ハイパーコンバージドインフラ(HCI)は分散ストレージ方式となっているため、停電時の運用にはひと工夫を要する。制御用のサーバーを外付けにしないと、正しくシャットダウンできないからだ。これをカバーできるのが、オムロンUPS(無停電電源装置)用ネットワークカード「SC21」。本連載最終回となる今回は、SC21開発の経緯について、SB C&Sとオムロン ソーシアルソリューションズ(オムロン)の担当者に語ってもらった。

SB C&S  ICT事業本部MD本部技術統括部第3技術部1課 萩原隆博氏(左)と
オムロン ソーシアルソリューションズの事業開発統轄本部IoTソリューション事業本部事業統括部
情報インフラ営業グループの服部貴明氏

HCIはストレージ分散構成で、停電時に安全に止めるのが難しい

萩原(SB C&S) 2018年初めにニュータニックスが発表した「Software Choice」というコンセプトを受けて、SB C&SはNutanixソフトウェア用のハードウェアに「Dell EMC XC Core」を推しています。XC Coreはラインアップが豊富なので、お客様の多様なニーズにお応えすることが可能です。ただ、オンプレミス環境で必要となるUPSなどの周辺機器を含めたシステム構成でお見積もりをお客様にご提示すると、ご不満な意見をいただくことが多くありました。
 
SB C&S
萩原隆博氏

服部(オムロン) それは、UPSとXC Coreを組み合わせると構成が複雑になり、お見積もり金額が高くなってしまうからですね。
 
オムロン ソーシアルソリューションズ
服部貴明氏

萩原 その通りです。XC CoreとUPSを組み合わせる場合、HCIでは今までの3Tierのサーバーと同じやり方だけでは正常にシャットダウンができないのです。

 UPSの基本的な役割は、停電が起きたときにシステム全体を安全に停止させるまでに必要な電力をバッテリーから供給することです。安全に停止させるため、仮想マシンを順番にシャットダウンしていき、その後ハイパーバイザーが稼働する物理ホストをシャットダウンし、最後に共有ストレージをシャットダウンする、という3段階のシャットダウンを行うのが従来のやり方でした。

 ところが、HCIは各物理ホストにストレージが分散配置したシステム構成なので、仮想マシンを停止後、物理ホストを止める前に共有ストレージが停止してしまう仕様になっています。この場合、システム全体の停止を制御するためのUPS管理用のサーバーが仮想化され、XC Core上で稼働しているとシステムを安全に停止することができません。

 そのため、HCI環境ではUPS管理用のサーバーをHCIとは別に1台用意するしかありませんでした。しかし、“UPS管理サーバー”の分だけシステム価格が高くなってしまい、お客様から「停電の時しか使わないサーバーになぜそんなにお金をかけるのか」というお声をいただくわけです。

ネットワークカードがシステム停止用のスクリプトを自動実行

服部 SB C&Sさんから16年秋ごろにそのようなご相談をいただき、まずは当社の開発メンバーがSB C&Sさんから技術面での具体的な課題を伺うことから始めました。そして社内で検討した結果、“UPS管理サーバー”の機能をネットワークカードに組み込めば目的を達成できるという結論に至りました。給電容量もXC Coreのハードウェアであれば、現行機種で十分に足りることを確認しました。

萩原 XC Coreのシンプルさを損なわず、かつ電源管理のための物理サーバーを不要にするというこの2点の課題を解決する秘訣は、UPS搭載のカードということですね。

 今までの提案では、“UPS管理サーバー”にスクリプト内のコマンドを順次実行させることによってシステムを安全に停止させていましたので、それと同じスクリプトを作ってネットワークカードに書き込んでおけばいいということになりますね。

 ただ問題は、そのスクリプトでどのようなコマンドをどのようなロジックで実行していくかということだと思います。XC CoreにはXC Coreのシャットダウンのお作法がありますので、正しく動くスクリプトを作るにはそれなりの知見が必要です。

服部 当社はUPSのビジネスを30年以上手掛けていますが、正直なところ、HCIについては知見や経験が十分ではありませんでした。SB C&Sの技術メンバーの方にお力添えをいただきながらカードの設計・開発を行い、「Nutanix Ready AHV」の認証も無事に取得することができ、18年7月に「SC21」という製品名でネットワークカードの販売を開始しました。
 
オムロン無停電電源装置(UPS)用ネットワークカード「SC21」

萩原 売れ行きも好調のようですね。

服部 ネットワークカード本体に3年の保証を付けたこともあり、HCI向けのUPS販売台数は以前の3~4倍、引き合い件数は10倍ほどになっています。SB C&Sさん主催のセミナーにゲストとして登壇させていただくことも多いのですが、セッション終了後に「こういうものを待っていた」というお声をいただくことも増えてきましたね。

萩原 ディストリビューターとして、われわれも“XC Core+オムロンUPS+SC21”の組み合わせを強くおすすめしています。この構成ならシステム停止制御用に外出しするサーバーは不要になり、XC Coreならではのシンプルさをそのままに、コストパフォーマンスの高さが損なわれてしまうこともありません。

 SB C&Sには「NTC(Nutanix Technology Champions)」に選ばれた技術者が3人在籍しています。また、仮想化やHCIビジネスにかかわる営業・プリセールスのエンジニアが約50人在籍していて、パートナー向けに提案から導入、運用にかかわるところまでさまざまな情報提供や技術支援を行っています。XC Familyを停止する手順書のような導入や運用にかかわるホワイトペーパーなどの技術情報も提供しているほか、PoC用に評価機の貸し出しや、お客様に搬入する前のキッティングと初期設定を有償で行うといったサービスも実施しています。

 HCIの導入に当たって必要となるネットワークやセキュリティー、バックアップなどの周辺製品やHCI上で動作するシステムを考慮したマルチベンダーのソリューションにつきましてもぜひご相談いただきたいです。
 
【解説】
ニュータニックスとは……ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品「Nutanix」を提供する。HCI市場をけん引するトップベンダー。グローバルで1万1000社を超える顧客を持つ。2009年に米国サンノゼで創業、13年には日本法人のニュータニックス・ジャパンを設立し、事業を展開している。