通信工事やネットワークインフラ構築を得意とし、ネットワークSIerを標榜しているNECネッツエスアイがICTの枠を超えたビジネスを手がけようとしている。ICTをオフィスの一部と捉え、全体最適化を見据えた提案を進めているのだ。「現場力を追求し、お客さんの声を収集した結果」と話す山本社長に、同社の方向性を聞いた。
空調やオフィス家具を網羅
──今年度(2010年3月期)の上期は業績が厳しかったようですが、どのような半年間でしたか。
山本 確かに前年度と比べて減収減益となり、非常に厳しい状況だったと実感しています。しかも、売り上げは予想以上に落ちてしまいました。
ただ、昨年度の時点で今年度の状況は把握していましたので、私を含めて社員のすべてが、立ち直れないほど業績が落ち込んでいるとは思っていない。前年割れではありますが、利益は計画通りでしたので、この環境下で利益を確保できたという感触はあります。力は確実にある。そのようなことを認識した半年だったといえます。
──では、成長に向けた基盤は整っている、と。
山本 整っているとはいえませんが、ネットワーク関連ビジネスを手がける立場として、構築からサービスに変わってきているという印象があるなか、このような状況に当社は対応できるという実感はあります。社員をはじめ、お客さんやステークホルダーなどが納得のいくビジネスを手がけられると確信しています。また、(社長に就任した)3年前に「ネットワークSIerの国内ナンバーワンになる」ということを掲げたのですが、今の時期を乗り越えれば達成できると感じました。確かに業績は厳しいですが、今だからこそ新しいことにチャレンジする。そういった点では、持ち直す体制は整っています。
──ネットワークはコモディティ(日用品)化しているといわれています。新しいサービスの創造などに取り組むことになるのでしょうが、具体的には、どのようなことを考えておられますか。
山本 新しいサービスの創造については、現段階で具体的にこれというものがイメージできているというわけではありません。ただ、NGN(次世代通信網)などネットワークインフラが強固になっているなか、サービス提供とは何なのかを模索した場合、アプリケーションにフォーカスすることだけが良策とは限りません。もっとICTの枠を超えなければならないのではないかと考えているのです。当社が提供するサービスでICTを超えた大きな枠として当てはまるのが、オフィス改善を実現する「EmpoweredOffice」です。このサービスは2年前から提供しているのですが、ここにきてニーズが高まりつつあります。
──「EmpoweredOffice」の強みは何ですか。
山本 まず「EmpoweredOffice」をサービス化した背景なのですが、当社の強みである現場力から生まれたのです。現場に出向いてお客さんの声を収集し、最適なサービスを提供することにこだわった結果なのですが、そうした声を集めてニーズに応えた結晶が「EmpoweredOffice」なのです。具体的には、ICT関連のシステムやインフラだけでなく、オフィス全体、つまり机などのオフィス家具や空調設備も考慮して改革する。そのためのレイアウトや設計、構築までを一貫して行うというものです。
当社には、設備やネットワークインフラを構築するノウハウがあります。それに加えて、オフィス内のレイアウトを手がける組織として「デザインセンター」を設置しました。また、内田洋行さんなどITシステムとオフィス家具の構築に長けているインテグレータとのパートナーシップを深耕しています。さらに、コクヨさんなど家具メーカーなどと情報を共有することにも力を注いでいます。
──インテグレータや家具メーカーと共同で案件を獲得するということは、得意な製品やサービスを各社が出し合うのですか。
山本 もちろん、それぞれが得意な領域をもっていますので、当社を含めた各社の役割があります。ただ、お客さんに最適なものを提供することが前提ですので、各案件でそれぞれの役割が異なってきます。案件ごとに、各社が提供できるものを出し合う。同じ目線で案件を獲得しますので、これまでにはなかったコラボレーションなのかもしれません。
──売り上げ規模については?
山本 着実に伸びていまして、2年前にゼロからスタートし、今年度は100億円規模を狙っています。また、社内でも導入しているのですが、現場で最適な社内環境づくりを社員が進めています。こうした事例を生かしながら、お客さんに提供していきますので、今後も売り上げが増えることを見込んでいます。
サービス提供の本質とは何か。突き詰めればICTの枠を超えることに行き着く。
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