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<クラウド特集>日本事務器 「強みをあたらしい形でより強くする」 クラウドと特定業種のソリューションを強化

2013/04/25 19:55

週刊BCN 2013年04月22日vol.1478掲載

 2014年2月に創業90周年を迎えるSIerの日本事務器(NJC)は、保健・医療・福祉施設や大学、企業に対するIT機器の販売とITサービスの提供を得意にする。全国をカバーする営業・サービス網を築き、手がけたシステム構築の実績は1万3000件以上。国内屈指のSIerとしての地位を築いた。節目の年を目前に控えた13年度(14年3月期)の戦略を、田中啓一社長に聞いた。

創業90周年に向けた合い言葉は「Change to Change」

田中啓一 社長
 2012年度(12年4月~13年3月)、国内のIT産業はほぼ横ばいで推移したが、田中社長はNJCの業績を「利益が伸びる予定」と見通しを立てている。「生産性が向上して利益率が上がったことと、年度末に売り上げがあまり偏らずに、各四半期でまんべんなくSIプロジェクトを獲得することができたのが12年度の成果」と手応えを口にした。

 収穫の多かった12年度、NJCが掲げたテーマは「Change to Change(変わるために変わる)」だった。13年度は、創業90周年を迎える記念の年度。田中社長は、節目の年に新NJCとしてスタートを切るために、1年前の12年度から変革を遂げるという意志を込めて、この言葉を打ち出していた。実現への戦略は、「強みをあたらしい形でより強く」。約90年の歴史のなかでつくってきた得意分野にリソースを集中して、ライバルSIerと差異化を図るというものだ。

 NJCが得意とする業種は、保健・医療・福祉施設と大学、企業では食品業だ。保健・医療・福祉施設と大学向け事業は創業期から強く、食品業はここ数年、リソースを集中して新製品を立て続けに発売し、優位な立場に立った分野だ。今年度は、保健・医療・福祉施設向けでは、数年前から中堅・中小クラスの病院からも旺盛な需要がある電子カルテシステムを引き続き拡販。一方、大学と食品業向けには、複数の新製品を投入する予定で、既存のパッケージソフト・システムのバージョンアップに加えて、各製品をつなげる製品を用意する。製品・サービスのラインアップを増強して、競争力を高める考えだ。

クラウド事業の強化を継続自社利用で得たノウハウを生かす

 「強みをあたらしい形でより強く」の方針の下、NJCが13年度に業種を問わず強化する領域がクラウドサービス事業だ。田中社長は、約5年前のトップ就任直後、クラウドを中期的に事業の柱に据える方針を示した。「IT機器の販売と保守、従前のSI事業だけでは、持続的な成長は難しい」(田中社長)という危機感からだった。「Google Apps」をGoogle Appsの正規販売代理店として再販したり、セールスフォース・ドットコムの「Salesforce」を使ったSFAソリューションや企業向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である「Salesforce Chatter」を販売する体制、実績、ノウハウを築いてきた。

 ライバル企業に差をつけるため、独自の付加価値を追求。まずは自社で導入して、メリットと課題を見つけ出し、付加するオリジナルソリューションを企画している。その一環として、メールシステムを「Gmail」に変え、スケジュール管理を「Googleカレンダー」に変更。SalesforceやChatterも導入してきた。Googleカレンダーへの移行では、データをスムーズに移すための専用ツールを開発してユーザーに提案。また、Chatterの導入では、その利用方法がセールスフォース・ドットコムに高く評価され、先進事例として公開されてPRにつながっている。

 「われわれのゴールはお客様の経営に寄与すること」(田中社長)。基幹業務に造詣のある情報系クラウドSIerとしての強みを生かし、こうした情報系クラウドサービスと長年手がけている基幹系システムを組み合わせて、経営に最適な付加価値を提供をする。

 また、田中社長はクラウドとモバイルは常にセットと考え、スマートデバイスを積極的に導入している。iPhoneとiPadは、営業担当者などの外勤者にはほぼ全員に貸与。利用しているなかで生まれた課題を解決するソリューションを企画して、ユーザーに提供している。「クラウドを求めるお客様は年々増えている。自社利用で使い勝手を検証し、NJCならではの価値に育てて提供する」と強調する。

海外進出に向けて始動東南アジアの市場調査を開始

 SIの実績が豊富な業種・業務事業と、クラウドビジネスを強化しながら、NJCは13年度に新たな挑戦を開始する。それが海外市場への進出だ。

 NJCの主要客層であるSMB(中堅・中小企業)は、ここ数年で海外に営業・開発拠点を設置するケースが増加。「海外拠点のシステム構築と運用も任せたいという声が多い。数年前から海外ビジネスを検討してきたが、13年度からは本格的に取り組む」と田中社長は海外事業を始める背景を語った。

 13年度は準備として、主に市場調査に費やす。ターゲットを東南アジア諸国に定めて、シンガポールとベトナム、タイのマーケットリサーチを開始した。「現地法人を設立するのが適切なのか、それとも現地のITベンダーと協業して営業・サービス体制を整えるのが適しているのか、国ごとに進出方法を決める」(田中社長)という。まずは海外に進出する日系企業向けITサービス事業を展開する計画だ。「クラウド時代だからこそ」のサービススタイルも模索している。また、「取り扱い製品・サービスもグローバル化する」(田中社長)考えで、今後は多言語に対応し、海外のニーズに応えられる製品を増やしていく。

 創業90周年に向けて、田中社長は攻めの姿勢で事業を展開する。1年後の新たなNJCの誕生に期待が集まる。
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外部リンク

日本事務器=http://www.njc.co.jp/