大塚商会は、5月28日、普及が進むモバイルデバイスやクラウドサービスなどの活用による経営力向上をテーマにしたカンファレンス「ビジネス骨太化計画第一弾 モバイルパワー2014」を開催した。A会場では、船井総合研究所チーフ経営コンサルタントの斉藤芳宜氏による営業力強化に向けた具体的なアプローチについての解説を皮切りに、サイボウズ、ソフトバンクモバイル、日本マイクロソフトなどが、各社のサービスや自社での活用事例などについて熱弁を振るった。一方、B会場では、大塚商会やOSKがタブレット端末を活用する仕組みづくりのポイントや、大塚商会のクラウドストレージ「たよれーる どこでもキャビネット」をはじめとするサービスの効果的な活用法など、すぐに役立つ実践的な情報を提供した。

クロージング力と質問力が「営業力」のカギ

 市場の成熟に伴い、営業活動はひと昔前よりも格段に難しくなっている。ほしいモノをひと通り手に入れ、現状に満足する顧客が増え続けているのだ。こうした環境のなかで、次の成長軌道を描くために、多くの企業で求められているのが「営業力」、なかでも「クロージング力」の強化だ。船井総合研究所経営支援本部チーフ経営コンサルタントの斉藤芳宜氏は、「契約の成立には、顧客への最後のひと押しが欠かせない。にもかかわらず、クロージング教育はこれまでほとんど実施されてこなかった。それによる受注の取り逃がしが、少なからず発生している」と指摘した。

 この課題に対して、斉藤氏は営業力向上のための10の秘訣を提示。とくにクロージング力の強化のために「最も効果的」と強調したのは、ムダな時間を費やさないということだった。

 「顧客に『もし契約するとした場合、何か問題がありますか』と質問して、その回答をもとに問題点を徹底的につぶす。こうした案件の場合は、往々にして受注に至らないことがある。次の案件に力を振り向けるためにも、得られた回答から早期に見切りをつけることも必要になる」と、斉藤氏は説明する。

 一方で、クロージングに至るまでに、顧客のニーズを踏まえた最適な提案は欠かせない。顧客のニーズを引き出すために、営業スタッフには質問力が求められる。具体的には、事前に収集した情報をもとに顧客の課題を推察して、営業トークによって深掘りをすること。斉藤氏は、「課題の全体像をつかむと、成約率が飛躍的に高まる。そこで、仮説検証のアプローチで顧客にさまざまな質問をぶつけて、課題の真の原因を突き止める。営業スタッフは、課題把握のために『なぜ』という疑問を絶えずもち続けなければならない」とした。

 「クロージング力」と「質問力」をどれだけ高められるか。そのレベルによって、案件の獲得率は大きく違ってくるという。

(左から)斉藤芳宜氏 船井総合研究所 経営支援本部 チーフ経営コンサルタント、
井川雄二氏 大塚商会 共通基盤プロモーション部

業務効率や業績の向上に向けた タブレット端末の賢い使い方

 調査会社のICT総研によれば、法人向けのタブレット端末は、iOS端末が約7割という圧倒的なシェアだという。「可搬性とセキュリティ、さらに操作性の高さ。iPadが多くの企業で採用される理由は、突き詰めればこの3点に集約される」と話すのは、大塚商会共通基盤プロモーション部の井川雄二氏だ。「しかし、iPadの利便性がいくら高くても、導入を成功させるにはちょっとしたコツが必要」と指摘した井川氏は、そのコツを「メールやスケジュール機能との連携」から「ドキュメントの共有」「社外からのリモートアクセス環境の整備」までの段階的な利用拡大だと説明した。

 一足飛びに利用範囲を拡大すると、ITリテラシーの低い社員からの思わぬ抵抗にあいかねない。大塚商会は、月額料金でメールやスケジュールを管理することができる「たよれーる Office 365」、オンラインストレージの「たよれーる どこでもキャビネット」など、これらのステップで活用できるソリューションの拡充に力を入れている。

 また、3年前にiPadを自社で導入した際には、効果検証に取り組んだ。井川氏は、「タブレット端末と各サービスの利用を通じて、プレゼンテーション力や顧客対応力の向上、ペーパーレス化など、多岐にわたる効果を実証できた。とりわけ紙資料の電子化については、もち運びの手間から解放され、しかも携帯する電子資料によって、さまざまな問い合わせに迅速な対応ができるなど、導入の効果は極めて高い」という。

 これらのノウハウを営業活動に生かすことで、すでに何社ものタブレット端末の導入を成功に導いている。

 例えば、営業力の強化を求めていたメーカーに対して、オンラインストレージを提案し、映像を交えたプレゼンテーションの仕組みを実現。顧客データや図面データへのセキュアなリモートアクセス環境の整備を通じて、不動産会社の業務効率化とデータ保護を両立した。

