視点から、改めてレイテンシーへの取り組みを教えてください。

KVH
システム&テクノロジー本部
サービスストラテジー&デザイン部
データセンターグループ
マネージャー
市川秀幸 氏 市川 当社は金融のユーザーが多いので、何よりもレイテンシーを強く気にします。ケーブルの長さ、場所についてもかなり神経を使っていますね。
江崎 そうしたニーズに対応するため、具体的にはどんな取り組みをされていますか。
市川 ネットワーク機器をより速いものに入れ替えたり、距離を考えて構内のラックの場所も工夫したりしています。実際、ユーザーのなかには、自社のお客様と同じ階のこの場所にラックを配置してほしいというピンポイントの指定をしてくる方もいらっしゃいます。
大槻 レイテンシーを気にするユーザーはターゲットが明確で、とてもクリティカルです。こうしたユーザーは、海外と接続する海底ケーブルの長さから国内の経路まで、非常に細かく調査を行っています。
河田 当社には、そこまでレイテンシーにこだわるユーザーは今のところいらっしゃいません。セキュリティや立地の利便性などを重視される方がほとんどですね。

エクイニクス・ジャパン
営業本部 セールスエンジニア
大槻顕人 氏 山中 当社は「総合ITプラットフォーマー」を標榜しているので、特定のニーズに特化するよりも、いかに自分たちのサービスレベルを上げていくかが課題になります。例えば、クラウドが拡大して、遠隔地のDC間にまたがるシステムをあたかも一つの設備のように動かすケースがありますが、そのためにマシン同士の同期をどう取るかが問題になります。
また今後は、ユーザーが用途に合わせてクラウドを使い分けるマルチクラウドが進むと思いますが、それらのニーズに対応するために、DC間のレイテンシーを極力減らす取り組みを進めることになると思います。
江崎 次に、DC内の構成について考えたいと思います。クラウド時代を迎えるなかで、ケーブリングやネットワークへの取り組みはどうでしょうか。例えば、OpenFlowなど、新しいネットワーク制御技術をどのように評価しますか。
長谷川 現状はVLAN中心ですが、クラウドになると何千ものユーザーが入り、それごとにタグを切っていては、運用の手間もコストも大きな負荷になります。タグ数の制限も受けます。プロトコルの制限にとらわれず、自由にネットワーク設計ができるOpenFlowは、かなり有力な技術だと思います。
業界の動きをみると、今年はテスト期間で、パフォーマンスと信頼性が確認されれば、OpenFlowを核にプラスアルファの技術が加わるかたちで導入が進むでしょう。ただ、さまざまな新しい技術のなかでも、当社のユーザーにとって、どれが本当に有効なのかを検証していく必要があります。

関電システムソリューションズ
ITサービス事業本部
ITサービス統括部 部長
河田謙一 氏 久保 私もOpenFlowは有力な回答の一つだと考えています。ただ、技術が確立され、本格的な導入が進むまでの間は、例えば、軽量で環境に配慮したLANケーブルのエコパッチを使うなど、ケーブルの物理的な収容を工夫することで対応しているのが現状です。
●国や電力会社にDCの社会的な役割と重要性を理解してほしい江崎 では、次に電力問題ですが、具体的な取り組みを教えてください。
長谷川 当社では“見える化”を通じて、必要な取り組みやバランスを改めてユーザーに確認してもらい、適切なアドバイスをしています。
山中 北九州や建設中の新白河DC(仮称)は外気導入などで消費電力をかなり減らしていますが、悩みの種は古い都市型DCです。泥臭い話ですが、外に水をまく、風向板をつけるなど、地味な取り組みをしています。
もう一つの問題はユーザーの意識ですね。例えば米国ASHRAEが定義するDC内の許容/推奨温湿度レンジは広がり、サーバーメーカーも動作保証温度は35℃まで、一部のメーカーは40°Cでも大丈夫だといっています。しかし日本では、今でも23°Cプラスマイナス2°Cの維持を求めるユーザーが少なくありません。実際は、よほど温度耐久性の悪いもの以外であれば28°Cなど高めの温度設定でもまったく問題がないはずですが……。
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