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<サーバーメーカー座談会2015>クラウド時代に対応した ビジネスモデルの確立を目指す 次のテーマを見据えてパートナーとの連携強化へ

2015/12/24 19:56

週刊BCN 2015年12月21日vol.1609掲載

浜田 当社も、一方的にクラウド化へと進むのではなくハイブリッド環境が進むと考えています。そこで重要になるのが、クラウドとオンプレミスの組み合わせ方です。クラウドの柔軟性と価格、トータルでみたオンプレミスのコストメリットを、どうやって使い分けるのかをユーザー企業の方々に訴求していくことが、これからのビジネスにおけるポイントになると思います。また、業界のトレンドであるSDSやNFVなどSoftware-Definedのシステムが普及していくなかで、サーバー側が他のシステムを吸収していくのではないかと考えています。その結果、コンバージドインフラの方向性になっていくのではないでしょうか。

木村 Software-Definedのニーズは実際、当社でも大きく伸びています。その分、旧来のストレージは影響を受けていますね。

──ハイブリッド環境が進むからこそサーバーが必要になる、と。

浜田 パブリッククラウドでは契約上、ガバナンスのコントロールを心配されることもあるかと思います。蓄積された社内の運用ノウハウの活用、既存システムとの連携という点では、今後もオンプレミスが優位な面もあります。また、増え続けるビッグデータすべてをクラウドに預けることは現実的でなく、実際にはハイブリッド環境での使い分けで対応することになるのではないでしょうか。

 いい換えると、システムの全体設計をどのように進めていくか、という課題でもありますし、そこがSIerの方々の提案が生きる部分でもあると思います。そういう意味では、先日当社がマイクロソフトと発表したDell Hybrid Cloud System for Microsoft(クラウドとオンプレミス環境をマイクロソフトAzureのUIで一元管理できるハイブリッドクラウドソリューション)を活用すれば、簡単なクラウド管理インターフェースでハイブリッド環境管理が可能になります。お客様にとって価値のあるハイブリッドクラウドシステムを、パートナー様に最大限に活用し提案、販売いただくことで、お客様、パートナー様、デルがWin-Win-Winになれると考えています。

渡辺 オンプレミスは、お客様がフルカスタマイズしたいというニーズに最適です。また、クラウドの定義にもよりますが、AWSなどのパブリッククラウドに基幹系を含めた自社業務のすべてをのせるようなことはないといえます。実際、クラウドとはいいながら、DC(データセンター)でのハウジング、つまりラックや電源を借りているだけという形態はかなり多いです。SMBの方々を中心に一定のニーズがあるタワー型においても、セキュリティ対策や拡張性の観点で、これからは設置場所が自社からDCに移るという傾向は高まる可能性があります。そのなかで、サーバーメーカーとしてオンプレミス、クラウドそれぞれが適するシステム要件や、販売パートナー様がどうアプローチできるのか、などを考えていきたいと思います。

阿部 ソフトウェアを含めて特別なセキュリティを設定したいとか、安定したパフォーマンスを発揮させるにも、オンプレミスは向いています。一方、ビジネススタイルを自由に変えている企業には、クラウドが適しているといえます。しかも、クラウドはイニシャルコストの面で大きなメリットがある。しかし、長期間利用する場合のTCOを考慮すると、コストメリットを出せないケースも出てきています。

木村 安定していて拡張性を求めないシステムには、オンプレミスのよさが発揮できると思います。また、テスト環境にクラウド、本番環境にオンプレミス、最後のマイグレーション前にはクラウドへというように、ライフサイクルでの使い分けでコストを最適化する提案もいいかもしれません。さらに、情報システム部門の担当者からすると、クラウドはデータロスト時などに、責任の所在という問題も出てくるので、オンプレミスに残すべきものと区別しておく必要があります。

●マイナンバーの次のテーマ 「IoT」「東京五輪」

──ここからはフリートークとして、とくに取り挙げたいテーマがありましたから、皆さんから挙げていただけますか。

木村 これからマイナンバーが本格化し、IT業界にとっては需要を掘り起こす一つのテーマになると思いますが、その次に来るテーマは何なのでしょうか。

浜田 少し先の話になりますが、2020年の「東京五輪」は大きなテーマになると思います。

阿部 私も、東京五輪は大きなテーマと考えていますが、それまでにどんな技術、トレンドが生まれるかまで、今は具体的に想像することができません。他に、この数年のテーマを挙げるとすれば、映像処理やウェアラブルの活用などが考えられます。もちろんこれらのシステムのデータ処理にはサーバーが活用されると思います。

渡辺 直近では、「IoT」がテーマになるのではないでしょうか。最近では、ようやく(モノのインターネットという)注釈を付けずに一般誌やテレビのニュースなどでも取り上げられるようになってきましたし。 木村 セキュリティは以前から続いているテーマで、事故発生のたびに注目されますが、もはやバズワードとして使い古した感があります。また、SQLサーバーや次の「2008 EOS」では、さざ波を超える影響を期待するのは少々厳しいと考えます。

阿部 Windows 2000やNTの時からすると、インパクトはかなり小さくなってきています。テクノロジー自体がキーワードになることは、よほど大きなテーマでないとならないということでしょう。

日本ヒューレット・パッカード
木村 剛
サーバー事業統括本部
サーバー製品統括本部
事業企画本部
本部長


HPE Apollo 4200 System

これまでにないストレージ密度を提供する高密度サーバーシリーズ。HPE Apollo 4200 LFF(写真)はオブジェクトストレージ向けに2Uサイズに最大224TB、28本の3.5インチ(LFF)ドライブを、HPE Apollo 4200 SFFはビッグデータ・アナリティクス向けに最大90TB、50本の2.5インチ(SFF)ドライブをそれぞれ内蔵。
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