Special Issue
シュナイダーエレクトリック AI利活用のインフラを支える広範なソリューションを提供 パートナーとの連携強化で、さまざまな市場にリーチする
2025/06/26 09:00
週刊BCN 2025年06月23日vol.2064掲載
AI利活用に不可欠となる高度なDCインフラ管理
――生成AIの利用が急拡大し、当初のクラウド型AIの利用だけでなく、自社の環境で運用するオンプレミス型AIやエッジAIの利用も大きく増加しています。特に、AIのインフラを自社運用する上で、どのような課題がありますか。澤田 生成AIの利活用を支えるGPUサーバーは、一般的なサーバーに比べて10倍以上という桁違いに大きな電力を消費します。そのため発熱量も非常に大きくなるので、GPUサーバーを導入するには高い電源供給力と高度な冷却設備を備えたサーバールームやDCが必要になります。

澤田国治 本部長
このような環境で求められるのが、DCインフラ管理(DCIM)のソリューションです。IT機器自体の管理ツールは多くのベンダーが提供していますが、AI分野におけるインフラ管理においては、ラック内の温度や湿度、電源や空調機器の状態の把握など、基本的なデバイス監視の枠を超えた広範かつ緻密な管理が不可欠になるためです。DCIMは、IT機器を支える電源や空調システムなどのサポートインフラを主な対象として、状況をきめ細かく確認することができるため、ダウンタイムにつながるような問題を事前に把握することで、プロアクティブな対応を可能にし、エネルギー効率の向上に貢献することができます。
――発熱への対策(クーリング)では、どのようなソリューションがありますか。
澤田 2024年に冷却設備メーカーの米Motivairを買収しました。同社はサーバーの効率的な冷却を実現するため、チップの直近で冷却水を供給する装置を製造しています。この買収により、チップレベルからサーバー自体やラック、そしてサーバールーム全体に至るまで、熱の問題を解決できる全てのラインアップを取り揃えることができました。
また、クーリングやDCIMだけでなく、受変電設備、単相および三相のUPS、ラック、PDU(電力分配ユニット)まで、エンドツーエンドでのインフラソリューションを持ちAIの利活用を支えるトータルソリューションを提供できます。1ベンダーで電力供給と冷却の全レベルの製品をラインアップするのは当社だけです。

豊富な知見を生かし最適環境を実現 サステナビリティーで世界トップの評価を獲得
――グローバル展開する企業ならではの知見を、サービスやソリューションにフィードバックされているようですが。澤田 当社のもう一つの強みが、グローバルにおける豊富な知見を持つことです。サーバールームを含めて長年のDC向けソリューションの実績をベースに培ってきた高い信頼性があります。
例えば、GPUサーバーを導入しても、インフラがAI Readyの状態でないとパフォーマンスを十分に発揮できません。特に、電源供給力と冷却設備は導入後の予測がとても難しく、かつ、後々の変更は大変です。そこで、ラックに搭載するサーバーは何台になり、電力消費がいくらで、この程度の発熱量になるので、空調の配置をこのようにしよう、といったシミュレーションを設計段階で実施しておくことがとても重要になります。このシミュレーションにも、当社のDCIMはとても有効に機能します。
また、通常のDCやサーバールームの場合、空気で冷却する「空冷方式」が主流ですが、発熱量が格段に大きいGPUサーバーの場合は、液体を使う「液冷方式」の導入が必要で、空冷と併用する冷却設備の導入になります。こうした冷却システムの設計にも、当社は多くの知見があり、コンサルティングと合わせて、お客様に合わせた最適な環境を構築することができます。
24年3月には米NVIDIAとの戦略的提携を発表しました。提携を通じて業界初のAIデータセンターリファレンスデザインを導入し、DC環境内でAIを導入および運用するための新しい標準を確立することを目指しています。
――製品自体の持つ優位性だけでなく、環境や社会に対して強い配慮をしている企業としても世界的に高い評価を受けているそうですね。
澤田 はい。毎年1月に世界経済フォーラム(WEF)が開催する年次総会にあたるスイスのダボス会議には、世界各国の政治家、実業家、学者などグローバルな課題に大きな影響力のある人たちが大勢集まることで知られています。会議の目玉の一つが、出版社のカナダCorporate Knightsが発表する「世界で最も持続可能な企業100社」のランキングで、企業の環境、社会、ガバナンス(ESG)の取り組みを評価したものです。当社は今年、2度目の1位を獲得し、グローバル100の中で1位を2度獲得した唯一の企業となりました。また、過去14年間でトップ10に7回選出されており、電気機器製造業界の中では唯一の記録です。
