今やクラウド選択の基準はコストだけではない。導入後の運用管理、データ転送のコスト、可用性やセキュリティ、さらにはこれまで培ってきた経験・ノウハウを生かすことができるかどうかも問われる。セッションでは、「Oracle Cloud」を選択したユーザーが、オンプレミス環境のクラウド移行や新しいビジネス、サービスの立ち上げで、どのような効果を得たのか、各種の事例を紹介するとともに、Oracle Cloudの優位性をアピールした。

クラウドに期待するのは
コストとスピード

本多 充
執行役員
オラクル・デジタル

 「デジタル時代を勝ち抜くには!? ~事例に学ぶ、PaaS/IaaS導入の成功へのシナリオ~」と題して講演した本多充・執行役員は冒頭、「今は、ITやテクノロジーがユーザーのビジネスとより深く関わるようになっている。そのなかでユーザーがまず、望むのは7割を占めるとされるシステムの運用コストを下げること。クラウドへの期待もそれが一つで、もう一つの期待がスピード」だと強調した。実際、ネット系の企業は3か月で変化していく。いつの間にか市場へと参入し、ライバルになっている。「われわれも『本屋』が敵になるとは思わなかった」と語り、笑いを誘った。

 最後の三つめはデータから得る知見。マーケットや自社内に存在する多くのデータを集め、経営判断に役立てたり、新ビジネスを展開するためにもデータは極めて重要とした。

 次いで、本多執行役員はOracle Cloudの活用事例を紹介した。

 まず、コスト効果の事例で取り上げたのがe-Learningコンテンツを提供するアイスタディ。同社は、オンプレミスのOracleで運用していた学習管理システムの顧客向けトライアル環境をOracle Cloudへと移行。これにより顧客ごとのサイト構築に要する工数を大幅短縮し、迅速なサービス提供を実現。さらに、他のシステム環境のクラウド移行を進めている。これによりシステムコストの削減に加え、顧客に向けたサービスの価格低減を実現しているという。

 スピード面の事例で取り上げたのが生協の事業連合組織である生活クラブ連合会。同連合会は、従来、提携生産者と郵送でやり取りとりをしていた消費材の宅配依頼データ(CD-R)を、オラクルのクラウド・ファイル共有サービスを利用することで、リアルタイムかつセキュアに共有できるようになった。

 オラクルのパートナーでもあるUSEでは、多くの工数がかかっていた役所への社会労務関係の電子申請について、Oracle Cloudで人事給与システムとの連携を可能にする仕組みを構築。申請・届出業務を負担に感じていたユーザー企業に向け、作業負荷を大幅削減するサービスを提供している。

 データ活用の事例で紹介したのは、医療や研究所で使用する機器を扱う商社のアズワン。同社は100万点もの商品を扱い、取引先は4300社にも及ぶ。Oracle Databaseをクラウドで提供する「Oracle Database Exadata Express Cloud Service」を活用することで、在庫データとリアルタイムに連携し、販売店や自社の営業担当者がモバイル経由で在庫情報を参照できる仕組みを1か月で構築した。

 ある広告会社では、「Oracle BI Cloud Service」の多次元分析を活用し、難しい広告の値付けを容易にしている。

 宮城県・丸森町では、観光客や移住・定住を希望する人のデータ管理とIoTおよびデータ分析を活用することで、町内の人気スポット・経路の発掘を低コストで実現している。

 ソフトバンクが香川県・豊島で実施している電動バイクのレンタルサービスでは、稼働状態と位置情報をリアルタイムに把握し、利用者に充電の必要や船の出航時間などの情報を知らせることができる。サービス基盤にPaaSの「Oracle Cloud Platform」を採用し、わずか2週間で構築した。

オラクルのクラウドは
全カテゴリに対応する

 「オラクルはデータベースの会社であるが、今は、ITに関わるもののすべてをクラウドで提供している。お客様がやりたいことはさまざまであるため、SaaS、PaaS、IaaSの各領域で、あらゆるカテゴリに対応していくことをミッションにしている」と本多執行役員は力を込める。

 また、オラクルは日本のDB市場で50%以上のシェアをもつ。いい換えれば、多くのユーザーと認定技術者が日本中に存在しているということだ。それだけに「Oracle Database Cloudは、フル機能のOracle Databaseを安価に使用できることに加え、多くのオラクルユーザーがこれまで培ってきた技術・ノウハウをそのまま生かせることが大きな強み」とする。

 これまでは遅れていたIaaSの強化・充実も図っている。低コストと品質(高速)が特徴であり、オラクルは高価というイメージがあるが、コストはAWSの3分の1ですむという。

 最後に本多執行役員は、今後、クラウド・ジャーニー(クラウドの段階)について触れた。クラウドはシステムの「移行」から「拡張」、さらにデータ活用による「変革」へと進むとしたうえで、「SIerの方々にとって売り上げを拡大するには、お客様にどれだけのものを提供できるかにかかっている。オラクルのクラウドサービスはありとあらゆる拡張が可能で、さまざまなニーズに対応できる」とアピールした。