モノづくりにおけるQCD(品質・コスト・納期)を改善するのに欠かせないCAE(コンピューター利用の工学支援システム)――。CAEを高速に実行させるには、高速プロセッサーを搭載したサーバーが必要だ。今、CAEソフトウェアを使うのに適したサーバーとプロセッサーは何か。アンシス・ジャパン マーケティング部の土屋知史氏、日本AMD ソリューション・アーキテクトの中村正澄氏、デル・テクノロジーズ データセンターソリューションズ事業統括製品本部シニアプロダクトマネージャーの岡野家和氏の3人に、最新の状況とお勧めの商材を聞いた。

複雑化・高度化するCAEニーズに最新の高速プロセッサーが応える

――Ansysは、さまざまな領域向けのエンジニアリングシミュレーション用のソフトウェアを開発している企業として世界的な知名度があります。

土屋 はい。当社は50年以上にわたってシミュレーション専門でやってきました。お客様の数は全世界で5万5000社、オフィスも世界40カ国75カ所にあります。対象とする領域も広く、お客様の多様なニーズに応えるために、構造解析、流体解析、電磁界解析、半導体解析、光学解析および3D設計などのさまざまな分野向けに複数のシミュレーションソフトウェアを用意しました。また、自社だけではカバーできない技術分野についてはAMDやデル・テクノロジーズなどとオープンなパートナープログラムを結んでいます。
 
アンシス・ジャパン
マーケティング部
土屋知史氏

――エンジニアリングシミュレーションの世界では、今どのようなことがトレンドになっていますか。

土屋 まず、複雑化と高精度化が進んでいます。かつては個々のパーツや現象の単位で解析すれば良かったのですが、現在では製品の全体を解析することによって全体としての動きやバランスがどうなるかをチェックすることが重視されるようになりました。試作レスを実現するために小さなメッシュによる高精度のシミュレーションが求められているのは従来と同じですが、それが製品全体の高精度シミュレーションへと大規模化・複雑化しているのです。

 また、限られた時間で多くの設計バリエーションを検証したいというニーズも顕著です。製品のバリューを高めるには、パーツごとの部分最適化ではなく、製品全体を最適化することが不可欠。そこで、解析の対象となる設計案の数がますます膨れ上がっています。
 
国内CAEユーザーが挙げるCAE活用のメリット トップ3
【デル・テクノロジーズ調べ】

――より多くのパーツを高精度で解析し、多数の設計バリエーションを解析するとなれば、計算量は膨大になります。

土屋 そこで、CAEで高性能コンピューティング(HPC)を実践している企業では高速サーバーや高速プロセッサーに対する投資熱がこれまでになく高まっています。計算のスピードが倍になれば、単純計算では、2倍複雑な解析をしたり、2倍の設計バリエーションを検証したりできるからです。同じ理由から、より多くのコアを搭載したプロセッサーを選択したり、多数のサーバーで構成される大きなシステムを選んだりする企業も増えています。
 
シミュレーションにおけるゴールドスタンダード

――どのようなプロセッサーが高いパフォーマンスをあげていますか。

土屋 例えば、当社の流体解析ツール「Ansys CFX」を使って、5種類のベンチマークモデルでプロセッサーの性能を比較してみました。Intel Xeon Gold 6258R(28コア)を基準値1.00としてAMD EPYC 7003シリーズのスピードを比べたところ、AMD EPYC 75F3(32コア)は5ベンチマークモデルの平均で2.12倍のパフォーマンス。この75F3はスケーラビリティも高く、8ノード構成の場合、ノード数より多い8.93倍ものスピードが出ます。

 また、2022年3月に発表されたAMD 3D V-Cache付きのAMD EPYC 7773Xで当社の流体解析ツール「Ansys Fluent」を走らせると、3D V-CacheなしのAMD EPYC 7763対比で1.04~1.8倍のパフォーマンスを発揮し、シングルノードと8ノード構成の比較では最大10.9倍ものスケーラビリティが得られると分かりました。
 
「Ansys CFX」のパフォーマンスとスケーリング

L3キャッシュ容量が3倍になったMilan-XがCAEソフトを速く動かす

――CAEソフトウェアはAMD EPYC 7773Xで使うのが良さそうです。

中村 Ansys様に正しく評価していただき、嬉しく思っています。7773Xが含まれるシリーズはMilan-Xという開発コードで設計と開発が進められ、22年3月の発表の際に正式名が「AMD 3D V-Cacheテクノロジー搭載EPYC 7003シリーズ・プロセッサー」となりました。

 正式名からも分かるように、21年にリリースしたMilan(開発コード)シリーズとMilan-Xの最大の違いは「3D V-Cache」の部分にあります。Milan-Xのチップは2階建てになっていて、1階部分は従来のMilanと同等のプロセッサー、2階部分はスタティックRAM(SRAM)製のL3キャッシュという構成。Milanではダイ中央部に最大256MBのL3キャッシュが配置されているのですが、Milxn-Xではその真上に512MBのL3キャッシュを貼り付けることによって、チップあたりのL3キャッシュの容量を768MBにしました。これは、従来容量の3倍にあたります。
 
日本AMD
ソリューション・アーキテクト
中村正澄氏

――L3キャッシュを2階建てにするのは技術的に難しいのですか。

中村 貫通ビア(TSV:Through-Silicon Via)を使ってチップを3D化するというアイデアは10年以上前からあり、多くの半導体メーカーが実用化を目指してきました。当社が他社に先駆けて量産に移ることができたのは、はんだボールを使ったマイクロバンプではなく、ダイレクト銅ボンディングで接続する方式を採用したためです。その結果、9μmという狭いピッチ(電極間隔)を実現でき、メモリと大容量L3キャッシュとの間でデータを高速に読み書きできるようになりました。
 
