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『顔の見えるIT』を全国に届ける地域に密着したDISのリアルイベント 第1回 4032人来場、熱気に包まれた「DISわぁるど in 山形」
2025/11/27 09:00
週刊BCN 2025年11月24日vol.2083掲載
双方向のコミュニケーションでビジネス機会創出
DISわぁるどは、全国にネットワークを持つDISの年間最大の地域密着型イベントだ。メーカーと販売店やユーザー企業を橋渡しするとともに、開催地を毎年移してDXのうねりを各地に波及させている。2013年以来12年ぶりの開催となった山形の会場には、2日間で4032人が訪れ、会場は熱気に包まれた。
今回のテーマは「Road to Future Society 先進テクノロジーで新たな時代を創る」。複雑な課題が同時多発的に進行する現代社会において、その解決手段としてテクノロジーがもたらす可能性に目を向ける機会になった。
当日は180を超える展示ブースに国内外のベンダーが集結。近年ITの世界で最重要キーワードとなっているAIをはじめ、デジタル社会を前進させる製品やサービスが一堂に介した。熱意を直接伝えられる絶好のコミュニケーションの機会に、出展企業は実機を用いて効果を体感してもらうなど創意工夫を施した。参加者は気になる展示を前に足を止め、対面ならではの双方向のやりとりを繰り広げていた。
東北地方のベンダーや団体は「ご当地パートナー」として出展。地域に根ざしたソリューションを広く発信した。
ハンズオンや操作体験の会場も設けられた。展示会場内のセッションブースでは実演販売士が「AI PC」「セキュリティ」などのテーマごとに最新の動向を解説した。
セミナーには多彩な著名人らが登壇した。ITソリューションの話題に加え、人生の価値観やコミュニケーション力、脳科学など、幅広いテーマを横断。ビジネスのみならず個人のキャリアやライフスタイルに新たな視点をもたらす時間を提供した。
なぜ、リアルイベントなのか? 地方ならではのDXのあり方を提示
地方でもDXやAIの重要性は広く認識されている。しかし、「実際の導入に向けた動きとなると、温度感が十分に高まっていない。情報が地方に届くまでにはどうしても時間がかかり、クラウドなどの浸透にも都市部に比べタイムラグがある」というのが、販売推進本部戦略ビジネス推進部の佐藤栄祐・副部長の見方だ。パートナー企業に目を向けても、人手不足で提案活動に十分な人員を割けない側面もある。DISわぁるどを始めとするリアルイベントは、地方における「DXの温度感」を高めるための戦略的な取り組みでもある。佐藤副部長は「最新のソリューションを体験いただけるだけでなく、全国のパートナーと当社スタッフがこの場に集うことで、他のエリアではどのように地場の課題を解決しているのかといった情報も集まる。地方のDX推進における最大の課題である『人材と情報の不足』を、イベントの場を通じて少しでも解消していきたい」と話す。
DXやAIに関心はあるが、「実際の導入となると二の足を踏む」という企業に対しては、パートナーにDISの営業担当者が同行して提案を支援するほか、導入後の運用サポートまで伴走することもある。DISは全国の拠点と販売網を強みに、他地域の成功事例を共有することで、IT導入への一歩を後押ししている。
ITを通じた地域との連携 地場のビジネス成長と未来の人材創出を描く
DISわぁるどでは、地方の課題解決に向けたソリューションが数多く展示された。教育ICTソリューションのブースでは、STEAM教育をサポートする取り組みを紹介した。STEAMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字で、これらを横断して学び、実社会の問題解決や新たな価値創造を目指す手法だ。3DプリンターやCADソフト、ARツールを用いて全国の学校で創造性を育む教育が行われている。都市部との違いをITで埋めるというよりも、独自の取り組みを進めることに軸足を置き、地域の特性を生かした学習環境の創出に貢献する考えだ。
サブスクリプション管理ポータルの「iKAZUCHI(雷)」は、複雑化するクラウドサービスの契約を一元化できるとして需要が高まっている。企業規模が小さいほどクラウドの導入は遅れる傾向が見られるものの、高度なソリューションを素早く導入できるクラウドは小規模な組織でこそメリットが大きい。クラウドサービスを世の中隅々まで普及させるため、販売店を側方支援する。
会場で注目を集めたソリューションも、企業の課題感を表しており、特に近年はAI関連の出展が増えているという。帳票の読み取りや、監視カメラ映像の分析をAIで行うといったアプローチは、業種を問わず業務効率化に貢献でき、効果がわかりやすい。セキュリティーも必要不可欠な課題と捉えられており、来場者の関心は高い。
地方のITについて別角度からアプローチしているのが「やまがたAI部」で、ブース出展とセミナーで存在感を示した。やまがたAI部は、県内の高校生がAIを学ぶ学校横断の“部活動”。賛同する県内の企業や教育機関、自治体が運営のためのコンソーシアムを設立し、高校生に対して教育プログラムを提供している。セミナーでは教員の業務負担軽減を目指したAI開発など、高校生による取り組みが紹介された。IT人材の輩出と地元定着につながるイノベーションに、聴講者からは協力を申し出る声も上がったという。
「ここがスタート」地域と未来を紡ぐ
開催地の林知聡・山形支店長は「山形を知っていただく機会になった」と手応えを口にする。来場者の約6割は県外からで、首都圏の参加者も多かった。「当社のリアルイベントは、企業理念『確かなものを全国すみずみに提供し、自然と調和した豊かな情報化社会の発展に貢献します。』に通じる、地域活性化の願いが起点にある。この思いに共感する人の輪を広げたい」(林支店長)
北海道・東北営業部 山形支店
林 知聡支店長
コロナ禍を機にしたリモートワーク周辺機器の普及が一巡し、10月に迎えた「Windows 10」のサポート終了によるPC入れ替えも落ち着きつつある。「DISわぁるどの会期中に生まれた多くの出会いと対話から、DXの深化やAI活用など、新しいITの領域に進む期待感が生まれた」といい、ポスト特需のITビジネスに向けた活力を感じられる2日間だったと総括する。
「対面の開催をスタート地点に、デジタルのコミュニケーション手段も含めて前進する」と林支店長。会場での成果を糧に、地域のパートナーとともに次なるITの可能性を切り開く。
週刊BCN記者が聞く来場者の声 地方開催への期待続く
来場したDISパートナーにBCN記者が話を聞くと、IT販売の現場で求められる情報をフェースtoフェースで得られる場の大切さが伝わってきた。福島県から参加した男性は普段、学校へのIT機器の導入に携わる。文教向けのブースはもちろん、生徒端末の個人情報保護に役立てられればと、セキュリティーにも興味を持った。「学校では情報漏えいのリスクに厳しくなっており、管理ソリューションは重視している」と話した。
「思ったよりAIが進化していた」。秋田県の企業に勤める男性は、展示を見て回り驚きを覚えた。自治体向けの販売を手掛けており、情報収集のために訪れた。紙の処理などのプロセスをデジタル化できるツールが魅力的で、「『紙文化』がなくなれば業務が劇的に変わる」との思いを強くしていた。
「東北で開催してくれて良かった」という声も多く聞かれた。宮城県からの参加者は「首都圏で開催される展示会にはなかなか足を運べないので貴重な機会。(DISには)地方への情報発信を続けてほしい」と要望した。
情報基盤のクラウド化やコミュニケーションツールに関心を寄せていた来場者は、エンドユーザーへの提案の材料だけでなく、自社内のDXに向けたヒントも得ていた。「社内ではITの活用の疑問を解消できないので、こういった機会はありがたい」と、相談の場に活用する姿も見られた。
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