ほとんどのビジネスパーソンが、何らかの業務で利用しているマイクロソフトの表計算ソフト「Microsoft Excel」。本来は個人向けのツールだが、扱いやすさから、共有ファイルを業務システムのごとく活用するケースも少なくない。問題はその共有ファイル。活用が進むほど、巨大化や複雑化など、さまざまなリスクを抱えることになる。サイボウズは、クラウドサービスの「kintone」によって、脱Excelによるチーム作業の最適化を提案。多くのユーザーから支持を得てきた。そうしたなか、グレープシティはkintone上でExcelライクなUI(User Interface)を実現する「krew」の提供を開始。脱Excelなのか、Excelへの回帰なのか。サイボウズはkrewをどうみているのか。サイボウズの伊佐政隆・kintoneプロダクトマネージャー、そしてグレープシティの山崎顕由・krewプロダクトマネージャに聞いた。

Excel業務を見直しませんか

――kintoneとして、脱Excelをどう捉えているのかについて教えていただけますか。
 
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サイボウズ
伊佐政隆
kintoneプロダクトマネージャー

伊佐 まず、kintoneについてですが、グループウェアとして提供させていただいています。サイボウズでは、チームワーク向上のためのツールは、すべてグループウェアと呼んでいます。ただ、チームワーク向上だけでは伝わりにくいので、それを分解して、効果・効率・満足・学習という四つのアウトプットに着目して説明しています。これらに貢献できるツールをグループウェアと呼んでいます。

――サイボウズでは、パッケージ型の製品やサービスもグループウェアとして提供しています。どのように区別していますか。

伊佐 従来は、「サイボウズ Office」や「Garoon」をお使いくだされば、チームワークが向上するとしてきました。ところが、チームワークがまんべんなく向上するというよりも、効果・効率にこだわるチームがあれば、満足・学習にこだわるチームもあります。チームごとに理想とすべきかたちが違うケースに対応するために、グループウェアをつくる基盤を提供しましょう、というのがkintoneのコンセプトなんです。

――脱Excelが目的ではないということですね。

伊佐 パッケージ製品などを導入しない場合、多くのお客様はExcelに頼っています。ただ、Excelは本来、個人向けであって、チームで活用するのは違うと思うんです。チームの情報共有でExcelを使っているなら、kintoneに乗り換えたほうが、もっと成果が上がります。チームワーク向上につながります。「Excelでやっている業務、もう一度見直してみませんか」と、問いかけをさせていただいているのは、そのためです。実際、多くのお客様がExcelから乗り換えています。

――チームとしては、Excelの利用にこだわっていたのではなく、致し方なくというところですね。逆に、Excelが選ばれたのには理由があるかと。

伊佐 ビジネスパーソンは、パソコンを開けば、だいたいExcelが入っていますから、環境が整っています。スキルとしても、Excelで文字を打てませんという人は、いらっしゃらない。誰でも使えて、パソコンに入っていて、メールに添付したら送ることができます。
 
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グレープシティ
山崎顕由
krew プロダクトマネージャ

山崎 誰でも使えるというのはすごく重要で、グレープシティは、ずっとUIを開発してきましたから、Excelを使っていたお客様が違うものを使い始めるには、われわれが思っている以上の抵抗感があると理解しています。Excelは大衆ツールです。皆さんがお使いのUIですから、そのUIを使い続けられる環境をkintoneにも、というのがkrewを立ち上げた最初のきっかけです。

――Excelの問題点については、どのようにお考えですか。

山崎 Excelは誰でも編集できて、触れるのはいいのですが、管理側ではコントロールできません。権限設定もそうですし、データを活用しにくいレイアウトになっていたり、各個人の端末にデータが保管されたりするのも問題です。データ更新の履歴も残りません。
――コストの面は、どうお考えですか。Excelに加えて、kintoneの利用料も発生するという点で、二の足を踏む理由になるのかと。

伊佐 kintoneを使って残業時間が一人1時間減っただけでも、費用面での効果があります。kintoneを使えば、残業時間は必ず減ります。

kintoneのいいところは壊さない

――kintoneに移行したら、Excelのよさがなくなるというユーザーの声は、これまでもありましたか。

伊佐 「Excelでは関数で計算ができた」というのは、よくあります。kintoneでも同様のことができるのですよ。ほかには、「せっかくExcelを高いレベルで習得したのに」という意見も。ツールが変わるとゼロスタートですから、さみしいと感じることもあると思います。

山崎 kintoneには、Excelを凌駕したメリットがあります。とはいえ、不得意な部分もあるので、それを補足するために、krewの存在意義があると考えています。

――kintoneの不得意な部分とは、どのようなところになりますか。

伊佐 Excelは、表形式の状態からデータを直接編集できます。kintoneも表形式でデータを編集できますが、更新には2クリック必要。Excelだったら、文字を直接入力してしまえば終了です。ほかには、同じデータを別のところにコピーする作業は、Excelのほうがすぐれています。

――そこをkrewで解決。

山崎 krewはExcelのように直接データ編集ができて、複数行のデータを一括編集することも可能です。保存ボタンを1クリックする必要はありますが、kintoneで1行ずつ編集するよりも、格段に効率が上がります。
 
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krewによる操作画面の一例

――まさに、kintoneのUIがExcelになった感じですね。

伊佐 個人で操作しやすいというのと、チームワークが上がっていくという要素は、どちらも実現できたら最高です。しかし、kintoneはチームワークを優先しているので、操作性向上の部分をkrewによってプラスアルファできるのは、すごくいい組み合わせだと思います。

山崎 krewは、kintoneのいいところを壊さず、Excelのよさを載せることを大事にしています。UIをExcelライクにしても、更新履歴や権限設定などのkintoneの機能はしっかり動くようにしています。

――Excelにこだわるあまり、kintoneを導入できなかったケースでは、ラストワンマイルではありませんが、krewが強力に後押しすることになりそうですね。

伊佐 krewによって、kintoneを使わない理由の多くが解消されました。Excelをイメージして、「あれ、できないじゃないですか」というのがなくなりましたから。

山崎 Excelっぽく使うとはいえ、裏で動いているのはkintone。Excelライクがきっかけでも、使っていくとkintoneのよさに気づくと思います。そのような補完的な役割をイメージしています。

――kintoneとkrewの組み合わせが、脱Excelの強力なソリューションになるということがよくわかりました。最後に、それぞれに期待することを教えてください。

伊佐 グレープシティさんは、Excelだけでなく、マイクロソフトさんのことをとてもよくご存じなんですよね。その経験やノウハウから出てくるサービスは、共通言語がしっかりできているので、すごく信頼感があります。今回のkrewは、kintoneのプラグインです。kintoneのプラグインというのは、カスタマイズファイルをパッケージングして、お客さんにサービスとしてお届けするというモデルで、プラグインにする仕組みはサイボウズでつくっています。それをうまく使っていただき、サービスとして本当に質の高いものを提供していただいています。今後は、krewを知ってもらう活動を、一緒にしっかりやっていきたいと思います。

山崎 kintoneとkrewは、とても相性がいいと思っています。自然といい方向に広がっていくといいですね。これまでのお付き合いを通して、サイボウズさんはパートナーを大事にされるというのを実感していました。それがkrew立ち上げの決め手のひとつにもなりました。グレープシティにとって新しい市場でも、様々な面で後押ししていただいています。今後もkintone向けのサービスを充実させていくので、よいパートナー関係を継続していきたいと思います。
 
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kintone上でExcelのように使えるkrew