Superior CFD performance on 3rd Gen AMD EPYC processors with AMD 3D

――L3キャッシュの容量を増やすと、なぜソフトウェアのパフォーマンスが向上するのですか。

中村 L3キャッシュはメモリよりも高速にデータの読み書きができるユニットです。そのL3キャッシュの容量を大きくすると、これまでL3キャッシュに入り切らなかった大きなデータについても高速に読み書きできるようになります。その結果、従来よりも大量のデータを一度に取り扱えるようになり、処理スピードの低下が避けられるのです。

――Milan-Xには四つのモデルがありますが、それぞれはどのようなソフトウェアに適するのですか。

中村 Milan-Xにはコア数の違いで7773X(64コア)、7573X(32コア)、7473X(24コア)、7373X(16コア)の4モデルがあります。これらのうち、CAEの数値流体力学には24コアの7473X、同じくCAEの有限要素法解析や構造解析には64コアの7773Xか32コアの7573Xを使うと良いでしょう。一方、半導体や電気回路をレジスター転送レベル(RTL)で設計するためのEDAソフトウェアは、16コアの7373Xか24コアの7473Xで十分です。

――ということは、Milan-Xの加速効果はCAE以外のエンジニアリングソフトウェアにも効くわけですね。

中村 当社は、半導体設計に使われるEDAソフトウェアを開発・販売されている企業ともエコシステムを築いています。具体的には、Cadence Design Systems、Siemens EDA(旧Mentor Graphics)、Synopsysの各社のEDAソフトウェアは当社の3D V-Cacheテクノロジーに対応しており、すぐに活用していただくことができます。
 

パフォーマンス・価格・信頼性に優れるDell PowerEdgeサーバー

――そのように高速なMilan-XをCAEソフトウェアで使うためのサーバーを提供するのが、デル・テクノロジーズさんなのですね。

岡野 当社の調べによれば、国内のCAEユーザーは「開発期間の短縮」「コスト削減」「品質の向上」がCAE活用のメリットだと評価しています。それと同じように、CAEを稼働させるための基盤となるサーバーには「パフォーマンス」「製品価格」「信頼性」の3点が求められているのではないでしょうか。

 Dell PowerEdgeサーバーのパフォーマンスと製品価格については、日経コンピュータの顧客満足度調査2021-2022(21年9月2日号)のPCサーバー部門とパートナー満足度調査2022(22年2月17日号)のサーバー部門の両方で1位を獲得していることが何よりの証になると思います。PCサーバー部門では「総合満足度」「性能・機能」「コスト」の3項目で断トツの1位でした。

 また、Dell PowerEdgeサーバーは、障害率や品質に特に厳しい日本の通信キャリアや金融機関にもハードウェア基盤として採用されていますし、製造業のお客様の基幹系システムの公開事例もあります。ですから、当社はサーバーの信頼性についても絶対の自信を持っています。

――Dell PowerEdgeサーバーはMilan-Xへの対応も非常に早かったという印象があります。

岡野 AMD 3D V-Cacheテクノロジー搭載EPYC 7003シリーズ・プロセッサー が発表されたのと同じ日に、当社はMilan-Xを搭載したDell PowerEdgeサーバーの工場出荷を開始しました。21年2月に登場したMilanと今回のMilan-Xはソケット互換ですので、適切なエンジニアリング工数を適切な時期に投入することによって、BIOSを書き替えるだけでMilan-Xに対応することができました。当社はAMDと密接な連携を保っており、本社の開発エンジニアも相互にさまざまなやり取りを日常的に行っています。ですから、Milan-X対応の準備にも早期から取り掛かることができました。
 
デル・テクノロジーズ
データセンターソリューションズ事業統括製品本部
シニアプロダクトマネージャー
岡野家和氏

――最新のMilan-X搭載PowerEdgeサーバーにリプレースする前に、手持ちのCAEソフトウェアがMilan-X環境でどれだけ速くなるか試してみたいという企業も多いのではないでしょうか。

岡野 はい。すでにMilan-Xの検証を終えたお客様、検証中のお客様、検証用にサーバーをご発注いただいたお客様など、さまざまですが、やはり製造業中心です。当社は既存のEPYC搭載PowerEdgeユーザー様向けにMilan-Xのプロセッサー単体の販売もしていますので、ぜひお声がけいただければと思います。また、CAEを含むHPC全般の検証環境としてはUS本社に「HPC and AI Innovation Lab」と呼ばれる大規模環境があり、日本からもネットワーク経由で活用しています。
 
AMD EPYC搭載「PowerEdge」の採用数と用途が増加中

Milan-Xのハイパフォーマンスがサーバーの投資対効果を高める

――最後に、リセラーやSIer向けのメッセージを一言お願いします。

土屋 最新のサーバーに買い替えたほうが計算できる量が増えることはよくあります。Milan-Xなら従来比2倍、3倍のパフォーマンスも夢ではありませんから、投資対効果(ROI)は確実に出るでしょう。

中村 AMD 3D V-Cacheテクノロジーは、当社が長い年月をかけて開発した最新の技術です。今後のCPUでもこの技術が鍵になりますから、ぜひ試していただければと思います。

岡野 CAE基盤のサーバーを検討される際は、従来のシステムの後継モデルで踏襲されるのではなく、最新テクノロジーによるベストなものを選ばれることをお勧めします。リセラーやSIerの皆様も検証をした上で、ぜひお客様に提案していただきたいと思います。
 
 
 
様々なCAE解析シミュレーション用途に最適! AMD搭載サーバーに関するアンケート
https://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_dell0627/