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「知らなかった」では済まされない。対策急務、中小企業対象の罰則付き残業規制

2020/03/09 13:13

【SMB向けビジネスの必須科目9】連載『SMB向けビジネスの必須科目』では、全国のSIerやIT販社が、ユーザー企業の変革をビジネスパートナーとして支えるために抑えておくべきビジネスやITのトレンドを「キーワード解説」の形で紹介していく。第9回は、対策が急務になっている中小企業対象の「罰則付き残業規制」を紹介する。

「中小企業にも「罰則付き残業規制」」

 昨年4月、長時間労働の是正を目的とした働き方改革関連法が施行され、時間外労働の上限が法律に規定された。まず大企業を対象として残業の上限規制が開始されたが、1年間の猶予期間を経て、2020年4月からはいよいよ中小企業も対象となる。

 時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも年間720時間以内、時間外労働+休日労働は月100時間未満かつ2-6カ月平均で80時間以内、月45時間以上の時間外労働を行えるのは年間6カ月までといった細かい制限がある。

 違反した事業主には「半年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」の罰則、企業名の公表などのペナルティが課される恐れがある。罰則は労使間の合意があっても、すなわち「特別条項付きの36(サブロク)協定」を結んでいても適用される。

 さらに、労働安全衛生法によって実際に時間外労働をはじめ従業員の労働時間を“法令に則って”正確に把握し、記録を3年間保存する義務が生ずる。それは当然、時間外労働の上限に達していないという客観的な証としなければならないため、残業管理の仕組みが必要となる。

 その際にITの活用は欠かせない。タイムカードの打刻やExcelなど手作業によるアナログな管理体制の企業は、デジタル管理できる勤怠管理システムの導入は必須であり、システムを導入している企業も他の機能を追加導入する必要が出てくる。

 例えば、時間外勤務時間の予測、休暇取得状況、社員の負荷状況を可視化するダッシュボードや時間外労働を申請・承認する機能、規定の水準に達しそうな従業員とその上司にアラートが飛ぶような仕組みなど。PCをロックして強制的に業務を終了させるシステムもある。

 ただ、時間外労働の禁止を指示したり管理を厳しくしたりするだけは、残業そのものは減らない。無駄を省き、生産性を高める仕組みを導入する必要がある。テレワークやモバイルワークを前提とした端末の整備ならびに業務アプリケーションのクラウド化、仮想デスクトップ、Web会議システムやビジネスチャット、インサイドセールスツールなど働き方に柔軟性を持たせるアプローチは多数存在する。

 また、新型コロナウイルス感染症問題で今、確実に「自分ごと」としてリモートワークやBCPといったところに注目が集まっている。IT投資どころか存続の危機だという中小企業が多いかもしれないが、ITベンダーもこれを機に、当面の法対応にとどまらずに働き方の適正化を支援していくというスタンスで、環境整備を促していくべきである。

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