クラウドサービスを立ち上げるためには、サービス基盤の構築をはじめ、開発費用やセキュリティ対策、サポートデスクの設置などに多額の投資が必要となる。「BCN Conference 2012」で登壇した日立システムズのネットワークサービス事業部ネットSaaS推進本部ネットワークドサービス推進第一部主任技師の佐々木慎一氏は、「コストをかけずにクラウドビジネスを始める方法」をテーマに講演し、この課題解決の方策を説明した。
<2012年10月18日開催「BCN Conference 2012 東京」レポート>
ネットワークサービス事業部
ネットSaaS推進本部 主任技師
佐々木慎一氏 日立システムズは、中小企業でよく使われているソフトウェアを月額レンタルで提供するデスクトップ型クラウドサービス(DaaS)として「Dougubako」を提供している。「中小企業で使われているアプリケーションは、デスクトップアプリが多い。これを、手間やコストをかけずにクラウド化するために提案したいのがDaaSだ。DaaSの利用によりデスクトップ環境をいつでも、どこからでも自由にアクセスできる」と説明した。
同社は、「Microsoft Office」をはじめとする約40種類のアプリケーションをラインアップに揃える。「Dougubako」への接続形態は、(1)既存のPCを一時的にシンクライアント化してVPN接続、(2)既存Windows PCからの接続、(3)スマートフォンなどのモバイル端末からの接続──の三つである。
Windows用のアプリケーションが動作するほか、バックアップの自動取得、ソフトのバージョンアップ、セキュリティ対策、リモートアシスタンスなどをすべて標準で装備する。「クラウドセンターに設置している『データ金庫』で、日々バックアップを取っている。もしデータを紛失しても、前日の状態に復活できる。セキュリティ面では、認証基盤だけではなくてデスクトップ環境にセキュリティソフトウェアを搭載しており、標的型攻撃にも対応できる」。こうした標準装備を通じて、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)はSaaS/クラウドサービスを短期間で立ち上げることができるという。
加えて、「一般的なクラウドは、開発費用やインフラ利用料、毎月の請求・収納費用などが発生するが、『Dougubako』ではこうした壁をいっさい取り払うことができる」と説明した。ISVは、仮想マシン上に構築したOSなどの動作環境にパッケージをインストール。日立システムズにパッケージを貸与して料金徴収を代行してもらい、月額費用を得る仕組みだ。「Dougubako」で提供するサービスは、日立システムズが運営するクラウドマーケットプレースである「MINONARUKI」で紹介する。
これまでの販売チャネルとコンフリクト(衝突)するのではないかという危惧に対しては、「うまく棲み分けできる」と強調した。パッケージは、一括で購入したい意思を持つ企業に向けて販売するもの。一方でクラウドサービスは、購入の意思がありながら金額面などで断念してしまっていた企業に販売できる機会を生むという。「クラウドサービスの立ち上げを支援する。『Dougubako』にぜひ関心を持っていただきたい」と呼びかけた。