 井川氏によれば、今後はWindows 8を搭載したタブレット端末が注目だという。デスクトップパソコンからの移行が容易で、しかもパソコンの集約によってコストが削減できるからだ。法人向けタブレット端末の売れ筋がiOSからWindowsへと変わる日は、そう遠くないかもしれない。

モバイルを生かすデータの保管場所 安全なサービスの選択を

 法人でのタブレット端末の利用で課題の一つに挙がるのがファイル共有のためのデータの保管場所だ。実際に、ファイルサーバーの導入に必要なコストと手間を抑えるために、Google DriveやDropboxなど、無料のオンラインストレージサービスを利用する企業が増えている。しかし、問題は安全性と信頼性だ。無料サービスの多くは、トラブルによるデータ消失への保証がない。また、海外で運用されるサーバーにデータを預けることへの不安の声も根強い。大塚商会Webプロモーション部システムアナリストの川田晃矢氏は、「業務利用を考えるのなら、国内に設置されたサーバーで、確実なデータ保護が約束されたサービスを利用すべき。安易に無料サービスに流れると、手痛いしっぺ返しに合う」と指摘する。

 大塚商会の「たよれーる どこでもキャビネット」は安全性と信頼性という要求を高いレベルで満たすオンラインストレージだ。大塚商会が自社のデータセンター(DC)で提供することで、確実にデータを保護。さらにデータの保護や業務効率の向上を支援する多くの独自機能を備えている。例えばデータをサーバーから誤って削除したときでも、10日以内なら簡単に復旧できる。川田氏は、「オフィスに欠かせない複合機との連携によって名刺データなどの一括管理もできる。確認画面から直接電話をかけたり、メールを送ったりでき、スマートフォンやタブレット端末の利用を側面から支援する」とアピールした。

 大塚商会は、社内ファイルサーバーの置き換え利用にも対応できる自社基盤/Microsoft Azure基盤、双方のサービスを用意している。利用料は、約2TBの自社基盤「2Uハウジング」で月額7万6000円(税別)から(OS・ライセンス・回線コストなどは含まない)。Microsoft Azure基盤の「オンラインファイルサーバー」はさらに安価な月額5万4500円(税別)からと、同様の環境を自社で構築すれば「初期費用だけで約150万円」(川田氏)ということから、コストメリットの高さがわかる。データの保護レベルはどちらも高いが、自社基盤の24時間365日保守サポート、対してMicrosoft Azure基盤は地理冗長ストレージと、それぞれ特徴がある。

 大塚商会のサービスは、タブレット端末などモバイルデバイスを導入する企業にとって、有力な選択肢になる。川田氏は、最後に「当社はさまざまな要求にワンストップで対応することができる」と強調して、講演を締めくくった。

“毎日の3万件のデータを生かす”タブレット端末の活用術

 「タブレット端末の導入を成功させるには、社員の評価制度にまで踏み込んだ徹底した利用環境の構築と、データ活用を支援する組織の整備が欠かせない」。こう断言するのは、大塚商会トータルソリューショングループTSM課の渡邊賢司氏だ。

 大塚商会は3年前、すべての営業スタッフにタブレット端末を支給、営業効率を4%も改善させるなど、大きな成果を上げてきた。しかし、当初は不慣れなツールに後ろ向きの姿勢を示す社員も少なくなかったという。そこで渡邊氏がまず取り組んだのが、社員の評価制度にまで踏み込んだ徹底した利用環境の構築だった。社内の専門家による勉強会を繰り返し開催し、社員研修でも情報共有の重要性とタブレット端末の有効性をていねいに説明。社員の意識改革を促した。「タブレット端末の活用は、当社の重点施策。端末を使わないような社員には当然、ペナルティがあると周知することで、最初のハードルを乗り越えることができた」と振り返る。

 さらに工夫を施したのが、データ活用を支援する組織の整備だ。カタログなどのデータは、内容を定期的に見直さなければならないが、作業を現場に一任していたのでは、重複などによって効率が低下する。そこで、資料の更新などを行う支援部隊や、見積書の作成などを行う部門を新たに立ち上げた。渡邊氏は、「社外での業務支援のためには、社の内と外で行う業務を切り分けなければならないが、社外で行うには不向きな業務をサポートする組織の設置は、業務効率の向上にとって必然の判断」という。

 大塚商会の社内システムには、顧客のデータが日々3万件も登録されており、蓄積されたデータが93万社に上る。この3年間で、こうしたデータを確認するタブレット端末用のポータルを整備し、そこから得られるデータを利用して、管理職などが販促結果を分析している。まさに、データを活用する組織的な基盤が整っているのだ。最新情報の「見える化」を実現するタブレット端末などモバイルデバイスは、企業の業務改革を遂行するうえで、欠かせないツールとなっている。

(左から)渡邊賢司氏 大塚商会 トータルソリューショングループ TSM課 経営品質協議会認定アセッサー/日本アクションラーニング協会認定ALCコーチ、
川田晃矢氏 大塚商会 Webプロモーション部 システムアナリスト