神戸市に本社を置く放送受信関連機器メーカーのDXアンテナは、エレコムグループ内で唯一、オフィスビルやマンションなど建物設備の設計・施工・メンテナンスができる会社だ。同社がグループ会社に加わった2017年3月からは、同社の「放送技術」とエレコムがもつ「通信技術」を融合し、両社の製品や販路を活用してビジネスが拡大している。Wi-Fiから同軸伝送、放送受信などをグループのシナジーでワンストップに提供する体制ができたことで、各社の製品・サービスをクロス提案する機会が増えたほか、監視カメラや地域防災など新たなソリューションが生まれている。DXアンテナの長代輝彦代表取締役社長にシナジー効果などを聞いた。

4K8K対応で需要増

DXアンテナ
長代輝彦
代表取締役社長
 DXアンテナは、テレビ放送が開始された1953年に創業。以来、60年以上にわたり放送関連の各種アンテナやテレビ受信、CATV、情報伝送システム、セキュリティーの関連機器を製造・販売してきた。

 放送受信機器メーカーである一方、受信設備の調査・設計・施工管理までを担う。長代社長によれば、「全国31カ所に営業所・事業所があり、同一のサービスを提供できるため、施設や建物が新築される際には、当社にシステム設計に関する依頼が寄せられる」と、歴史あるテレビ受信関連機器メーカーとして力を発揮している。

 放送業界は、11年の地上波の完全デジタル化により、市場が激変した。「当社のビジネスも、これを境に売上高が乱高下した。だが、今後は4K8Kの時代が到来し、再び当社の出番がやってくる」と、長代社長は次の市場拡大に期待する。

 新4K8K衛星放送を見るためには従来と伝送帯域が異なるため、ブースターや分配器、テレビ端子などの受信設備は全て4K8K対応の製品を使用しなければならず、そういった新4K8K衛星放送のリニューアル市場の需要が見込める。現在は、ホテルやマンション、ショッピングモールなどからの案件が多い。こうした案件は、ビルやマンションを建設する大手ゼネコンやハウスメーカーへ受信システム設計を提供することで、機材の販売や施工管理を担っている。エレコムグループにとっては、このチャネルが新たな販路になる。

 放送受信機器の設計・施工管理までを行う同社だが、これまでは、Wi-Fiルーターなどの通信関連の敷設は断らざるを得なかった。ホテルや病院などは、放送関連だけでなく、通信関連の設計・施工管理を求めるケースが多い。
 

 エレコムのLANケーブルやスイッチングハブなどの通信機器を、放送関連と含めプラス提案できるようになり、加えて、製品を販売するだけでなく、設計から施工管理までを担うことで、競合他社に比べ付加価値の高い案件にすることができるようになった。DXアンテナは、エレコムグループに入ったことで「放送と通信の融合」を実現できたのだ。長代社長は、「エレコムのブランドもあり、顧客からの信頼は厚い。ハードウェアだけでなく、サービスを付加して市場を拡大する」と、グループシナジーを生かしたソリューション展開のアイデアが浮かんでくるという。
 

監視カメラや地域防災

 現在、グループ内では各社の技術やノウハウを持ち寄り、監視カメラに関連した新しいビジネスモデルを共同で立ち上げている。DXアンテナが得意とする建物関係では、監視カメラを導入するニーズが高い。グループのソリューションでは、ロジテックの堅牢タブレット端末などをクロス提案する。DXアンテナの役割は、同軸線、LAN、無線の接続に伴う設計・施工管理、保守サービス、カスタマサービスなどを担う。周辺機器やソフトウェアに設置関連のサービスを加えて、ワンストップで提供できることが他社との差別化である。

 また、DXアンテナは、兵庫県加古川市で総務省が進める災害情報伝達の実証実験に参画した。アナログから地デジに移行した際に「跡地」となった従来のV-Low帯域を使った通信(IPDC)を利用し、屋外スピーカーだけでなくテレビやデジタルサイネージなどのマルチメディアに対し、災害情報を通報する仕組みだ。同社の放送技術を生かし、この実証実験に貢献した。

 「この技術を利用することで、東日本大震災でも問題になった避難所のカギが開錠できないという課題も、避難所のカギを保管しているカギBOXの自動解錠が可能になり、誰が来てもすぐに避難所のカギの開錠が可能となる」(長代社長)と、全国の地方自治体に対し、緊急防災放送のソリューションとして提案を強化する。このV-Low通信を使い、民間需要に対してのソリューションも検討中だ。

 長代社長は、「得意とする建設業、ハウスメーカー、CATV局などのチャネルに対し、エレコムグループ各社がもっている商材の横展開を強化する」と語り、放送技術に加えてエレコムの通信関連商材が増えたことで提案の幅が広がっている点を強調する。