SJIは、中国大手SIerのデジタル・チャイナ・ホールディングスとの提携を足がかりに、中国ITサービス市場の開拓を加速する。日中にそれぞれ1000人を超える開発規模をもつSJIと、中国全土に販売・サポート網を展開するデジタル・チャイナ。SJIが日本の優れたITサービスを中国向けにカスタマイズし、これをデジタル・チャイナが売るという構図だ。今年5月からの上海国際博覧会(上海万博)の開催で経済成長に弾みがつくことが期待される中国。この巨大市場で成功を収められるかが、日本の情報サービス産業の発展に欠かせない要素になっている。
国内は特段明るい兆候なし
──中国大手SIerのデジタル・チャイナグループとの資本業務提携で、一躍、業界の注目を浴びましたね。
李 国内では、大手SIerのソフト開発やSIに協力するポジションにあることが多いので、これまであまり目立たなかったのかもしれません。簡単に自己紹介させてもらうと、当社はグローバル進出を積極的に進めているSIerです。直近の海外売上高比率は50%近くを占め、主要上場SIerのなかでこれだけの高水準なのは、私の知る限り他にありません。海外のうち、ほとんどが中国市場であり、今回、デジタル・チャイナと提携できたのも、日本と中国とでバランスよくビジネスを手がけてきたことが評価されたのだと思います。
──今年度上期(2009年4~9月期)をみると減収減益で、ビジネス的には苦戦している印象を受けます。
李 予想していたよりは厳しい状況です。正直、来期(2011年3月期)も、国内情報サービス市場に限ってみると、特段に明るい兆しがあるようにも思えません。当社は、国内のグループ会社の統合・再編を進めるなど、一段の経費削減に取り組みました。社名を旧SJホールディングスからSJIに変更したのも、09年の再編がきっかけです。
ただ、中国に目を向けると状況は異なります。上期売り上げの日中構成比はおよそ半々ですが、営業利益ベースでは国内が前年同期比で9割近く減って2200万円と苦戦。しかし、中国では5億6900万円ほど確保できました。前年同期に比べれば減りましたが、世界的に厳しい受注環境ながら着実に利益を出せる体制に育ってきています。中国では国内よりもプライム(元請け)での比率が高く、超大手の政府系企業からの直接受注も増えてきたことが利益率を押し上げる大きな要因になっています。
──今年5月からは上海万博が始まり、中国経済の力強い伸びに期待が集まります。提携先のデジタル・チャイナとはどのようなビジネスを展開しますか。
李 デジタル・チャイナは、中国全土に販売・サポート拠点をもつ大手SIerで、年商は円換算で5000億円近くある。貨幣価値の違いを考慮すれば、1兆円を超えるNTTデータのような位置づけです。公共や政府系企業、金融、通信、電力、医療など幅広いIT需要を獲得しています。一方で、市場の発展に伴い、より高度なITサービスが求められているのも事実。日本の成熟したITサービスを採り入れたいデジタル・チャイナと、日本で培ったノウハウを生かして中国ビジネスを加速したい当社とが協業することで、需要をより確実に獲得していく方針です。
──日本のITサービスに対する需要はそれほど高いものなのでしょうか?
李 国内製造業や流通・サービス業の品質の高さは世界トップクラスです。これを支えるITシステムがボロということは考えにくいでしょう? とはいえ、国内で提供されているITサービスは、基本的に日本語や日本の商習慣を前提としていますので、中国で納入するにはある程度のカスタマイズが必要です。この点、当社は日中の言語や商習慣の違いを熟知しており、カスタマイズやSIなどの“橋渡し役”を担える。営業やサポート面は、デジタル・チャイナの強力な販売網の力を借りることで、これまでよりも格段にビジネスのスピードを上げられると手応えを感じています。
日本の製造や流通・サービス業の品質の高さは世界トップクラス。
これを支えるITシステムがボロ? そんなわけはないでしょう。
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