このほかにも、TIME誌の「World’s Most Sustainable Companies of 2024」でNo.1に選出されるなど、当社の取り組みは各方面から高い評価を受けています。
パートナーと連携して市場開拓 コンテナ型DCのニーズが拡大
――AI分野への注力をはじめ、どのようなビジネス展開を進めていかれる方針でしょうか。澤田 当社は、パートナー様経由のビジネスが多くを占めています。パートナー様はそれぞれに戦略をお持ちなので、その戦略にアラインし、これまで以上にプロアクティブな提案をお客様にしていけるようサポートすることを基本に据えています。その上で、今年4月にはパートナービジネス開発部を新設しました。その狙いは、今まで当社がリーチできていなかった市場やエリアのお客様にアプローチすることで、パートナーエコシステムの強化を通じて、パートナー様と一体となり幅広い製品展開を推進していきます。AIに対するニーズは幅広い地域に拡大しているので、特に地方については、地域に根付いたパートナーの方々との連携強化を進めたいと考えています。
お客様のニーズに柔軟な対応をしていくには、IT分野だけでなく工場などOT分野のパートナー様も含めた対応が不可欠と考えています。今後は両者の融合が進み、ニーズも多様化していくため、当社でもITとOT双方のパートナー様とのリレーションを強化して、ニーズにお応えしていきます。現に、欧米ではITとOTとの連携が進んでいます。当社はグローバルのリーディングカンパニーとしてその知見を有しており、日本にもいち早くトランスファーされてくるので、他社に先駆けてソリューションを展開できます。パートナー様とそのナレッジを共有し、ビジネス拡大に貢献していきます。
――AI分野における新しい動きや事例があれば教えてください。
澤田 AIに対するニーズの拡大で、注目を集めているのがコンテナ型のDCです。GPUサーバーを導入したいが、既存のDCやサーバールームには熱対策や電源の問題で設置できないケースへのソリューションになっています。従来のDCと比較すると、短期間かつ低コストで構築でき、増設や移設も容易なので、欧米では急速に普及が進んでいます。また、液冷を取り入れやすいこともメリットです。
最近は、国内でもコンテナ型DCへの問い合わせが増えてきました。私たちはコンテナ型DCに対しても、冷却、運用監視を含めた豊富なソリューションをラインアップしており、規模、用途に合わせた最適な環境を実現できます。また、コンテナ型DC事業者様とのアライアンスも強化しています。パートナー様に向けてお客様のニーズ、規模に合わせたパッケージとして提供することで、より販売しやすいかたちにしていこうと考えています。
コンテンツやツールを充実 協業にも積極的に取り組む
――パートナーに向けたサポート、支援策についても聞かせてください。澤田 パートナープログラムにおいて、新しい教育支援プログラムの提供を7月から予定しています。具体的には、UPS、UPS管理ソフトウェア(PowerChute)、DCIM、クーリングなどについて、それぞれポイントを絞ったトレーニングを用意し、パートナー様のニーズに応じた組み合わせでオンラインまたはオンサイト受講できるように準備を進めています。また、最近開催したAIがテーマのウェビナーも非常に好評でしたので、市場のニーズを取り入れたトレーニングメニューなども拡充していきたいと思います。
お客様への提案では、提案書作成のサポートをはじめ、製品選定ガイド、最適なシステム構成例、リーフレットなどを提供しています。パートナー様との協業についても積極的に取り組み、テーマごとの事例を作成してビジネス拡大を図っていきます。
AI分野は大きな成長が見込まれており、当社としてもその成長率と同様の高い伸びを目指しています。繰り返しになりますが、AIの利活用をインフラ面で支える広範な製品ラインアップを持ち、トータルソリューションとして提供できることが当社の強みです。パートナー様にとっても、コンテナ型DCやサーバールームの新設、ITとOTの連携など、より大規模な提案につなげていくことができるので、ぜひ、当社の製品、サービス、ソリューションを活用してほしいと思います。
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