三菱総研DCSは、協業によるバリューチェーンの創出に力を注ぐ。日本IBMのクラウド技術の採用やユニ・チャーム系のシェアードサービス会社への出資を相次いで発表。親会社の三菱総合研究所や三菱UFJフィナンシャル・グループなどグループ系の4社連携のみならず、ユーザー企業やITベンダーとの協業も加速させる。また、三菱総研が昨秋、株式上場を果たすなどフォローの風も吹く。受注環境は依然として厳しいものの、今期(2010年9月期)の「増収増益に向けた手応え」を感じている。木村高志社長に話を聞いた。
「協業」でトータルな価値を
──親会社の三菱総合研究所が2009年9月に株式上場を果たされましたね。
木村 三菱総研そのもののブランド力もありますが、株式上場によって、大きなフォローの風が吹いていると感じています。
──木村社長ご自身は、昨年10月に三菱総研DCSのトップに就かれたわけですが、その経緯を教えてください。
木村 前職は三菱東京UFJ銀行の常務だったのですが、それ以前の1997年から2002年にかけてはシステム担当でした。その後の合併に伴うシステム統合のときも、役員の一人として監督する立場にありましたので、当社前社長の後藤(明夫)さんともいっしょに仕事をすることがありました。つまり、それまではユーザーの立場でシステムをみていて、今はベンダーの側からシステムをみているということです。
──日本IBMの技術を使ったクラウドサービスに着手されたり、シェアードサービス会社へ出資されたりと、活発な動きをしておられますね。
木村 もともと、クラウド系サービスやBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)は、当社の強みの一つ。こうした特徴をより伸ばす方針です。当社の主力データセンター(DC)である千葉情報センターは、97年から運用していて、クラウドの基盤となる仮想化技術も早くから取り組んでいます。シェアードサービスでは、ベビーケア関連製品などを手がけるユニ・チャームグループが20%出資するシェアードサービス会社の経営に今年4月から参画。人事給与や経理、総務系のサービスのBPOを手がけます。銀行系の仕事が多い当社にとって、こうした事務処理は手堅くこなすことができる領域です。
──三菱総研DCSといえば、三菱総研と三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの4社連携で伸びてきた会社という印象を受けます。
木村 はい。この4社連携の枠組みは、今後も強化していきます。三菱総研は、超上流の戦略コンサルティングに強いシンクタンクですし、銀行系の会社は財務や会計に強い。当社は業務コンサルティングとシステム構築、実装に強いSIerですので、この連携を強めていくことが競争力の向上につながると考えています。国内には、上場ホールディングカンパニー(持ち株会社)が200社ほどあるのですが、この領域は、戦略コンサルティングの需要が大きく、傘下の事業会社は業務コンサルティングやITシステムの構築、実装がメイン。また、今、話題になることが多い国際会計基準(IFRS)は、銀行の財務会計のノウハウを存分に生かせる領域です。こうしたユーザー企業の需要を的確に捉えていきます。
──三菱UFJフィナンシャル・グループ全体で見れば、膨大な数の法人顧客を抱えているわけで、案件紹介などでプラスになりますね。
木村 顧客ベースももちろんですが、世界に拠点を展開していることも大きなメリットです。大手のユーザー企業は、伸び率が大きいアジア新興国などへのグローバル進出を加速させていますから、銀行がもつ世界規模のネットワークは、当社の事業領域であるSIにも欠かせないリソースになってくるでしょう。
ビジネスを伸ばしていくうえで、ライバルとの競争も大切な要素ですが、私は“協業”も場合によってはとても重要だと思っています。先のユニ・チャームや日本IBMの例でもそうですが、とくにBPO系のサービスでは、ITと業務、事務など含めて、顧客やベンダー間での連携が、価値の向上につながるケースも増えてきます。逆に、顧客からみれば、「うちはここまでしかできません」というベンダーはダメで、BPOも含めてどこまでトータルに提案できるかが問われているのだと考えています。
課題に気づかなければ、解決できない。先の経済危機でも、経営環境の変化をいち早く察知した企業から順に元気を取り戻しつつある
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