「Express Connect」でビジネスを円滑に

 ソフトバンクグループと中国屈指のECサイトを運営するアリババグループが共同設立したSBクラウドが今夏、日中両国間をつなぐ専用型ネットワークサービス「Express Connect」の提供を始めた。日系企業が懸念している通信環境やセキュリティをはじめとしたネットワークの課題を一気通貫で解決できるのが特徴。繁忙期だけの使用など、ユーザーの都合に応じて利用できる柔軟性や開通までの日数を大幅に短縮できるのも強みで、日中ビジネスを円滑に進めるためのツールとして活用できる。

日中のシステムを
「Alibaba Cloud」で一括管理

 外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2016年10月1日現在、中国での日系企業の拠点数は3万2313となり、2位の米国(日系企業の拠点数は8422)を大きく引き離している。中国はここ数年、同統計でトップになり続けており、日系企業にとって欠かせない国になっている。また、日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた中国の基礎的経済指標では、中国の実質GDP成長率は、14年が7.4%、15年が6.9%、16年が6.7%となっており、以前のような二ケタ成長とまではいかないが、世界トップレベルの成長を続けている。
 
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内山 敏
代表取締役兼CEO

 そのため、多くの日系企業が、アジアのなかで中国を重要視しており、SBクラウドの内山敏・代表取締役兼CEOは、「日本にとって中国は大きな隣人であり、依然として重要な市場であることに変わりはない」とみている。

 中国に進出する際、重要なのは、ビジネスの“足場”となるITをしっかり整えることだ。企業にとっては、日本と同じような環境にしたいところだが、言語や法規制、インフラの状況などは日本とは異なり、思うようにいかない場合もある。

 SBクラウドの二宮暢昭・営業部部長は、「中国に進出する場合、日系企業にとって情報のセキュリティリスクは大きな問題の一つだ。日本でも中国でも、重要な情報を守る対策は万全にする必要があり、この点を日本本社の経営層も、中国現地法人の総経理やIT部門担当者も気にしている」と指摘した。

 日本と中国でクラウドサービスを利用する場合、両国で二つのアカウントを取得し、別々に管理するのが一般的だ。この場合は、中国でトラブルが起きると、日本では管理できず、現地に対応を任せなければならない。

 迅速に復旧できればいいが、もしうまく復旧できなければ、売上などに大きな影響を与える可能性がある。有事の時に、日本のシステム部が手を出せないのは、企業からすると大きな不安材料になる。

 二宮部長は、「Alibaba Cloud は、日本のアカウントを一つ取得すれば、日本と中国のシステムを一括してコントロールができる」と説明。他社に比べて、より大きな安心感を提供できることがSBクラウドの強みとの考えを示した。
 
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安定した通信環境の確保が
成功のカギ

 人口約13億人の巨大市場に日系企業が進出する際、日中間でしっかりとした連携がとれるかは、ビジネス成功のカギとなる。そのためには、安定した通信環境の確保は欠かせない。

 最近では、コンテンツのリッチ化やハードウェアの高性能化により、3D CADのデータや動画などの大容量ファイルを送受信する機会が多くなった。さらに、打ち合わせなどでほぼ毎日、ウェブ電話システムを利用する企業も出てきた。

 ただ、不安定な回線を利用していると、ファイルの送受信に長い時間がかかったり、ウェブ会議の通信が途中で途切れたりすることがある。こうなると、うまくコミュニケーションがとれず、思いもよらぬトラブルにつながりかねない。

 インターネットを経由して日中間で通信した場合、通信時の遅延やパケットロスの発生はどうしても避けられない。セキュリティの問題もある。

 Express Connectは、閉域ネットワークで高いセキュリティを保ったまま、日中間のクラウドプラットフォームを安定的に接続することができる。SBクラウドのテストでは、東京―北京間でレイテンシー53.2msの高速通信と、パケットロス率0%のパフォーマンスを達成した。
 
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二宮 暢昭
営業部部長

 二宮部長は、「パブリッククラウドサービスの事業者のなかでは、専用型ネットワークサービスを提供している企業は非常に珍しい。インターネットのように回線が渋滞することはなく、日本にある顧客情報データベースに中国から直接、安全にアクセスすることも可能だ」と語った。

 そのうえで、手厚いサポート体制も紹介し、「もし利用中にExpress Connectの通信が途中で切れたら、速やかにつながるようにする。問い合わせには、日中英の3か国語で対応できる」と自信をみせた。

幅広いメニューを
数営業日で提供

 中国に進出している企業の業種は、製造業や卸売業、小売業、情報通信業など多岐にわたる。繁忙期は企業によって異なり、特定の時期だけ専用型ネットワークサービスが必要になる場合もある。

 SBクラウドは、企業の細かなニーズに柔軟に対応するため、Express Connectでは幅広い帯域のメニューを用意。通信量に応じて1か月単位で契約メニューを変更できるようにした。月額料金は、中国の事業者が提供するMPLSに比べて3割程度安くなっているという。

 納期の大幅な短縮化も実現した。一般的に専用型ネットワークサービスを開通させるには通常、数か月の期間を必要とする。一方、Express Connectは、申し込みから開通までの期間を数営業日に設定。開通手数料や工事費などの初期費用は不要で、導入企業にとっては時間とコストの両方を削減できる。

 さらに、Express Connectの提供開始に合わせ、10Mbpsプランの月額料金3か月分にあたる最大総額88万6800円が割引される「日本-中国特別キャンペーン」を始めた。キャンペーンの期間は12月25日までで、Express Connectの利用と同時に、月5万円以上のSBクラウドのサービスを契約することなどが条件となる。
 
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導入事例も続々、
ユーザーのビジネス拡大を後押し

 Express Connectが今夏に提供されて以来、徐々に導入事例も生まれてきた。導入した企業では、コミュニケーションの活性化や顧客満足度向上といった効果が出ており、Express Connectがビジネスの拡大に一役買っている。

 従業員100~1000人規模の外資系ゲームアプリ開発企業は、オンラインゲームの遅延を解消することを目的に、Express Connectを導入した。ゲーム中の遅延が原因で、ユーザーが定着しないことが課題となっていたが、導入後は遅延が解消。ユーザーの定着に加え、新規ユーザーの獲得にも成功した。また、従業員100~1000人規模のシステム開発企業は、インターネットの事情で日本と中国拠点間のウェブ会議に支障が出ていたため、Express Connectの利用を始めた。この企業では、時期によって会議の頻度が異なるため、帯域が自由に選べる柔軟性がExpress Connect導入の決め手となった。導入後は、ウェブ会議が問題なく開けるようになり、両国間の意思疎通がうまくいくようになった。

クラウドとオンプレも
安全に接続

 Express Connectは、日中間のクラウドプラットフォームの接続だけでなく、企業がデータセンター内に所有しているオンプレミスを直接つなげる「ダイレクトアクセス機能」も備える。

 このほか、アリババグループが展開する中国国内のクラウドプラットフォームや、世界各地のリージョンとの接続も可能。日本から中国、そして世界を見据えたビジネスでの利用にも向いている。

 内山代表取締役兼CEOは、「世界屈指の市場規模を誇る中国でのビジネスを制すれば、日系企業はより大きく成長できる。アリババグループとソフトバンクグループの強みを生かして、日系企業が中国をはじめ世界を舞台に事業展開できるよう、これからもユーザーに寄り添ったサービスを提供していきたい」と意気込みを語った。
 
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「中国における日系企業のIT利活用に関するアンケート」
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